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ハンターギルドの生態調査 1

 いつもだったらグラウンドや体育館、教室や講堂などで多くの生徒たちが賑わいを見せる午後のギルド活動。

 Xクラスの教室では珍しくカイザーとミーシャがだらだらと過ごしていた。特にやることもなく、暇を持て余す怠惰で自由な時間が流れている。


「あー暇だなぁ。何か面白ぇことでもねぇのかよ」


「遊ぶにもこの天気じゃねぇ。そうだ、暇つぶしっていうならさ。アリィから貰ったボードゲームでもやるかい?」


「それ、絶対に遺恨を残すヤツだろ」


 朝から続く大雨でグラウンドは使用不可。各自自主トレに励むようにと、指示されたギルドやサークルが廊下や空き教室を走り回っている。屈強な男子たちが全力疾走する状況ではおちおち出歩いたりできない。

 それにこんな条件だったら、カイザーはサボるに決まっている。


「ただでさえジメジメする時期だ。狭い屋内で蒸し風呂なんて地獄じゃねぇか」


「梅雨入りしたんだから仕方ないよ。しばらく我慢すれば本格的な夏が来るんだし。だったらさ、それまでに僕に彼女ができる方法を考えてよ」


「お前、まだ諦めてなかったのかよ!?」


 中庭ではミーシャが折檻されただけで具体的な意見は聞けなかった。

 短期間で簡単に彼女ができる方法が確立されているのなら、世の中の男子は誰も苦労しない。本当にそんな魔法のような言葉が出てくるとは思えないけど、ちょっとしたコツでもいいから聞いてみたい気持ちはある。


「んなこと言ったってなぁ。じゃあ無難に、どんな女がタイプなんだよ。何かあんだろ、髪が長いとか短いとか、背が高いとか低いとか、年上とか年下とか」


「うーん…………あまり考えたことなかったかも。見た目の可愛さってのも確かに重要だけれど、やっぱり中身じゃないかなぁ」


「具体的にどんなのがいいんだ?」


「やっぱり僕のことを好きでいて欲しいよね。ワガママを言われても応えてあげたくなるだろうし。僕もワガママを聞いてもらいたいしさぁ」


「その考えは当たり前で大切なことだろう。独りよがりで一方的じゃ相手も嫌がる」


 ガサツで横柄で傲慢なカイザーが珍しく良いことを言ってる。お互いを思いやれるからこそ好き同士になり、彼氏と彼女の関係になるんじゃないだろうか。


「打算的な考えで付き合う奴もいるだろうなぁ。わかりやすく言えば金、地位、名誉。交際相手をステータスと見てるとか、あと男に限ればただヤりた……いや、止めておこう」


「僕は付き合うからには本気だよ? はぁ、どこかに素敵な……」


「大雨なのに雁首揃えて女日照りってウケる」


「みんなただいまぁ。ギルド、早上がりになっちゃった」


 ジュディアとレナが揃って教室に戻ってきた。ハンターギルドとウィザードギルドは梅雨が明けるまで暫くの間、活動時間を縮小するそうだ。


「講堂や教室はナイトギルドとか運動部で使うんだって。それでそれで、どうしてミーシャさんは彼女が欲しいの!?」


「それ超気になってた。話してよミーシャ」


「えっ、どこから聞いていたんだい!?」


 彼氏とか彼女とか恋愛相談とか、この手の話題は女子の大好物。

 今ここで言葉を取り繕って誤魔化せばいいという問題ではない。求める解答なんておおよそ決まっており、納得のいく返答が出るまで尋問され続けるんだ。

 ここでうっかり情けをかけて遮ったり諌めたりして助け舟を出すのは薮を突つくようなもの。ボク自身も敵として糾弾されるか、もしくは新たなターゲットにされる。


「どうしてって、なんとなくっていうか」


「なんとなくなら、ここまで連呼して引っ張らなくない?」


 彼女を渇望する気持ちに理由は必要だろうか。彼氏と彼女の関係だからこそ成り立つもの、やれること、できること。

 そもそも彼女という存在とは?


「おい。ラドが哲学者みてぇなことをほざき始めたぞ」


「ちょっと寄り道、こっちの方が面白そう。ラドはカレカノになったら何をしたい?」


「うーん…………」


 買い物とか遊びとか旅行とか、ふたりで手をつないでデート?

 一緒にごはんを食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝る?


「んなモン、やれることもできることってヤればデキるって話じゃねぇか」


「心が薄汚れたカイザーは黙ってて。ねえラド、あとは?」


 ドス黒く染まった汚物そのものって言わないだけ、まだ優しいのかもしれない。


「あとって言われても」


 ジュディアは口を尖らせたり引っ込めたりしている。これは不満を表しているのではなく、最近また一歩成長して大人に近づいたボクから言わせたいんだ。


「……………………キス、とか」


「くぅうううーっ、そうでしょそうでしょうねぇええ。カレカノだったら普通よ普通。でもここまででようやく半分ってところじゃない?」


「じゃあ、ねーさまは知ってるの?」


「それはお姉さんの口からは言えないかなー? そもそもわたし、彼氏いないしー。わからないかなー?」


 カイザーは顔を背けている。ミーシャは……聞いてもわからないだろう。レナもきっとそう。ジュディアだけが楽しげで意地悪い顔をしている。


「で、ミーシャは彼女を作って何がしたいの。時間稼ぎしてあげたんだから、考えはまとまったんじゃない?」


「恥ずかしいなぁ……実は、ワシャワシャ撫でたり、撫でられたりしたいんだよねぇ」


「急に気色悪い性癖開示でウケる」


「僕も猫になりたいなって思ったんだよ」


「ド変態発言ドン引きじゃん。何それ隠語?」


「お前それ絶対外で言うなよ!? どっちに転んでも、また変な勘違いで噂になるやつだからな!?」


 どっちに転ぶかの選択肢なんてあっただろうか。

 もしくは高度な謎掛けかもしれない。だからジュディアは隠語と表現した。でもひとつ確かなことがある。

 彼女を作ってやりたいことの残り半分が猫になるというのなら、ボクはまだその域に達していない。いや、果たして本当にそんな日が訪れるんだろうか。


「そろそろ本気でラドが可哀想になってきたからさ、さっさと結論を言ってよ」


「中庭にいた女子たちが猫を愛でていたんだ。それを見て純粋にうらやましいって思っただけなんだよ…………」

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