未来人アリィ 1
MCSというサークルはメイ先生が立ち上げた。
設立の経緯というか、その時の流れもあって半ば強制的にボクが所属することになったんだけど、活動内容はメイ先生本人の気分次第で不定期だ。
趣味研、正式にはシミュレーション研究部というサークルはフェイリアが立ち上げてアリィが所属している。ボクは少しお手伝いをした程度で部員ではない。
どちらも今は活動休止中みたいなもの。そしてお互いに深い繋がりや接点があるわけでもなかった。
「なんだオメーも来たのか。せっかくだから話に付き合ってやれよ」
ギルド活動が始まった午後、暇を持て余したボクがXクラスに戻ってみたらメイ先生とフェイリアという珍しい組み合わせ。
どうやらこれから趣味研に関する話し合いが行われるという。
「趣味研の部室ってエクリル女学院だよね。どうしてここに?」
「フェイがいろいろやらかしたからなー。一連の不祥事で追い出されてやんの」
「違うわ! 活動は認めるが、部室も含めてマジェニア学園の管理下に置けと通達があっただけじゃ」
先日、趣味研が企画して開催された迷宮探索ゲームの反応は概ね好評だった。
ゲーム内では妨害して敵対したり、仲間内で揉め事や裏切りも起きた。それでも終了後は遺恨を残すことなく、対戦型スポーツとして割り切れるプレイヤーが多かった。
ちなみに目に余る行動をしたプレイヤーは、自業自得とはいえゲームが終わっても周囲から距離を取られる羽目になったという。ボクだったら嫌な目に合ったら根に持っちゃいそうだし、他人に嫌なことをしたくないから誘われても遠慮していたかも。
迷宮探索ゲームに関連した別問題として、直後に発生した魔獣騒動はフェイリアとフェイラー学園長によって秘密裏に闇に葬られていた。
真相を知る人物はごく一部に限られているというわけ。
「今日はカイっていないんだね」
普段は車椅子を使用しているフェイリアの世話をしているのがマッドゴーレムのカイ。
カイがいなければ屋上まで来られないはずなのに。
「最近少しずつ歩けるようになってきたのでな。カイに頼らずリハビリを兼ねて歩いて来たんじゃが、さすがに階段はこたえる」
「転んだら危ないよ。帰りはボクが背負ってあげるから」
「ラドは相変わらず優しいのう。それに比べてメイ、そなたはどうじゃ」
「バカヤロー。Xクラスは話し合いのために渋々貸してやるだけで、元はアタシの家だ。これ以上好き勝手に使わせるかよ」
メイ先生の言い分はごもっとも。
趣味研の部室にはボードゲームとか高そうなカトラリーがたくさんあったから、専用の部室が欲しいんだろう。
でも元は学園の用具倉庫だった設備だし、好き勝手に占拠して家だと言い張っているし、家だと言い張っているけどXクラスの教室だし。
…………ごもっとも、かな?
「フェイラーにしこたま怒られてしまってのう。学園長権限で、目の届く範囲で活動するようにと手回しされたんじゃ」
「だったら趣味研の部室にピッタリの物件があるぜ。いつでも目の届くっつーなら、学園長室の隣なんかサイコーだろ」
「準備室なんぞ名ばかりの、牢屋なんてイヤじゃ!!」
ちなみにこの案は実際に検討されているそうで、活動休止か代替案を用意できなければ学園長準備室に決まってしまう。
この部屋、本当の意味での牢屋でもあるんだけどね。
「部室の出入りは学園長室を通らねばならぬ。ほら、セキュリティやらプライバシーというものもあるじゃろ?」
「アタシのプライバシーも考えろよ。ここにボドゲなんて置いちまったら生徒も授業に集中できないだろ。まー他を当たってくれ。今日はこんな話をするためじゃねーんだろ?」
「うむ……。しかしワシも、誰と何の話し合いをするのか知らぬままなんじゃ」
「アタシは場所を貸せと言われただけだからなー。部外者がいると気も使うだろーから、後はヨロシクやってくれ。メシでも食ってくるわ、じゃーな」
部室をどこにするかが本題ではないというのなら、どうしてXクラスなんだろう。ボクは部外者なんだし、肝心のアリィがいない。
「アリィには秘密にするよう言われておる。ラドは関係者じゃ、構わぬだろう」
「他に誰か来るってことだよね。不都合があれば席を外すから、遠慮しないで」
「どこまでも優しさと気遣いに溢れておる。ラドもフェイラーの孫にしてやろうか」
その場合、フェイリアはボクの姉と妹のどちらになるんだろう……なんて話をしていたら、見知らぬ女性が教室にやってきた。品性を感じさせる二十歳くらいの大人の女性。
そして、不思議と既視感がある。
「まさかここが、Xクラスの……教室ですか?」
「その通りじゃが、そなたがワシに連絡を寄越した人物かえ?」
「フェイリア、ですよね…………私は、アリィです」
「はぁ!?」




