プロローグ
はじめまして!
この作品は「令和女子×平安転生×恋と和歌と呪詛バトル」を描いたラブコメ・ロマンス・ファンタジーです。
現代で失恋&仕事も失敗してズタボロになった主人公が、平安の宮中へ転生。
冷酷陰陽師と爽やか皇子、二人のヒーローに翻弄されながら自分らしい愛の形を見つけていきます。
まずは現代での志乃の挫折からどうぞ。
私は、盛れてる。
——だって努力してるから!
「はい、今日もアイプチ完了!」
片目をウィンクして鏡にキメる。
一重をぱっちり二重に変えて、丸顔はゆるふわモテヘアで隠す。
寄せて上げれば、貧乳もそこそこ“養殖巨乳”に。
「ふふ、今日の私は“盛り神”」
鏡の中の私は、立派なモテ女子。
証拠はインスタに山ほどある。
カフェラテの写真に横顔をちょい入れしただけで「芸能人かと思った!」ってDMが来るし、新作コスメをストーリーに載せれば「どこの?」って即レス。
フォロワーは1万ちょい。微妙にインフルエンサーに届かないけど、リア友の間では「オシャ垢の星」扱い。
二十六歳。
若さも経験もあるし、今がいちばんバズれる時期。
そう信じてた。
——昨日までは。
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三重ショック
「君の“好き”は、俺のことじゃないだろ」
会社の太陽みたいな先輩に、冷たくフラれた。
「は? どういう意味? 好きって好きでしょ!?」って言い返す暇もなく。
数日後、駅前のカフェで見てしまった。
その先輩と、地味な親友がケーキを前に笑い合っているところを。
「……は?」
心臓がズキンと痛んだ。
画面越しじゃなく、現実で“裏切りアイコン”をタップされた気分。
追い打ちは仕事だった。
必死で出した企画を、セクハラ上司と天然巨乳の新卒にかっさらわれた。
「彼女の発想なんだよね〜」って、上司は笑顔で言うけど、私の名前は一文字も出てこない。
「やっぱり若い感性は違うなあ」
いやいやいや、違うのは感性じゃなくて権力構造でしょ!?
拍手喝采の会議室で、私の心のWi-Fiは完全圏外。
極めつきは噂。
「後輩の企画とろうとしたって…」とか「SNSでは盛ってるけど実際は……」なんて悪評が、勝手に広がっていた。
「……私の社員証、もう無効になってるかもね」
笑いながら呟いたけど、笑えてなかった。
三重ショック。
恋も、仕事も、友情も、ぜんぶ崩壊。
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空っぽの言葉
SNSに「つらい」なんて書けない。
弱音=即フォロワー減少だし。
LINEを開いても送る相手がいない。
送る言葉すら出てこない。
……え、私って、誰とも本当の言葉を紡いでなかったの?
ハッシュタグと絵文字で盛るだけで、中身はスッカラカン?
「#今日も盛れてる #奇跡の一枚 #彼氏募集中 #承認欲求MAX」
そうやって取り繕ってただけじゃないの?
笑おうとした瞬間、手がすべった。
スマホが落ちて——バキッ。
液晶に蜘蛛の巣模様が広がった。
「うわっ、マジ最悪! なにこれ……呪い? 完全に呪いじゃん!」
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白霞神社
震える指で検索を打ち込む。
「呪い 解く 近く」
検索結果の一番上に出てきたのは——白霞神社。
怪しいまとめサイトに「呪詛を祓う美貌の陰陽師がいる」なんて書かれている。
「ぷっ、怪しすぎ。……でも、笑えない」
ここまできたら、行くしかなかった。
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夜の参道
夜の神社はホラー映画そのもの。
街灯も届かない参道。鳥居の向こうに白い月明かりが滲んでいる。
「はあ……ほんとに来ちゃった」
砂利の音がやけに響く。
インスタで「開運神社♡」とか言ってる子、全員嘘。
こんなの怖いだけじゃん。心拍数は爆上がり。
拝殿に立った瞬間、空気が変わった。
月明かりが石段を染め、冷たい風が頬を撫でる。
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美貌の陰陽師
「呪詛の多くは、人間の思い込みから生まれる。……お前もまた、その類いか?」
「ひゃっ!?」
背後から冷たい声。振り返ると、氷のように美しい男が立っていた。
白い狩衣に黒髪を結い、月明かりを浴びても影のように冷ややか。
目元は切れ長で、光を映すたびに刃みたいに鋭い。
「だ、誰!? え、コスプレ? いや、ガチ本物……?」
怖いより先に、見惚れてしまった。
「お前の望みは何だ」
望み? そんなの決まってる。
「ずっと今のまま若くて可愛くいたい! 可愛いって言われたいし、いい彼氏と並んで“勝ち組”って思われたいし、肩書きでも認められたいし、ブランドで羨ましがられたいの!」
叫んだ。必死に。
でも、吐けば吐くほど、胸の奥がスカスカになっていく。
「ち、違う……! 私、頑張ってきたのに報われないんだよ! 思い込みなんかじゃない。……これ、絶対誰かの呪いだから!」
声が震えていた。自分でも必死すぎるのがわかるくらい。
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月と和歌
「……ほう。ならば確かめてみるがいい」
氷の声が響いた瞬間、拝殿の屋根を割るように月が強く輝いた。
耳の奥に、誰の声とも知れぬ和歌が流れ込んでくる。
——花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
「え……?」
胸がぎゅっと締め付けられた。
若さも、肩書きも、見た目も……ぜんぶ移ろうだけ。
私が縋ってきたものは、最初から呪いだったのかもしれない。
光が視界を染める。熱い。眩しい。
「な、なにこれ……!」
目を閉じた瞬間、私は月の中に吸い込まれた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
志乃の「盛れ盛れ」女子からの転落、そして月の光に導かれる瞬間でした。
次章からはいよいよ平安編、お楽しみに!




