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5年の約束、君と共に

作者: sakana

第一章:出会い

大学三年生の夏、私は小さなカフェでアルバイトを始めた。そのカフェは、木漏れ日が差し込む静かな場所で、常連客が多く訪れる。ある日、いつものように接客をしていると、一人の男性が来店した。彼は落ち着いた雰囲気で、どこか儚げな笑顔を浮かべていた。注文を取りに行くと、彼は「アイスコーヒーをお願いします」と静かに言った。その声に、私はなぜか心を惹かれた。


彼はその後も何度か来店し、少しずつ会話を交わすようになった。名前は高橋悠人、23歳の大学生だという。話しているうちに、私たちは同じ大学に通っていることが判明し、彼が私の一つ上の先輩であることがわかった。偶然の重なりに、私は運命を感じずにはいられなかった。


第二章:告白

季節は秋へと移り変わり、大学のキャンパスも色づき始めた。私は彼と過ごす時間が増え、次第に彼への想いが強くなっていった。そして、大学の卒業式の日、私は彼に想いを伝える決意をした。式が終わった後、彼を呼び止め、「ずっと好きでした。付き合ってください」と告白した。彼は驚いた表情を浮かべた後、優しく微笑み、「こちらこそ、よろしくお願いします」と答えてくれた。


第三章:病気の告白


秋の夕暮れ、大学の帰り道に立ち寄った公園で、私たちはベンチに腰を下ろしていた。木々の葉が色づき始め、風が頬を撫でる。そんな穏やかな時間の中、私は心に秘めていたことを打ち明ける決意をした。


「悠人さん、ちょっと話があるの」


彼は私の顔を見て、少し驚いたように微笑んだ。


「どうしたの?そんなに真剣な顔して」


私は深呼吸をして、言葉を選びながら話し始めた。


「実は、私、心臓に持病があって、体が弱いの。これまで話せなくてごめんなさい」


一瞬、彼の表情が曇ったように見えたが、すぐに優しい笑顔に戻った。


「そうだったんだね。話してくれてありがとう。でも、僕がいるから大丈夫。辛いときは、いつでも言ってね」


その言葉に、胸が熱くなった。彼の優しさが、私の不安を包み込んでくれるようだった。


その日から、私たちの関係はさらに深まった。彼は私の体調を気遣い、無理をさせないようにしてくれた。私も、彼の存在に支えられながら、前向きに日々を過ごすようになった。


第四章:幸せな日々


ある晴れた日曜日、私たちは市内の水族館へ出かけた。入り口をくぐると、涼やかな水の音とともに、色とりどりの魚たちが泳ぐ大きな水槽が目に飛び込んできた。悠人は私の手を優しく握り、「楽しみにしてたんだ」と微笑んだ。


館内を進むと、クラゲの展示コーナーが現れた。幻想的な青い光の中、クラゲがゆらゆらと漂っている。「まるで宇宙みたいだね」と私が言うと、悠人は「君の瞳の中にも、こんな宇宙が広がってるのかも」と照れくさそうに答えた。


イルカショーでは、イルカたちの華麗なジャンプに歓声が上がった。悠人は私の肩を抱き寄せ、「君の笑顔、イルカより輝いてるよ」と囁いた。


帰り際、売店でペアのイルカのキーホルダーを見つけた。「これ、お揃いで持とう」と悠人が提案し、私たちはそれぞれのバッグにキーホルダーをつけた。


次の月、私たちは遊園地へ足を運んだ。ジェットコースターに乗る前、私は少し緊張していたが、悠人が「大丈夫、僕がついてるから」と手を握ってくれた。風を切って走る中、彼の笑顔が私の不安を吹き飛ばしてくれた。


観覧車では、夕暮れの景色を眺めながら、静かな時間を過ごした。「この瞬間がずっと続けばいいのに」と私が呟くと、悠人は「僕も同じ気持ちだよ」と優しく答えた。


お化け屋敷では、私が驚いて彼の腕にしがみつくと、悠人は「怖がる君も可愛いね」と笑った。その言葉に、私は顔を赤らめた。


さらに次の月あたりから、私の病気のせいで大学に行けない日やデートに行けない日が続いたが、彼がいつもそばにいてくれた。


秋の初め、私は病気も落ち着いてきたので、私たちは温泉旅行に出かけた。山間の静かな旅館で、部屋には露天風呂が付いていた。夜、星空を眺めながら一緒に湯に浸かり、心も体も温まった。


「こんな風に、ずっと一緒にいられたらいいね」と私が言うと、悠人は「うん、ずっと一緒にいよう」と答えた。その言葉に、私は胸がいっぱいになった。


翌朝、朝食を共にしながら、悠人は「君と過ごす時間が、僕の宝物だよ」と言った。私はその言葉を心に刻んだ。


冬になり、クリスマスがやってきた。ショッピングモールでのデート中、どこからか歌が聞こえてきた。「私は冬が好き 言葉が白く目に見えるから」彼は歌を聞き、こう言った。「僕は…君が…」聞き取れなかったが、恥ずかしそうにしている彼の顔は愛らしくて、聞き返すことはなかった。



第五章:花火大会


6月の終わり、私たちは市内で開催される花火大会に出かけた。浴衣姿の私に、悠人は「とても似合ってるよ」と微笑んだ。人混みを避け、川沿いの少し離れた場所にレジャーシートを広げ、二人で座った。


夜空に大輪の花火が咲き誇る中、私は胸の内に秘めていた想いを伝える決意をした。

「悠人、私、あなたと結婚したい」

その言葉に、悠人はしばらく沈黙した後、深いため息をついた。


「実は、僕はガンなんだ。余命はあと5年と宣告されている」と、彼は静かに告白した。私は言葉を失い、涙が頬を伝った。


「だから、君には幸せになってほしい。僕と一緒にいると、君を不幸にしてしまう」と、悠人は続けた。私は彼の手を握り、「一緒にいたい」と訴えたが、彼の決意は固かった。


第六章:別れ


花火大会の夜、悠人からの告白に衝撃を受けた私は、しばらく言葉を発することができなかった。彼は静かに語り始めた。


「僕は、君に幸せになってほしい。だから、僕のことは忘れて、新しい人生を歩んでほしい。君には、明るい未来が待っているんだ。僕と一緒にいることで、その未来を奪いたくない。だから、別れよう。これが、僕の最後のわがままだ。ごめんね。」


私は涙をこらえながら、彼の言葉を受け入れるしかなかった。その夜、私たちは静かに別れを告げた。


それから数ヶ月が過ぎた。私は大学生活に戻り、日常を取り戻そうと努力した。しかし、心の中には常に悠人の存在があった。


第七章:再会


ある日、大学のキャンパスで偶然、悠人と再会した。彼は少し痩せていたが、変わらぬ優しい笑顔を見せてくれた。


「久しぶりだね。元気にしてた?」


「うん、なんとか。悠人は?」


「まあ、ぼちぼちかな。治療も続けてるし、頑張ってるよ。」


私たちはしばらく立ち話をした後、近くのカフェでお茶をすることにした。久しぶりに会ったにもかかわらず、会話は自然と弾んだ。


その日以来、私たちは時々連絡を取り合うようになった。お互いの近況を報告し合い、支え合う関係が続いた。


第八章:急展開


それは急な出来事だった。

私の体調は徐々に悪化していった。病院での検査の結果、病気が進行していることが判明した。医師からは、早急な治療が必要だと告げられた。


私は悠人に連絡し、病院で会うことにした。彼は心配そうな表情で病室に入ってきた。


「大丈夫?何かあったの?」


「実は、私心血管疾患で入院することになったの。でも、大丈夫。治療を受ければ、きっと良くなるから。」


悠人は私の手を握り、静かに頷いた。


「君は強い人だ。きっと乗り越えられる。僕も、君のことをずっと応援してる。」


その言葉に、私は涙が溢れた。彼の存在が、私にとってどれほど大きな支えであるかを改めて感じた。


入院生活が始まり、私は治療に専念した。悠人は頻繁にお見舞いに来てくれ、私の心を癒してくれた。彼の笑顔を見るたびに、私は希望を持つことができた。


しかし、病状は思うように改善せず、私の体力は徐々に奪われていった。ある日、私は悠人に手紙を書いた。


「悠人へ


ねぇ、前に会ったばかりなのに、もう会いたくなっちゃった。なんでだろうね。あなたの笑顔、声、全部が恋しくてたまらないの。


大好きだよ。あなたと過ごす時間が、私の人生で一番幸せだった。もっと一緒にいたかったな。


愛してる。この言葉じゃ足りないくらい、あなたへの想いは深いの。


死にたくないな。もっとあなたと未来を歩きたかった。でも、現実はそう甘くないんだね。


会いたくて、会いたくて仕方ないよ。あなたの温もりを感じたい。もう一度、あなたの腕の中で眠りたい。


もしも生まれ変わることができるなら、またあなたと出会いたい。そして、今度こそ、ずっと一緒にいられるように。


最後に、ありがとう。あなたと出会えたこと、愛し合えたこと、すべてが私の宝物です。


愛してる。永遠に。


美咲より」


第九章:新たな一歩


悠人は、美咲からの手紙を受け取り胸に抱きしめながら、静かに涙を流していた。彼女の言葉が、彼の心に深く響いていた。「前に会ったばかりなのに、もう会いたくなっちゃった」――その言葉が、悠人の胸を締め付けた。彼もまた、彼女に会いたくてたまらなかった。


「美咲、会いたいよ美咲、愛してる、君がいない世界なんて動いていない時計と同じだよ」


手紙を読み終えた悠人は、無意識のうちに涙が頬を伝っていることに気づいた。彼はそれを拭うことなく、ただ静かに座り込んだ。美咲との思い出が、次々と頭の中に浮かんでは消えていった。


初めて出会った日のこと、水族館で手をつないで歩いた日、遊園地で一緒に観覧車に乗った日、温泉でゆっくりと過ごした日々――すべてが悠人にとって宝物のような思い出となった。彼女と一緒にいると、時間がゆっくりと流れるようで、どんな小さな瞬間も大切に感じられた。


そして、あの最後の夏が訪れた。花火大会の日、彼女は「結婚したい」と言ってくれた。その言葉に、悠人は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。しかし、同時に彼女の病気のことを知らされ、彼は言葉を失った。彼女が抱えていた苦しみや不安を、どれほど理解していたのだろうかと、深く反省した。


美咲が急逝した後、悠人は深い悲しみに暮れた。彼女との思い出が、彼を支える一方で、彼女をもっと大切にしていればと後悔の念が募った。彼女の手紙を読み返すたびに、その思いは強くなるばかりだった。


悠人は、手紙を胸に抱きしめながら、静かに涙を流した。彼女がくれた愛と温もりを、これからも大切にしていこうと心に誓った。そして、いつかまた彼女に会える日が来ることを信じて、前を向いて歩き出す決意を固めた。


その日から、悠人は少しずつではあるが、前に進み始めた。美咲との思い出を胸に、彼女が望んだように、強く、優しく、そして温かく生きていくことを誓った。彼女の笑顔が、彼の心の中で輝き続けている限り、彼は決して一人ではないと感じていた。


そして、ある日、悠人はふと立ち寄ったカフェで、美咲と初めて出会った場所を見つけた。その店の前で立ち止まり、彼女との思い出を胸に、静かに微笑んだ。「ありがとう、美咲。」その言葉を胸に、悠人は新たな一歩を踏み出した。


第十章:命の灯火、君と共に


悠人は、あの日から数ヶ月が経過した。医師からは余命宣告を受けていたが、奇跡的に病状が改善し、回復の兆しを見せ始めた。


家に帰り部屋を片付けていた。そこで一つのものを見つけた。「なんでこんなところにイルカのキーホルダーが…美咲会いにきてくれたのか?泣いてるところは見せたくないな、なんてね」


愛してるよ、美咲…

君に会いに行くね。


sakanaですあまり自信はないですが投稿しました

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