受付嬢的休日 - 1日目
ミレアはギルドのカウンターの裏に立ち、前に広がる書類を熟練の手つきでめくっていた。細い指で羽ペンを握り、書類に最後の署名を素早く済ませる。
「よし、これで問題ないはずよ。」と、軽くストレッチをしながら、肩の荷が少し軽くなったのを感じた。
この数ヶ月間、ミレアはほとんど本当の意味で休息を取ることがなく、毎日カウンターの後ろで忙殺状態だった。委託申請、報酬精算、情報収集と、事務は山積みで、まったく息抜きする時間がなかった。しかし、今日は違う。今回、待ちに待った2日間の休暇が遂に確保できたのだ。
「ミレア先輩、今日はなんだかいつもより元気ですね?」と、そばに立つ若い少女アリスが目を見開いた。普段は朝になると帳簿の山に隠れるようなミレアだが、今日は早起きし、むしろアリスに先んじて仕事を促していた。
「もちろんよ。今日は休暇が始まるんだもの!せっかくの休み、元気いっぱいじゃなきゃね!」と、ミレアは朗らかに笑い、期待に満ちた表情を隠せなかった。
アリスは、以前のミレアが連日残業で朝はカウンターに伏して病欠を装っていたことを思い出し、心の中で「まさか夢でも見てるのかしら……」とつぶやいた。
「何を言っているの、アリス!」と、ミレアはアリスの背中をポンと叩きながら、「今日はアリス一人じゃなくて、レナも一緒に連れて行くんだから、私の休みを独り占めさせないわよ!」と話した。
「えっ?」と、アリスが振り返ると、普段は冷静で無口なカウンターの同僚レナが近くに立っており、顔には困った様子が浮かんでいた。
「わかってたわ……あなたの誘いを断るべきだったのね……」と、レナはため息をつきながら、「でも、来ちゃったんだから途中で諦めるわけにはいかないわ」と続けた。
「その通りよ!じゃあ、この旅はみんなで楽しむわよ!」とミレアは笑顔で声を上げた。
「ところで、ミレア先輩、以前も行ったことがあるんでしょう?どうして今回はそんなに興奮してるの?」と、アリスが自分の荷物を整理しながら尋ねた。
「ふふ、あのときは時間が足りなくて、全然遊べなかったもの。毎日ギルドで皆の話を聞くだけより、実際に何度も足を運んだほうが楽しいのよ。」と、ミレアは目を輝かせ、すでに今回の旅程を固めた様子を見せた。
「本当の目的は――」と、レナが腕を組んで冷静に口を挟む。「思い切って食べ、飲み、遊びまくることじゃない?」
「うふふ、見抜かれちゃったね。」と、ミレアは舌を出しながら、自分の目的を隠さずに認めた。
アリスとレナは顔を見合わせ、心の中で少し不安を感じながらも、ミレアの珍しい明るさに引き込まれ、結局はミレアのペースに合わせることにした。
「ところで、荷物はちゃんと揃えた?パスポート、着替え、魔力適応装置……」
「先輩、これらはもう5回も確認してますよ。落ち着いてください。」と、アリスは呆れた様子で応じた。
「その通り。さて、問題は――まずどこに行くかしら?」と、レナは少し首を傾げ、ミレアの突拍子もない企てに備えるような表情を見せた。
「ふふ、これは内緒よ。現地に着いたら分かるから!」と、ミレアは神秘的に笑いながら、スカートのポケットに入れた携帯が一瞬光って通知が届いたのを確認した。
「あまり面倒なことを引き起こさないでね……」と、レナはため息をつきながら、この旅が平穏ではない予感を感じていた。
「それじゃあ、今から正式に出発するわよ!」と、ミレアは興奮気味に手を挙げ、彼女たちがまるで偉大な冒険へと踏み出すかのような表情を見せた。
こうして、前代未聞の旅が遂に始まった。
その後、現実世界の出入国管理で入国手続きを済ませ、携帯していた資金を現地通貨に両替した。ミレアは手際よく手続きを終え、軽く手を叩いて、同行する二人に向き直った。
「よし、これで私たちは正式にこの世界の旅人になったわね。」と、ミレアは笑顔を浮かべた。
その後、三人は適当な宿を探し始め、しばらく話し合った末、最後には市中心部にある快適な旅館を選んだ。チェックインを済ませた後、彼女たちは荷物をさっとまとめ、少し休憩することにした。
「さて、次は昼食よ!」と、ミレアはまた一度大きくストレッチをしながら、待ちきれない様子で携帯を取り出し、現地の名物料理を検索し始めた。
「でも……ここは全然言葉が通じないじゃないですか。」と、アリスは眉をひそめながら、街中の様々な看板を見渡し、困惑した表情を浮かべた。
「その通り。レストランのメニューさえも、まるで暗号みたい……」と、レナも同様に苦笑いをしながら頭を抱えた。
「安心して、あなたたちには私というガイドがいるんだから!」と、ミレアは得意げに手を振り、二人を引き連れて人気の高いレストランへと足を踏み入れた。店員におすすめの料理を尋ね、二人分ずつメニューの翻訳を始めた。
「わあ、先輩って本当にすごいですね……」と、アリスはミレアの流暢な会話に目を輝かせ、感嘆の声を上げた。
「だって、以前来たことがあるから基本的なコミュニケーションは問題ないのよ。」と、ミレアは笑いながら答え、今回はこの世界のグルメをゆっくり楽しめることに心を躍らせた。
注文が済むと、ミレアは再び携帯を取り出し、現地の観光情報をチェックしながら次の目的地を確認した。しかし、向かいに座っていたアリスはふと顔をふくらませ、腕を組んで不満そうな表情を浮かべた。
「どうかしたの?」と、ミレアは携帯の横をちらりと見ながら、困惑した顔をした。
アリスは何も答えず、ただミレアの持つ携帯をじっと見つめ、羨望と不満が入り混じった眼差しを送っていた。
ミレアは眉をひそめ、わざと携帯を左右に振ってみると、なんとアリスの頭も左右に揺れ、小さな子猫が餌を求めるような様子を見せた。
「わかったわ、もし本当に欲しいなら、私が買いに行ってあげようか?」と、ミレアはため息をつきながら、苦笑いを浮かべた。
その言葉に、アリスは瞬く間に笑顔を取り戻し、ふくらんだ頬も元通りに、ただ静かに昼食が運ばれてくるのを待った。
しばらくして、ウェイターが豪華な料理を運んできた。三人は異世界ならではの美味しい料理を堪能し、独特な風味を味わった。
「さて、次はどこに行くの?」と、食事の途中でアリスが口を拭いながら問いかけた。
「そうね、昼食が終わったら、次の目的地は……」と、レナも疑問の眼差しを向けた。
ミレアはにっこりと笑い、「言っても分からないでしょう?直接体験させてあげるわ。絶対に目からウロコが落ちるはずよ!」と、神秘的な笑みを見せた。
二人は顔を見合わせ、ミレアの計画が全く予想できないことにため息をつきながらも、結局はミレアの全権委任された旅に従うしかなかった。
ミレアは「荷物はちゃんと揃ってる?パスポート、着替え、魔力適応装置……」と念を押すと、
「先輩、これらはもう何度も確認済みですよ、落ち着いてください。」と、アリスは呆れた様子で返答した。
そして、ミレアは二人を連れて、とある巨大なコンクリート造りの建物へと向かった。ここは現代的で広々としたデザインのロビーが広がり、周囲には数多くの商品が並び、明るい照明が煌びやかに空間を演出していた。
まず、彼女たちは衣料品店を見学し、地元のスタイルの服を何着か試着。その後、日用品コーナーへ移動し、様々な奇抜な小物を見渡した。アクセサリーショップには精巧なブレスレットやイヤリングが所狭しと並び、アリスとレナは目を輝かせて見入った。最後に、彼女たちはお菓子売り場に立ち寄り、色とりどりのパッケージに心を奪われた。
「これ、美味しそう!」とアリスはお菓子のパッケージを手に取り、目を輝かせた。
「落ち着いて、荷物に限りがあるから、買いすぎないでね。」と、レナが注意を促した。
最後に、三人は大型の3C(コンピュータ・通信・家電)ストアに向かった。店内に並ぶ各種電子製品は、最先端のテクノロジーの魅力を放っており、ミレアは悠々と前を歩きながら、後ろの二人を見渡し、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「ここの勘定は私が払わないから、みんな自分の給料で支払ってね。」と、ミレアは両手を組んで、まるで自分は無関係だというかのような態度を見せた。
アリスとレナは店内の最新設備を興味津々にチェックするも、価格を見た瞬間、目を見開かずにはいられなかった。
「これ……17万5千?!こっちは14万6千?!」と、アリスは驚きの声を上げた。
「それに、この大型ボードは……12万9千……この小型のも7万9千なの?」と、レナも声を震わせながら、価格に唖然とした。
二人は計算を始め、貯金と照らし合わせながら、果たして購入すべきかどうか葛藤した。一方、ミレアはそばで腕を組み、まるで見世物を楽しむかのような笑みを浮かべ、やり取りを眺めていた。
アリスは最新の機器に指を震わせながら、「本当に詐欺じゃないですよね?この値段はあまりにも衝撃的すぎます……」と呟いた。
「私たちが稼いでいる給料では、こんな小型の機器すら手が届かないなんて……」と、レナは小声でつぶやき、口元に軽く引きつった笑みを見せた。
結局、二人は打ちひしがれた様子でミレアの元に戻り、まるで財政的な嵐を乗り越えたかのような顔をしていた。
ミレアはにっこりと笑いながら、「それじゃあ、買うことにする?」と、あたかも見物人のような口調で尋ねた。
アリスは唇を噛みしめ、苦悶の表情を見せながらも、最終的にはため息をついて首を横に振った。「いや……これじゃ一年分の給料に匹敵するし、やめておくわ……」
「私はもう少し考えてみるわ。」と、レナも眉をひそめ、両腕を組んで、本当に必要なのかどうかを必死に考えている様子だった。
「はあ、やっぱり現実は厳しいわね。」とミレアは軽い笑いを浮かべ、両手を広げながら、やり取りの行方を楽しむかのように言った。「買えないなら、迷っている暇はない。別の楽しみを探しに行きましょう!」
アリスとレナは互いに顔を見合わせ、仕方なく頷きながら、心は少し落胆したまま、その手が届きそうで届かない場所を後にした。
その後、三人はゲームセンターへと向かった。五彩のライトが瞬き、機械音楽が絶え間なく響く中、一瞬にしてその楽しい雰囲気に引き込まれた。
「この景品、すごく可愛い!」と、アリスはクレーンゲームの中にある小さなキツネのぬいぐるみを見つけ、迷わず数枚のコインを投入して挑戦を始めた。
「本当に上手くいくの?この台、なかなか難しそうだけど。」と、レナは腕を組みながら横で様子を伺った。
「もちろんよ!見てて!」とアリスは集中してクレーンを操作したが、何度も惜しくも失敗し、最後はミレアが代わりに手際よく操作して、ようやく景品をゲットした。
その後、三人はプリクラを撮り、様々な楽しいフィルターを使って、笑いながら貴重な思い出を刻んだ。
気がつけば夕方になり、三人は評判の良いレストランを探し出し、豪華なディナーを堪能した。食事が終わると、満足感に包まれながら旅館へと戻った。
「やっと休めるわね……」と、アリスはベッドに倒れ込み、大きくストレッチをした。
「ところで、このベッドの割り振りはどうなってるの?」と、レナは部屋の大きなダブルベッドと隅にあるシングルベッドを見渡しながら、警戒心を含んだ口調で問いかけた。
「もちろん、私とアリスはこの大きなベッド、レナはシングルでね?」と、ミレアはにっこりと笑いながら答えた。
「なんでそうなるのよ!」と、レナは即座に拒否の意を示した。
そこで、三人はトランプで勝負することに決めた。結果、後輩のアリスは連戦連敗し、渋々シングルベッドへ枕を抱えながら向かう羽目になった。
「うーん……せっかくの休暇なのに、こんなことに……」とアリスは愚痴をこぼしながらベッドに潜り込んだ。
夜も深まった頃、部屋は次第に静けさを取り戻していた。しかし、夜中の半ば、アリスがふと起き上がる。
そっとシングルベッドを離れ、こっそりと大きなダブルベッドへと向かう。
「……何してるの?」と、まだ半分眠っていたミレアが目を覚まし、問いかけた。
「わ、私はただ喉が渇いただけ。水を飲みに行ったのよ。」と、アリスは小さな声で答えたが、その足取りは止まらなかった。
水を飲み終えたアリスが戻ると、まるで何もなかったかのように、堂々と大きなダブルベッドに飛び込んで、二人の先輩の隣に入り込んだ。
「このベッドのほうが温かいもの……」と、アリスは布団に潜り込み、何事もなかったかのように振る舞った。
「はあ……仕方ないわね。みんながこうやって集まるなら。」と、レナは体をひっくり返しながらため息をついた。
こうして、三人は一つのベッドにぎゅうぎゅうになりながら、旅の疲労と充実感に包まれ、次第に夢の世界へと落ちていった。




