コーラ姫の依頼再び?
「やったの⋯⋯か?」
「駄目よレッド。ブルーの強化剤舐めてたわ。チート過ぎよ」
「流石はマッドエンジニアのブルーね。チェリーさんの弾丸も、しっかり漂流者に痛みだけ伝わって、スーツそのものには傷一つないわ」
サファイア様はフロートの女神の来訪に気づいていた。愛しのグリーンを捕獲して、ホクホク顔のブラック・プリンセスの邪魔をする気はなかった。
それでもサファイア様が知っていてはしゃぐ二人を止めなかったのは、コーラの女神に浮気するエメラルド様のお気持ちを考えてのお仕置きなのだ。当人はそのつもりはないのが腹を立てる理由だろう。
以前までなら蜂の巣になるはずのグリーンの装甲。爆発で打ち上げられた後に、文句を言いながら嬉々として魔改造に励む、すみっこ暮らしのブルーが見えるようだ。
「シルバーの気まぐれね。『イラスト召喚』でS.o.D.A.のフロート部門の裏幹部になったって所かしら」
そんな部門あるのか、私はぶら下がったままのグリーンを見た。ブンブン首を振っている。設定が追いつかなくて混乱しているようだ。痛みはあったはずなのに、ジンジャーボーイクッキーのように大人しい。
「辻堂がブンブン振ってるの、プリンセスのせいじゃない?」
鎧甲は強化されても中の人の強さは変わらないパターンだ。
「放っておけば漂流しながら回復するわ。それよりいつまでその姿でいるのよ」
サファイア様が静かに注意すると、ブラック・プリンセスはコーラフロートの女神に姿を戻した。
「ここに来れば、わたくしの怒りや嫉妬も許されると聞いたのです」
希望の光を見た囚われの姫のような目で、コーラフロートの女神は目を輝かせた。
「そういえば、ポスターそのままだったね」
ハラハラと落ちたメンバー募集のポスターを見て、ブラック・プリンセスが現れた理由を察した。モブ戦闘員は放っておいても勝手に集まる。
しかし‥‥癖の強いヒョウリュウジャー達や、幹部クラスの女神が来るはずないと思っていた。
グリーンを懲らしめて満足したサファイア様は、もしかしなくてもヴィランの役割など忘れてる。正確には面倒になってほぼ私やチェリー嬢任せだ。ブルーの系譜はみんなそうなのか?
「あのね、コーラ姫。ここはパープル♡シャドウズの聖域なのよ。グリーンを連れて来ては、強制排除せざるを得ないのよ」
グリーンのヒョウリュウジャースーツが壊れないと知って、ノリノリでチェリー・ライフルで弾丸をぶち込み満足気なチェリー嬢。コーラ姫の膝上でぐったりしたグリーンを彼の持っていたチェリーカワリノアカでツンツンして遊ぶ。
「お願いがあって来たのです。おかげ様で、わたくしは皆さまに救われ元気になりました。でもこの方がフロートに肩入れする事で、S.o.D.A.の根幹が崩れてゆくのを見過ごせないのです」
マッドサイエンティストと聞いていたけれど、真面目な方なのかもしれない。でも何か変だ。コーラ姫は、グリーンの仮面を剥がそうとしている。
「わたくし、ソーダでもフロートでも本当はどちらでも良いのです。この方にイカを食べさせたいだけなのです」
風の噂でそんな話を聞いた気がする。しかし、つまみにも最適なイカ料理が好きそうなイエローと違い、グリーンは好んでイカを食さないと思う。
「漂流者にイカを食べさせたいのはわかったわ。あなたが漂流者の身体を気づかって、カロリーオフのコーラパワーをゼロに落としているのも」
コーラ姫は己の存在意義を失いかけてでも、コーラフロートの持つ糖分の暴力的な甘さを減らしていた。イカを食べさせようとする執念が、グリーンをアップルパイへ走らせたのかもしれない。
「うぅ‥‥イカが⋯⋯」
プチ・ブラック・スクイーズの吸盤付き玩具をペタペタ貼られたグリーンがうなされている。ここは仲間たちに恨みを買ってでも、グリーンを生かす道を歩ませねば『パープル♡シャドウズ』の名折れ。
「サファイア様、お知恵を」
漂流者に正しい漂流道へ走らせた実績を持つサファイア様ならば、さまよえるグリーンを苦悩させる事が出来るはず。
「そうね⋯⋯私達にも関わりあること。漂流者はどうでもいいけれど、コーラ姫の気持ちは叶えてやりたいわね」
「お姉さま、わたしも協力します」
「あてにしてるわよ、チェリーさん」
こうしてコーラ姫の為に、S.o.D.A.の女神たちが再び協力して動く事になったのだった。