ブラック・プリンセス来たる
本部基地────NAROUナロウ。そこに貼られた一枚のポスター。『新生パープル♡シャドウズ』 のメンバー募集中のポスターの前に、黒い影が立ち止まる。
メンバー募集以外、連絡先も募集内容も仕事内容すら書かれていない謎なポスターを気にするものはいない。
ヒョウリュウジャーたちは、自分の領域で暴れない限り、細かい事はあまり気にしない。たとえそれが新たな敵の誕生を示唆するポスターだとしても、グリーンが何とかすると思っているからだろう。
「わたくしの天職はここにあるのかも⋯⋯」
それは鎮められた想いのはずだった。(参照文献:【連載版】咫尺天涯戦隊ヒョウリュウジャー ~消えたブラック・プリンセス~ )
コーラフロートの女神として、正気を取り戻した漆黒のプリンセス。同じブラック同士という事もあり、商品開発部のヒョウリュウブラックとDr.イカーは仲良くブラックスクイーズのグッズ開発と、商品展開の為に精力的に活動している最中だ。
騒ぎにもなったものの、諸悪の根源により原因がわかりブラック・スクイーズ事件は解決された。コーラフロートが漆黒の嫉妬に駆られるような出来事はその後起きていない────わけはなかった。
司令官様とイチャイチャしながらマロンチャイフロートを楽しむグリーンの話を聞いてしまったのだ。もちろん時系列的にも、内容的にも誤解である。クリームソーダでもコーラフロートでもなく、マロンフロートへ興味を持つ想い人。
マロンに罪はない。グリーンも、たまには変わったものを選ぶ権利はある。
「いや、ないよ? グリーンにそんな権利あるわけないじゃん」
黄金色の囁きは、きっと気のせいだ。ヒョウリュウジャーの統括たるゴールド様は、お尻の布面積について真剣に悩んでいる所だから。
女神様にはグリーンの考えなど関係のない話である。悲しみと嫉妬の黒い炎が、再び吹き荒れようとしたその時だった。
「クリックリッ〜マ・ロ・ンは最高だぁ♪」
ポスターの前に立つ影のすぐ側を、微妙な歌を口ずさみながら歩む一人のヒョウリュウジャーの姿があった。ブラウンの鍼治療を受けて、持病の腰痛もなくなり、スッキリした顔のグリーン────その人が通りがかったのだ。
イラスト提供:澳 加純さま
間が悪い⋯⋯そして運のない男である。忽ち闇に包まれ触手で動きを封じ、れて有無を言わさず拉致されるグリーンだった。
◇
「敵襲ーーーー!!」
『メイド喫茶 愛しのチェリー』 改め『パープル♡シャドウズ』 本部。特殊空間を抜けてに現れた影に向け、私レッドはチェリーのペンライトを、チェリー嬢がチェリー・ライフルを撃ちまくる。
「イタタタタッ⋯⋯痛い、やめて、降ろして!!」
煙の中から誰かの声が聞こえる。本部からやって来る女神様登場の演出で使うドライアイスで視界は悪い。霧の中のような室内。しかし構わず撃ちまくるチェリー嬢。持ち上げられた緑の頭部を敵と認識したようだ。
煙が徐々に収まる。チェリーの種弾の盾にされたグリーンと、美しいブラック・プリンセスの姿がそこにあった⋯⋯。
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