私のスキル クリエイトは便利かも
ガシャン!
みんなが音の方へ振り向くと、そこにはアイスブルーくん2号,ルイスくんが、一生懸命、大きなスプーンとフォークで、侍女に助けられながら食べていた。
「も、申し訳ございません。い、急いで食べさせますので、申し訳ございません」
メイドが謝ってきた。
なんですと、急いで食べさせる、ですと?子供なのだから,ゆっくり食べさせるでしょう?急いで食べさせたら、誤飲したり、噛まずに飲み込んでしまうでしょう。噛むことが大事なのよ。
「ちょっと待って、アイルブルーくん2号、ルイスくんが急いで食べさせたら、喉に食べ物が詰まってしまうわ。子供はゆっくり食べさせないとダメじゃない。噛むことが大事なのよ」
「そ、それは..」
メイドが恐縮してしまった。恐い言い方だったかしらね。
ウィリアム様は、小声で別方向でツッコミを入れていた。
「アイスブルーくん2号って、なんだよ」
肩を震わせて笑っていた。あなたは弟と同じ顔です。将来有望なイケメンですよ。
私はツカツカと、ルイスくんのところに行き、メイドに席を譲ってもらい、ルイスくんにご飯を食べさせようとした。
この世界に来る前は保育園3歳児担当だ。
「ルイスくん、お姉ちゃんが食べさせてあげるわよ。一緒に美味しい朝食を食べましょうね。このスプーン、子供には大きい大きいわね。子供用に小さくならないかしらね」
と、思って言った、その時に、私の手から魔力が流れ、スプーンが光った。あら不思議、スプーンが小さくなってしまった。
みんな仰天。私も仰天。
「な,なぜスプーンが小さくなったの?えー?」
誰にいうのでもなく自問の言葉しか出ない。
「それが、ホワイティスのスキル、クリエイトなのか?そういう使い方なのかな」
私も知らないわよ。不思議な現象に、みんなでこれがスキルなのかと、首を傾げるしかなかった。
「スキル、クリエイトって、作り出す、産み出す、創造するじゃないの。いろいろ作れるじゃないの。私は、DIY得意よ。子供たちのお遊戯会の衣装作るの得意だったのよ」
「ごめん、ホワイティス、また難易語が出てきたぞ。ディーアイワイ?おゆうぎかい?それはなに?」
「ウィリアム様、また暴走してごめんなさい。DIYは自分で作ったり直したりすること。お遊戯会は子供達が踊り、劇の発表会をするという意味なの。そのときに衣装を作るの。あと背景などの大道具を作ったりする、それが得意という意味」
すごい、この子のスキル、クリエイト。ものを作れるじゃないの。
おじいちゃん譲りの大工業、なんでもDIYしていた。手先は器用だから、保育園でも、大道具、小道具、衣装、飾り類などを作っていた。
とりあえずイメージして、魔力流せば,作れるのかしら。よし今度はフォークだ。
魔力を流し、小さくなぁれ。まぁ,不思議、子供用の小さなフォークの出来上がり。
やりました。
「ルイスくん、この小さいスプーンとフォークで食べてみようね」
「あい」
握るようにスプーン持つ。小さいお口に入れる。モグモグ。
かわいい。
「お上手に食べられました。えらいです」
「ボク、じょうずにたべられまちた」
頭をなでなで。
子供は褒めて褒めて、伸ばすのが良い。
「さあ、いっぱい食べましょうね。美味しいね」
「あい、おいちいでしゅ」
小さい子供は大変だけど、かわいい。癒しです。
「いろいろ、聞きたいことがある。ホワイティス嬢、すまない、先に執務室で仕事をしている。食べ終わったら、執務室に来てください。待ってます」
コンフォート辺境伯様は食べ終わって、先に執務室に行った。
「ホワイティス様、わたしがルイスと一緒に食べているので、ホワイティス様も食べてください」
「メイサ様、ありがとうございます。ルイスくん、お母さまが今度一緒に食べてくれるって、よかったね」
「おかあしゃまといっしょ?うれちいでしゅ」
メイサ様、目が潤んでいるぞ。どうした?
みんなの目が潤んでいる。
ウィリアム様を見ると微笑んで、あとでと言われた。あとで説明してくれるらしい。
では、食べてしまおう。
「ホワイティス様、こちらの料理が冷めてしまっていますので,温かいものに変えてきます。少々お待ちいただけますか」
「えっ、大丈夫よ、このままで。もったいないし、美味しいものは冷めても美味しいから大丈夫よ。お茶だけ温かいものをお願い」
「か、かしこまりました」
「ホワイティス、きみは冷めても文句言わないのだな。高位貴族令嬢は、冷めたら、温かいしたものを変えさせようとするよ」
「なんて勿体無い。冷めても食べられるわよ」
「そうか、もったいないレイスが出るからな、ふふっ」
メイサ様とルイスくんを見ると楽しそうに食べていたよかった。
ウィリアム様が小さい声でありがとうと言ってきた。
ウィリアム様が,自分のお茶を持ってきて,隣に座って説明してくれた。
「一番下の妹が8ヶ月前に生まれたのだ。だけど、母上の産後の肥立が少し悪くて、情緒もおかしかったのだ。だからルイスが母上と遊びたくて近くに寄っても、母上は、部屋に戻って篭ってしまうことが多かったのだ。だから、ルイスとの関係もどうしたらいいかわからない、そんな状態だったのだ。出産前も、いろいろ周りが、36歳で産むなんて、大丈夫か、などとうるさくいう奴らがいて、産む前から精神的負担があったんだ。でも、母は産む決意はしているし、楽しみでもあった。出産後、体調がすぐれなくて、不安もあったと思う。でも、昨日ルイスを抱っこしたり、今日もご飯を食べさせたり、徐々に改善していっている。まだ、情緒が不安定かもしれないが、きっかけになってくれた。だからありがとう」
そうか、メイサ様、産後うつだったのかもしれない。36,7で産むことは覚悟が必要だ。この世界、どのくらい医療が進んでいるかわからないけど、高齢出産と言えば高齢出産だ。自分が調子が悪く、思うように動けない、それでいてルイスくんと遊べない、赤ちゃんも思うようにお世話ができない、もどかしさで、どんどん自分の殻に閉じこもってしまう。これは、みんなが協力して,不安を取り除かないといけないわね。
今後、メイサ様、旦那様、侍女、メイドたちと話をして協力を仰ぐしかないよね。
「そうなのね、きっかけとなってよかったわ。でも、育児というのはみんなで協力していくことが大事なのよ。これからよ。ウィリアム様、これから鍛錬にいくの?」
「ああ、では、これから鍛錬に行ってくる。後で、父上の執務室で会おう」
鍛錬に行ってしまった。
私は、メイサ様とルイスくんのところに、席を用意してもらい、一緒に食べた。
「あれ,ルイスくん、これは嫌いなお野菜かなぁ」
にんじんを指した。
「おいちくないでしゅ」
「そうだね、これはちょっと大きいね。ルイスくんのちっちゃお口に入らないかな。じゃー,今回はお姉ちゃんが食べていい?それともすこーしだけ食べてくれるかな」
「うーん、しゅこしだけならたべましゅ」
「いい子だね、ルイスくんは。では、ほんの小さく、このぐらいは食べられるかなぁ」
と、3ミリぐらい、ほんとに小さくして、料理のソースに絡めて、アーンをさせた。
どうかなぁ。ゴクン。ほぼ飲んだなかな。まぁいいか。口に入れてくれたから。
「えらいね,ルイスくん。嫌いなものを食べちゃったね。えらいよ」
「ボク、えらい?たべたよ」
メイサ様に、褒めるように小声で言った。
「ルイス、えらいわね。そんな頑張り屋のルイスをお母さま大好きよ」
「ボクも、おかあしゃま、スキ」
ニコニコです。メイサ様は目元がウルウルしてますね。いいね、ほのぼの。