寝てもダメだった
「ウィリアム様、ありがとう、ところでこの子の家族構成を教えて欲しいの」
「ホワイティスの、ライザック侯爵家は、両親、ホワイティス、弟の4人家族だ。父親は、王宮で、文官をしている。母親は、伯爵の出。領地が隣同士だったので、昔からの知り合いで,相思相愛みたいだ。弟は、ホワイティスの2歳下の14歳。リカルドという名前だ。やはり文官を目指している秀才だ。ただし、ホワイティスとの仲は最悪だ。リカルドはホワイティスを毛嫌いしているという家族構成だ。そして、ホワイティスの魔法やスキルの方だが、癒しの手を持っているが、どういうスキルかはわからない。クリエイトという工作系のスキルも持っているが、これもわからないということ。そもそもホワイティスが、何かを作ったりすることはない。魔法属性は生活魔法と言っていた。細かいことは全く聞いていない。というか、婚約者という肩書きだったが、俺と会話はなかったよ」
弟よ、おねえちゃんを毛嫌いしているのか。仲が良くなるよう努力しよう。ただ、記憶が戻るかどうかわからない。
癒しの手は、治癒魔法とは違うのか?
クリエイト、工作じゃないの。おじいちゃんに大工、DIY、基礎応用を教えてもらった。作ることは好き。犬のペロの犬小屋を作ったこともある。
保育園では、飾りを作ったり、お遊戯会の大道具、小道具を作ったよ。衣装も作った。スキル クリエイト、楽しそうなスキルね。
「なるほど、両親の夫婦仲は良い、私と弟とは仲が悪いという家族構成か、なるほど。そして、私はわがまま放題だったよね」
「今のホワイティスならうまくやっていけるのではないかな。あっ、でも記憶が戻って、ホワイティスも前と同じに戻ったら変わらないけど。明日、起きてどうなっているか怖いよ」
確かに、前のホワイティスが戻った場合、えっ、私はどうなるの?え?
そこへ湯浴み準備ができたということで、ウィリアムくんとは、また明日となりました。
お風呂に入って、寝て明日記憶が戻っているか、それにかかっている。私の魂はいかにー?
湯浴みでは、極上のエステを堪能。そして、朝までぐっすり眠ってしまった。
カーテン越しに光が入る。朝だ。
あー、なんだか、変な夢を見てしまった。わたしがなぜ、西洋人のようなの人になってしまった夢。でも、お風呂も良かったし、ご飯もおいしかった。現実味を帯びているね??
あの男の子もイケメンだったよね。アイスブルーの目とシルバーの髪。寒そう。夏にはいいかも。
すごいはっきり覚えている夢。夢だよね。
ハッ、これは夢だ。絶対夢だ。さぁ、目を開けるよ。恐る恐る目を開けた。
ここは?わたしの畳の部屋ではない。私の部屋の天井には推しの二次元アイドルのポスターが貼ってあるのよ。いつも朝,微笑んでくれるあの顔がない。活力を与えてくれるあの笑顔はどこ?
「ホワイティス様、お目覚めですか?お着替えをお手伝いいたします」
「ひゃーーーー」
ベットから転がり落ちた。
「ホワイティス様大丈夫ですか。お怪我はありませんか」
「ホワ、ホワ、ホワイティス。そ、それは、私の名前ですね」
「ホワイティス様大丈夫ですか。お怪我はないですか?頭を打ちましたのでしょうか」
「だ、だ、だいじょうぶです。すみません」
記憶が戻ってない。普通ラノベでは,頭に流れ込むのではないの?まだ?カモーン。
ダメでした。記憶が戻りませんでした。はぁ、まぁ、しょうがない。戻らないか、しょうがない。よし、着替えだ。
「えーと、すみません、お名前お聞きしていいですか」
「リンダです。お着替えを手伝うよう仰せつかりました」
「リンダさんね。それでは着替えをお願いします」
「あの、リンダと呼んでください。メイドにさんは要りません」
「そうなの、ごめんなさい。それでは、リンダね。着替えをお手伝いしてください」
「敬語も必要ありません」
「そうなんだ。わかったわ」
「こちらのドレスで良いでしょうか?昨夜のはパーティのドレスのため、メイサ様がこちらを用意してました。着ていないドレスとのことですが、どうですか?色もお似合いだと思います」
鮮やかな水色のオーガンジーのドレス。
これを私が着るの?似合うかしら。
着てみたら、なかなか可愛い。ホワイティス自体の素材は良い。
髪型は、リボンと一緒に編み込みにしてもらい、シニヨンにまとめた。
よし行こう。
ドアの外で、ウィリアム様が行ったり来たりして待っていた。昔ドラマで、産気づいたら奥さんを待つ旦那かっていうかんじだ。
「ふふっ、おはようございます。ウィリアム様」
「お、おはよう、ホワイティス。どうだ、記憶戻ったか?」
「ふぅ、ダメだったわ。全く思い出せなかったの。よし、このまま行くしかない」
「やっぱり、潔いな。はい、腕をどうぞ。エスコートしていくよ」
「ありがとう。お布団ふかふかでぐっすり眠れたわ」
「それはよかったね」
2人で朝食室に入った。
「おはようございます。コンフォート辺境伯様。メイサ様。昨日は、体調不良のわたくしに親切にしてくださり、ありがとうございます。この通り、元気になりました。(あら?言い回しが、もしかして違うかも、メイサ様が、しょっぱい顔している)
「おはよう、ホワイティス嬢。元気になってよかった。昨夜、メイサから話を聞いた時は驚いた。今後のことを、食事が終わったら、話をしよう。さぁ、一緒に朝食を食べようではないか」
「はい、ありがとうございます」
元気いっぱいに答えた。
「うむ、元気そうでなによりだ」
ウィリアムさまの父上は、イケオジ辺境伯。魔獣討伐をしているにしては細身だね。ウィリアム様が大きくなったら、こんな感じになるのかと、1人ほくそ笑む。
「おはよう、ホワイティス様。お加減いかがかしら」
「メイサ様、元気ですが、昨日と変わりません」
元気よく答えた。メイサ様、そう、と言ってがっくりと肩を落としていた。
「さぁ、ホワイティス、席に座ろう」
ウィリアム様が席を引いてくれた。紳士だねぇ。
「今日も美味しそう。いただきます」
「そうだな,いただきます」
びっくりした顔で、コンフォート辺境伯様が聞いてきた。
「ウィル、いただきますとは何か?」
「それはですね、ホワイティスが始めたのですが、食べる時に、敬意を表する動作から生まれた言葉なのです。肉や魚、卵はもちろん、野菜や果物も含めて、食材の「命」そのものに向けた言葉だったり、あとは食材を育てたり獲ったりした人や、食事を作った人に対する敬意と感謝の気持ちを込めた言葉です。だから全てのものに感謝していただくという言葉なのです」
「ほぉ、感謝して食べるという言葉か。いい言葉だな。料理長にも作ってくれてありがとうの言葉でもあるな。
それでは、いただきます」
「「「いただきます」」」
みんなでいただきますをしてから食べた。
あー、おいしい。このスープ出汁が効いている。
「ウィリアム様。ここの料理長は本当においしく作る方ね。おいしいわ」
「そうなんだ、ホワイティス。辺境は、自給自足だから、それを生かして作っていくんだ。料理長と厨房のみんなには、感謝しているんだ」
なるほど、自給自足の生活で、うまみを活かした料理。やりますな、この料理長。
「ところで、ホワイティス様、今後のことを食事が終わったら、お茶をしながらお話しいたしましょう。ウィリアムは、鍛錬した後、お父様の執務室に来なさい」
「はい、母上」