この世界は魔法と魔獣がいる世界
お腹すいたと、空気も読めず発した言葉に対し、メイサ様は軽食を用意してくれた。ごめんなさい。
メイドさんたちが、軽食を持ってきてくれた。目の前には、なぜかメイサ様、そして隣にはウィリアムくん。
目の前に料理が並べられ、食べることになった。
「いただきます」
と手を合わせて食べようとした。
「ホワイトティス、それ何?」
ウィリアムくんは不思議そうに私を見る。
「これは、食べる時に、敬意を表する動作から生まれた言葉なの。肉や魚、卵はもちろん、野菜や果物も含めて、食材の「命」そのものに向けた言葉だったり、あとは食材を育てたり獲ったりした人や、食事を作った人に対する敬意と感謝の気持ちを込めた言葉なの。だから全てのものに感謝していただくという言葉なの」
「なるほど、すごいな。感謝して食べる、いいなぁ、その言葉。奥が深い」
「そうね、作った人への感謝も入るなんて、言葉に、したことがないから、言葉にするのもいいわね」
ウィリアム様もメイサ様も、なんだかいただきます,で感動されている。うん,いい言葉だよ。いただきますを言って、モリモリ食べる私。
「お、おい。ホワイトティス。そんなに食べるのか?いつも少しだけ食べて終わるのに,大丈夫か」
「えっ、こんなに美味しいのに、少量しか食べないの?もったいない。もったいないお化けがでるわよ。料理長にお礼を言いたいわ。こんな美味しい料理を、作ってくれて、今、遅いのに出してくれるんだもの。ありがたいわ」
「ふふっ、料理長が喜ぶよ。でも、もったいないおばけって何?」
「ご飯を残すともったいねぇ、もったいねぇって、出てくるの。おばけと言わない?幽霊?あっ、異世界だとレイスだ。もったいないレイスが出るのよ」
「「ぶふっ(ふふふ)」」
なんだか失笑の笑いがあちこちから聞こえてくるのですが。
「残さずきちんと食べないとダメよ。わかった?」
「あ、あぁ、ふふっ、も、もったいないレイス、ククッ、でるんだね。残さず食べるよ」
メイサ様もお茶を飲みながら、私たちのご飯が食べ終わるのを待っていてくれた。ウィリアムさまが嫌いなものをお皿の隅の方に避けていたので、もったいねぇ、もったいねぇ、と言ってあげた。笑い合いながら食べた。楽しい。
あー美味しかった。この家の料理長凄腕ね。
「ごちそうさまでした」
「ホワイティス、その言葉は、ありがとうっていう意味?」
「そうね、日々の献立を考え、買い物をし、調理して食卓を整えることは大変な労力して,ご馳走を出してくれることへの感謝よ」
「なるほどな、いただきますとご馳走様でしたか、いいな。俺もこれから言ってみよう」
いい子だね、ウィリアムくん。
「ところで、ウィリアム、婚約破棄とは何ですか?今日は、学園のパーティがあったはずですが、何があったのかしら?」
メイサ様の鋭いツッコミが入りました。
「母上、えーとですね」
ウィリアム様も母親には頭が上がらないのね。
「メイサ様、私もウィリアム様に聞いた話ですが、このホワイティスが、多分、理由はウィリアム様となんちゃら男爵令嬢が浮気していると思って罵倒し、手を挙げそうにしていたらしいのです。そこに、ウィリアム様がなんちゃら男爵令嬢を助けた。そこで私、白井すずが覚醒。その目の前の光景が、
・ウィリアム様に頬を染め、しなだれて腕を組んでいるなんちゃら男爵令嬢
・ウィリアムさまからの婚約破棄宣言
覚醒した私は、ウィリアムさま自身はこの男爵令嬢と浮気していたのに,婚約破棄だと?と勘違い?して、婚約破棄を受け入れ、啖呵切ってパーティホールを出てきたまではよかったのですが、記憶がないので、どこ?だれ?となり、あとを追いかけてきたウィリアム様に助けてもらいました。婚約破棄は保留になってます。この説明でわかりましたか?」
「なんとなく、わかりました。ウィリアム、あなたはその、フフッ、なんちゃら男爵令嬢と浮気をしていたのですか?」
ゴォーーとブリザードが立ち込めているようなメイサ様。浮気は許さないよね。
「ご、誤解です。私は浮気などしてません」
「浮気した人の常套文句だね」
「違うから、ホワイティス。クラビット男爵令嬢とは、学生会が同じで、イベントの打ち合わせを何回もし、準備もしていたから一緒にいることが多かったんだ。だから勘違いなんだよ」
「ウィリアム、クラビット男爵令嬢と一緒にいる機会が多かったのですか?それは周りの人たちは、2人が仲がいいと噂とかにはなっていなかったのですか?」
「それは、あったかもしれません。しかし、浮気は絶対しておりません。配慮が足らず申し訳ございませんでした」
「ホワイティス様は、その噂を聞いて、クラビット男爵令嬢を罵倒していたのかしらね。でも、それで婚約破棄宣言ですか?ウィリアム」
「そうなのです、メイサ様。だから、不満がある婚約だからそういうふうに言ったのかなぁと思って、いま、婚約保留です」
「いや、確かに、前のホワイティスはわがままで,話を聞いてくれないという不満はあったが、それでも浮気は致しません」
「ふぅ、おじいさまの時代にも、あったのよ。卒業パーティの時に、どこぞの男爵令嬢がノートをビリビリにされ、隠され、噴水や階段から落とされたという嫌がらせをした公爵令嬢に婚約破棄を突きつけた第二王子とその周辺令息がいたわね。結局、魅了されていたことがわかり、公爵令嬢は冤罪となった、という公爵令嬢はこの子のお祖母様だけどね。お義父様が、そのパーティで、お義母様にプロポーズしていたわよ。ウィリアム、あなたもそんな婚約破棄宣言ではなくてよかったわよ」
「えー、そんなことがあったのですか。お祖母様、悪役令嬢に仕立て上げられていたのですね」
「えっ、そう、悪役令嬢という意味不明な言葉を、あの魅了男爵令嬢が言っていたみたいなのよ。魅了は禁忌なことなのよ」
「怖い、怖い、なんの世界線。この異世界」
「ホワイティス、よくわからない言葉を発しているよ。でも、あの時はホワイティスの暴走が我慢ならなかったから、婚約破棄宣言してしまった。そうだ、あのままで2人で退席してしまったから、あの後どうなったのだろうか?」
「ふぅ、あなた方が帰ってきてから、いろんなことがありすぎて、疲れたわね。
ホワイティス様、ご飯を食べたばかりなので、この後、胃を少し休ませてから、湯浴みの用意をしますわ。その間、お茶を召し上がっていてください。これから用意してくるので。ウィリアム、あなたはここにいるの?」
「はい、少しでも、話をしておきたいので、ここにいます」
「ありがとうございます。メイサ様。
はぁ、それよりウィリアムくん、じゃなくて様。美味しい料理だったね。すごーく幸せよ。人間、わらって、食べて、寝る、これが一番幸せよ」
「うん、ホワイティス、太るから食べてすぐ寝ないほうがいいよ」
「淑女に太るとか言ってはいけないわよ」
「あっごめん。今のホワイティスには言える」
「ブーブー」
「なんの真似?ボア?」
「ボア?って魔獣?この世界、魔獣がいるの?もしかしてここは魔法の世界なの?そうよね、スタンピードでおばあさまが毒に、と言っていたのは,魔獣がいるということなのね」
「そうなんだ、辺境伯は、魔の森に隣接しているので、魔物の討伐は必ずするよ。辺境に住むものは、小さい頃より、剣術、武術に特化しているんだ。もちろん魔法に特化したものもいる。そうして、魔獣から守っているんだ」
「女性も討伐に参加するの?」
「女性でも騎士になっている人や魔導士になり、一緒に戦う人もいる。もちろんおばあさまのように生粋の公爵令嬢で、戦わない人もいる。でも、後方支援で、みんな一丸となって戦うんだ」
「一丸、よーし、私も戦うわ。私は何ができるの?」
「癒しの手とクリエイト、生活魔法以外は、ごめん、わからない。なんと言っても、ホワイティスは魔法を使わなかった?使えなかったのだから」
「えっ、え?えーー。使えなかった....の」
「た、多分小さい時からみんな魔力操作などしているけど、ホワイティスは、そういう努力は好きじゃなさそうだったよ」
「なんてこと、これは転生チートで、魔法習得するわ」
ホワイティス、あなたって、あなたって人は、なぜ魔法使いになる努力を怠ったのよ。
もう、脱力。はぁ。