第16話 楽しい合コン
俺は風間隼人。合コンでの一連の出来事を見て、面白くなってきた。やはり名雲って奴は、亜美の元カレだった。面白いじゃないか。そいつが絵里と付き合ってるって噂もあるし、ちょっと手を出してみるか。
絵里のことは、あいつが亜美の妹ってことくらいしか知らない。でも、あの行動力と計算高さは認める。あいつが俺に近づいてきた時、俺は何か面白いことが起こる予感がしたんだ。
合コンの場で、絵里が名雲との関係を暴露したときは、さすがに驚いたけど、興味深い展開だ。あいつらの関係がどうなってるのか、俺には関係ないけど、ちょっと茶化してやろうと思って。
「いい関係だな、微笑ましい」と言ってやった。
でも、あの名雲って奴、予想以上に反応薄かったな。こっちが楽しもうとしてるのに、全然乗ってこない。つまらない奴だ。
俺はこの合コンに参加したのも、単純に面白そうだったからさ。立花には無理を言って参加させてもらったんだ。俺は昔から女にモテて、苦労を知らない。今日の合コンも、亜美の妹がいるっていうとんでもないハプニングだったけど、俺にとっては祭りみたいなものだよ。
亜美の元カレがいるってのも、面白い偶然だったな。ある意味で、この場は最高のショーを見せてくれてる。俺は内心、「この場をさらに楽しませてくれてありがとう」と言いたいくらいだ。
でも、この場の雰囲気は氷のように静かになった。立花と亮介という男が必死に盛り上げようとしてたけど、あんまり効果はなかったみたいだ。俺はそんな状況でも、どこか楽しんでたよ。人の心理を見るのは、いつも面白いから。
この合コンの空気を壊すように、小川っていう女が突然俺たち、特に俺に向かって、「みなさん自分勝手ですね」と言い放った。自分勝手、か。確かに俺はそうかもしれない。でも、この根暗っぽい女にそんなことを言われる筋合いはないと思った。
俺は足を組み替えながら、彼女に反論した。
「それは失礼じゃないか？ せっかくの楽しい場なのに、水を差すのか？」
俺の言葉には自信があった。俺はこの場を楽しんでいるし、他の人たちもそうだと思ってたからな。
しかし、小川は俺の反論にも動じず、立ち上がって言った。
「どの口がそれを言いますか！ あなたたちは自分たちの楽しみだけを追求して、他人の気持ちを踏みにじっています！ それが楽しいと思っているのですか？」
彼女の言葉には、強い怒りと非難が込められていた。俺は一瞬言葉を失った。こんな女に、こんなに強く言われるなんて思ってもみなかった。
周りの空気は一気に硬くなった。立花と亮介も何も言えずに黙っていた。小川の言葉には、重みがあった。
俺は、しばらく黙って彼女を見つめた。この女、何を考えてるんだろうか。そして、俺は一体何をしているんだ？
小川という女は、言葉を続けた。
「特に風間さんと岩浪さん、あなたたちは自分の想いばかりで、相手のことを考えていません……名雲君がいまどんな気持ちか分かってますか？」
うざいな、なんだ急にこの女は。俺は内心でイラッとしながら、小川を見つめた。すると、彼女は名雲と同様に、この場から去っていった。乱暴にお代だけ置いて、帰っていく彼女を見て、俺は思った。
「多いな、どうやら仮は作りたくないらしい……」
別に彼女の言っていることは正論かもしれないが、腹が立つ。なんであんな女にここまで言われないといけないんだ？ あの女も泣かせてやろうか？ 俺の女にならないやつは全員敵だからな。だから後悔しろ。
合コンの場は一気にしらけた雰囲気になった。立花と亮介も何も言えずにいる。俺はこの場の雰囲気に嫌気がさして、立ち上がった。
「じゃあな、俺はここでお開きにするか」
そう言って、俺は居酒屋を出た。この場にいるのはもうバカバカしくなってきた。
しかし、事態は動く。
この絵里という女は、本当に予測不能だ。ずっと立って黙っていたと思ったら、突然俺の手を引っ張って、俺の頬を叩いてきやがった。痛い。
俺は怒りを抑えながら、絵里に睨みつけた。
「ふざけんなよ！」
言い返すと、絵里はさらに激しく反応した。
「先輩のことを悪く言うやつは、私が殺すぞ！」
絵里の声が店内に響き渡った。マジか、この女は怒らせるとマジでやばい。俺の長年の勘が、危険を感じさせる。
そして、絵里は小川の後を追うように店から走っていった。俺はただ呆然と立って、彼女の後姿を見送った。
くそ、なんなんだよ。面白くねえな。絵里も、小川も、名雲も、全員が予測不可能な動きをする。今日の合コンは、完全に予想外の展開になっちまった。
俺は店を出て、夜の街を歩きながら考えた。このゲームはもう終わりか？いや、まだ何かできるかもしれない。でも、今はちょっと冷静になる必要がある。
絵里の行動、小川の言葉、名雲の態度。これらすべてが俺の頭の中で混ざり合い、どう動くべきか考える。
でも、確かなことは、今日の合コンは、俺にとって忘れられない一夜になったということだ。これからどうなるか、楽しみにしてやるよ。
