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第15話 泣いていいですか?

 絵里ちゃんの突然の告白に、俺の心は停止した。彼女の表情には迷いがなかったが、俺は完全に混乱していた。何を言っているんだ、絵里は。どうしてこんな嘘をつくのか。俺たちは何もないのに。


 周りは沈黙に包まれた。亮介が必死に雰囲気を盛り上げようとしていたが、その努力も空回りしているように見えた。合コンの楽しい雰囲気は完全に消え失せ、緊張感が部屋を支配していた。


 その中で、立花さんが「えっと……」と切り出した。彼女の声は小さく、緊張に満ちていた。俺は立花さんの方に目を向けた。彼女の表情には、何か言いたいことがあるように見えた。


「その、私たちも驚いているんですけど……」立花さんが言葉を選びながら話し始めた。「絵里さんと名雲さんが付き合っているなんて、初めて聞いたので……」


 彼女の言葉に、周りの空気がさらに硬くなった。俺はただ呆然として、何も言えないでいた。絵里ちゃんのこの行動が何を意味しているのか、全く理解できなかった。


 絵里ちゃんは笑っていたが、その笑顔には何か計算されたものを感じた。彼女は何を企んでいるのだろうか。そして、俺はどう対応すればいいのだろうか。



 絵里ちゃんの突然の宣言に、俺は吐き気を感じるほどのショックを受けた。今にでも崩れ落ちそうな気分だった。それでも、絵里ちゃんは俺の手を握る力を強めた。彼女は、安心しろと言いたいのだろうか。


 風間は俺たちを見て笑って、「いい関係だな、微笑ましい」と言った。しかし、その言葉が終わるやいなや、絵里ちゃんは更なる宣言をした。


「言い忘れましたけど、私の名前は絵里と言いましたけど、苗字は岩浪……私には姉がいるんですけど、偶然にも立花さんと風間さんと同じ大学でしたね! ねぇ?先輩?」


 絵里ちゃんは小悪魔のような笑いを浮かべながら、横目で俺を見た。


 その瞬間、俺は「あ、終わった」と感じ、魂が抜けたような状態に陥った。絵里ちゃんの言葉が何を意味しているのか、その全貌が俺の頭の中で組み立てられた。彼女は、姉の亜美、風間、立花さんとの関係を示唆しているのだ。




 立花さんは何かを察したのか、会話の流れを変えようと試みた。しかし、風間がそれを遮るように話し始めた。


「そういうことか……君が亜美の元カレだったか! そういえばいたね、そんなやつ」風間はにやりと笑いながら、俺を見下ろすような態度を取った。


 その瞬間、俺の中で何かが弾けたような感覚があった。ぞわっとした感覚と同時に、怒りがわき上がってきた。俺は立ち上がり、自分の分のお代をテーブルに置いた。


「帰る」



 俺は言い、絵里ちゃんの手を強く払いのけた。そして、逃げるように居酒屋を出て行った。背後から何か声が聞こえたような気がしたが、俺は振り返らなかった。


 夜の街を歩きながら、俺の心は怒りと混乱でいっぱいだった。風間の言葉、絵里ちゃんの行動、そして亜美への未練。すべてが頭の中で渦を巻いていた。


「なぜ、こんなことになったんだ……」


 俺は独り言をつぶやいた。この一連の出来事が何を意味しているのか、まだ完全には理解できていなかった。


 絵里ちゃんが追いかけてくる。


「なんですか?」


 聞いてきたが、俺はただ「ごめん、一人にしてくれ」と答えることしかできなかった。今は絵里ちゃんというか誰かと一緒に居たくない。

 恥ずかしさと、悔しさと、怒りで何をするか分からないからだ。


 なぜこんな状況になったのか、その理由が分からなかった。


 しかし、一つだけはっきりしていたことがあった。それは、俺がもうすべてを失ったということだ。彼女も、俺を好きになってくれた人も、親友も、新たな出会いの女の子も。


 居酒屋から出て、どうしようもない気持ちのまま、俺は近くの公園まで走った。そこでベンチに座り、涙が止まらなくなった。心の中は悲しみと絶望でいっぱいだった。


 夜風が冷たく感じられる中で、俺はベンチに座ったまま、何も考えられなくなった。絵里ちゃんの行動、風間の挑発、そして自分の感情。すべてが心の中で混ざり合い、理解できない複雑な感情が渦巻いていた。


「なんで俺は……くそ」


 繰り返し考えたが、答えは見つからなかった。ただ、深い悲しみが俺を包み込み、涙は止まることを知らなかった。


 公園のベンチで泣いている自分が、情けなく感じられた。でも、その時はもう、何をどうすればいいのか、どう感じればいいのか、何も考えられなかった。


 夜が更けていく中で、俺はただ一人、公園のベンチで涙を流し続けた。

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