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研究所へ

アレギスが桃色の鳥を捕まえ、猪や草花などいくつか手に入れたので一旦ライルズに戻ることにした。呪文を唱え、同じように周囲に光が集まりドームに包まれる。このまましばらく待てばすぐに空の上だ。


そうしてライルズに戻り、城に戻る途中で魔法部隊の集まる研究所に向かっている。魔法部隊が集まる研究所では、様々な専門家が所属しそれぞれが研究を進めている。魔法が伝えない者も専門的な知識があれば所属することができるため、所属するヒトは多い。

ちなみに研究部門というが、魔法による攻撃や防衛を専門とする者も所属している。平時は研究所で作り出された魔導具などの安全を確かめたり、街で戦闘が起きた際の非常装置を作成したりとしている。だが何かあったときは前線に出れるよう日々研鑽を積んでいるらしい。ドラゴンとの戦闘のときに参加したのは彼らだろう。


アレギスは桃色の鳥と交友を深めるため途中で分かれて城に戻った。

私とミリアーナは研究所の前まで来たが、ついその建物の特殊性にまじまじと眺めてしまう。石造りで入り口が広く、縦にも横にも大きい。一部では球体のガラス張りの部屋に緑が見えたり、大きなステンドグラスの窓があったりするところもあるが、殆どはガッシリとした重苦しい作りをしているようだ。

なによりその壁が魔法で補強されている。ここまでびっしり様々な属性の魔法耐性や爆発耐性などを補強されている建物は始めてみた。もうこの建物そのものが魔導具みたいなものだ。


「お気をつけください、お嬢様。ここでは常に爆発やら暴発やらが起きているそうですので。」

「…この補強は内部からの崩壊を防ぐためか…。」


研究所ということで外部からの攻撃を警戒して、ということかと思っていたがそうでもないらしい。まあ研究を行っていれば多少の失敗は付き物だろうが、爆発がおきるのか…。

そんなことを話していると、ちょうどボンッと爆発音のようなものがしてくる。どこからか怒鳴る声と、謝る声がかすかに聞こえる。またお前かって言われている。またって言われるくらい爆発しているんだな…


苦笑しながら研究所の入り口に向かう。中に入ると、テーブルや椅子やいくつかと受付のようなところがある。他にも研究所に来ているヒトが数人。ミリアーナがすかさず受付に向かうので、後ろからついていく。

受付には眼鏡を掛けた若い男性が立っていた。ミリアーナに気がつくと、にこやかに対応している。どうやら顔見知りのようだ。


「お嬢様、こちらが研究所の受付担当ミシェルです。基本的には研究所に用事がございましたら、彼に言付ければ対応してもらえるかと思います。」

「はじめまして、フェイ殿。魔法研究所の受付をしております。今後地上に降りた際にお持ちいただける物がございましたら、私にご連絡ください。あ、もちろんそれ以外でもなんでもお申し付けくださいね。」

「はじめまして、ミシェル。知っているようだが、私はフェイだ。これから何かと渡すかもしれないが、迷惑をかける。」

「いえいえ、むしろお手間をおかけして申し訳ないくらいです。お気軽にお尋ねください。ではこちらへどうぞ。」


ミシェルは長い金髪をなびかせてにっこり笑うと、近くの部屋へと案内される。すでに異世界のものを一時的に保管する場所を用意していたようだ。準備が良くて助かる。

部屋につくと、異空間から猪を出す。まだ血が滴っていて新鮮なままだ。


「地上の森で見つけた猪のような魔物だ。首を落としただけで他には何もいじっていない。あとは花やきのこだな。毒があるかもしれないので、注意してくれ。」

「ありがとうございます。これらは解体と調査で使わせていただきますね。…それにしても、猪のような魔物、ですか。これは今後が楽しみです。」

「前にはいなかった生物がこの世界には多くいるだろう。お前たちは忙しくなってしまうが…。」

「いえいえ、むしろありがたいぐらいです。調査についてはやりたい人が多すぎて、誰が着手するかで揉めに揉めましたから。」


にこにこ笑う姿に嘘はなさそうだ。どうやら本当にこの世界を楽しんでいるらしい。

バタバタと走る音が聞こえてくると、ミシェルが先ほどとは違う笑顔でドアに近づく。そしてドアが乱暴に開けられる。


「ミシェル先輩!この世界の知らない動物が持ち込まれたって本当ッ!」

「お客様の前ですよ出ていきなさい。」


一瞬だった。ドアが開いてヒトが入ってきたと思ったら一瞬でミシェルに追い出された。しかもいつの間にか持った分厚い本の角で殴ってた。最後まで聞かずに暴力的に退出させてる…。

私が唖然としていると、ミリアーナににこやかに話しかけられる。全然動揺してない。


「お嬢様、一度城に戻りましょう。調査隊の報告がそろそろ上がってくる頃ですので。」

「あ、ああ、そうだな…。ミシェル、後は頼んだ。」

「お任せください。」


笑顔でお辞儀をされ、部屋を出る。ドアの直ぐ側に頭を抱えてうめき声をあげるヒトがいるが、誰も声を掛けない。むしろ私の視界に入らないようにミシェルが体で隠している。

そのままミリアーナに連れられて研究所から出る。なかなかに濃いヒトが多い部隊だったな…。

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