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森の探索

目の前に立つ石造りの塔。高さはそれほどなく、真ん中がくり抜かれているだけの筒のようなものだ。だが塔の床には細かな魔法陣が敷かれている。この魔方陣が発動することで、魔法で浮遊することのできないヒトでも地上からライルズへと行き来ができるよう作ったものだ。

まあ発動にはアレギスの許可がいるので、勝手に動かすことはできないし、限られた者しか降りることもないのだが。

中に入り魔法陣をよく確認する。異世界に来た影響で、魔法陣に歪みや問題が起きていないか確認しておいたほうがいいだろう。



「調査部隊は城の下降門から下りたはずだな。」

「はい。問題なく降りられたようです。地上から報告も時折飛んできているようです。」

「どっちも動作確認はばっちりです、ますたー。」

「そうか、ありがとう。」


アレギスがすでに確認してくれていたようなので、安心して魔法陣の上に乗る。私がいればなんとかできるが、場合によっては空中に投げだされそのまま地上に叩きつけられてしまうため注意が必要だ。


ミリアーナとアレギスも魔法陣の上に乗ると、魔法陣がひかりだす。そのまま待機していると、白い細い光が集まっていき、ドーム状に包まれる。そして数十秒もすればあっという間に地上につく。

ちなみに地上からライルズに上がる際は、どこでもいいのでライルズの真下で呪文を唱える必要がある。ライルズ自体が移動するため、地上に門を作っても上になければ意味がないからだ。異世界に来てしまっても運用できるため多少面倒でもこの作りにしてよかった。


ドーム状の光が紐解けると、地上についた合図だ。何もいない土地が降りる地点に選ばれるが、魔物に襲われる可能性が0ではないため警戒を始める。森などに降りたときは視界がひらけた瞬間、魔物に襲われたことがないわけではないしな。


視界がひらけると、木々に囲まれた森の中で、ちょうど開けた場所になっている。どうやらいきなり教わることはなさそうで、一旦周囲の観察といこう。

生えている木に特徴はなく、前の世界にあったものと変わらないように見えるが、詳しく調べるために葉っぱと枝を数本回収する。アレギスは相変わらず私の近くでキョロキョロしているが心なしか目がキラキラしているようにみえる。ミリアーナは周囲の索敵をしているようだ。


「ミリアーナ、なにか気になることはあるか?」

「…知らない気配がいくつか。魔物も()とは違うようです。」

「少しばかり持ち帰るか。」


持っていた葉っぱと木を異空間に収納して、ミリアーナに案内を任せる。

ミリアーナについていくと、そこには大型の猪のような動物がいた。巨大な牙に、毛深い黒色の体毛。口からはよだれが滴り落ちている。なにより4つの目。体内からは魔力を感じるし、はたしてこの動物がこの世界で魔物と呼ばれているかは分からないが、私達の認識では魔物で間違いないだろう。


「GURUU…」


猪は私達に気がついたようで威嚇するようにうなり始める。敵意が広がり、威圧のようなものも感じる。だがまあ、アルジェント(銀竜)に比べればそこまででもないな。


ミリアーナとアレギスに手を出さないように良い、魔法を展開する。生態の調査にもいいだろうし、なるべく傷がない方が良いか。

そんなことを思っていると猪が突進をしてくる。目の前に魔法障壁を展開し、待ち構えるとそのまま障壁に激突する。重い音が響き、ぶつかった衝撃で強風が吹く。だが魔法障壁に日々も入らない。猪は予想外のことなのか一瞬固まるも、すぐさま魔法障壁を壊そうと牙で打ち付けてくる。


思ったよりも弱いが、まあこんなものだろう。これ以上ほっておくと牙が折れてしまうかもしれないし、ここらで観察はやめておこう。私は軽く指を振ると猪の足元から木が生え、足や頭を固定するように拘束していく。猪は暴れるが、がさがさと揺れるだけで拘束は解かれない。そのまま猪の頭上に氷の刃を展開しそのまま落とす。氷の刃はスパンと猪の首を落とし、動かなくなる。

どうやら首を落としても動くタイプではないようだ。


「お見事です、お嬢様。」

「かっこいいです!」


ミリアーナとアレギスが近づいてくる。2人の言葉に軽く手を振り答えながら、死んだ猪を近くで観察する。前の世界で見たことがない個体なのは間違いなさそうだ。


()は猪が魔物化した個体なんていたか?」

「いえ、魔力溜まりから魔物として生まれた個体しかいなかったかと。この辺りに魔力溜まりはありませんし、この世界では魔物が後天的に発生するのか、はたまた魔物が繁殖するのか…」

「コイツもこのまま持ち帰ろう。魔法部隊の研究部門に引き渡せばいいだろう。」


猪の離れてしまった頭と体両方とも異空間にしまい込み、また歩き出す。今度は植物の種や魚等を探してみても良いかもしれないな。

目立つ花やきのこがあればいくつか異空間に収納していく。毒があるかもしれないので直接肌に触れないように収納していると、アレギスが服の裾を引っ張る。


「どうした?」

「あっちになにかいます。」


アレギスが指差す方に向かってみると、そこには怪我した動物がいた。桃色の羽に、小さい体でその殆どが自らの血の色で染まっていた。見たことのない鳥にじっと観察していると、鳥は視線に気付いたのか逃げ出そうと動き出す。だがその動きは鈍く、すぐにバタリと倒れ込む。


「ずいぶんと弱っていたから索敵に引っかからなかったようですね。」

「まだ生きている、か。コレも見たことがないな。」

「…ますたー、僕がお世話しますから、持って帰ってもいいですか?」


アレギスが真剣な顔でそう言うと鳥に手をのばす。どうやらもう抵抗する力もないようで大人しく手のひらの中に収まる鳥。アレギスがそんなこと言うなんて珍しいな。


「…そうだな、まずはその鳥に確認しておけ。生きたいか、と。」

「!はい!」


よろしいんですか、と問う視線をミリアーナから感じながらアレギスの様子を見る。情で助けている様子はないが、一体どういった理由で助けようと言い出したんだろうか。まあ、この程度の鳥なら悪さをできるようには見えないが、何かあったら自らで責任を取る必要がある。

鳥に言葉が通じるかは分からないが、どうやら生きることを諦めていないようなので回復魔法をかける。流れた血は元には戻らないためしばらくは動けないだろう。

アレギスの手のひらの上に収まったまま、不思議そうにこちらを見上げる鳥を見ながらアレギスに注意しておこうか。


「こいつを生かしたいと思ったのはお前だ、アレギス。こいつがもし、暴れるようなことがあったらお前がどうにかする必要がある。最終的にはお前の手で殺す必要があるかもしれない。それでも面倒を見れるな?」

「…はい、ますたー。ちゃんと、ますたーの手足となるように育て上げます。」


そうじゃないんだが…?

思っていた返答と違う答えが帰ってきて、口元が引きつりそうになる。私の反応とは反対に、ミリアーナはその返答に満足したようで、名前はどうするのかなど聞いている。どうやら頭領達に部下がいるように自分にも手足となるものが欲しかったらしい。

認識の違いというか、アレギスの情操教育に良いかと思ったんだが…。私の思いとは裏腹にアレギスは満足そうにうなずくのだった。

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