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準備とアレギスの成長

ドラゴンどの戦闘から2日経ち、すでに示された山を超えるところまで移動できた。本来ならまだ早く移動できるが、この世界がどうなっているかわからない以上慎重に行くべきだろうという判断だ。

すでに調査隊の編成は決まっている。ヘイグやマリアが生きたいとごねていたものの、不安要素が多い以上ライルズの主戦力となる彼らは居残りとなった。ヘイグは脳筋のようだし、強い相手でも探しているのかとも思うが、マリアは何故調査隊に入りたいのだろうか?そんな好奇心旺盛な部類ではなかったと思うのだが。

ブランは別に保安部隊を数名派遣するらしい。保安と言っても、どうやら密偵などの裏方を担当するのだとか。詳しい役割は聞いていないが、ライルズの街を守るため、もしくはライルズのヒトを守るために作ったと言うなら私から言うことはない。他の頭領も保安部隊があることは把握しているようだし、手綱を握れているなら不安もないだろう。

アントンは今後に備えて防具や武器を用意しているようだ。それと新型の武器の開発も。油断せずいることはいいことだ。ちなみに特異点による影響で倒壊した家屋は一部だったらしい。巻き込まれたもののいたものの、命を落としたり重篤な状態に陥ったものはいなかったようだ。

ライルズの街で住まうヒトビトは、すでに通常営業へと戻っている。全く知らぬ世界へと連れてこられたことに関しては動揺が見られるかと思ったが、皆落ち着いていると。そんな馬鹿な、と思ったがどうやらこの街から追い出されるよりマシだとか、逃げるつもりはないとかで街にいられればそれでいいらしい。覚悟が決まりすぎてないか?


今私はライルズの上空にいる。というのも、当初の予定通りなにかしらのコミュニティを探すために索敵魔法が必要だが、感知の強いやつがいるとも限らないので私が遠目からなにかないか魔法で目視で見てから行おうというものだ。念には念を入れて、というやつ。

結構な高さにいるので、遠くまで見通せる。さて、なにかあるかな?


「…おっと、どうしようか…」


ここから見渡して見える物は平原と森とちいさな湖で遠くには今越えたのよりも高い山々が見える。だがソレ以外に大きな建物は何も見えない。国とかがあれば、城とか大きい街ができているかと思ったが、全然見えない。思ったより収穫がないぞ、と目を凝らす。


「お!」


みつけた!小さいが村かなんかだろう、家が固まっているところがあるぞ。国とかの規模ではないが、周囲のコミュニティと商談やら取引やらはあるだろう。そういえば、言語が違ったりしたら…。まあでもドラゴンと話が通じたし、問題ないだろう。もし違ったらそのときは覚えるしかないが。

城に戻りブランに村のようなものの場所を伝える。これで近いうちに調査部隊が近づくだろう。私も話を聞いてみたいが、調査部隊の邪魔をするわけにもいかないし、小さな集団なので何度も見知らぬ者が近づくのは良くない。一旦私は近くの森を探索するほうがいいだろう。

ということで即行動だ、ブランから離れ、私が上空から戻るのを待っていたミリアーナに話しかける。


「調査隊は明日にでもコミュニティに向かうが、私は近くの森でも探索しようかと思う。ミリアーナも来るか?」

「もちろんお供いたします。今すぐいかれますか?」

「ああそうだな、ちょうどいい、今行こう。地上に降りる際は街の外れにある下降門から行こうかと思うが、街の様子も一緒に見ておきたい。案内してもらってもいいか?」

「!かしこまりました!すぐ準備いたしますね!」


まだ目覚めてから街の様子を近くで見ていなかったし、時間もあるので同時にやっておこう。下降門は城と街外れと2つ用意してあり私は城にある方しか使わないが、商談などある時や街にヒトがやってくるときは街外れが使われる。街を直接歩き、雰囲気を感じ取るのもいいだろう。

しかし街を見ると言ったら突然ミリアーナが喜び、足早に去っていくのに驚いた。そんなに街に行きたかったのだろうか?別に特別なことをするわけではないのだが…。


「ますたー、街を見るの、僕も付いていっていいですか?」

「いいぞ、アレギス。」


ミリアーナが去った方をぼーっと眺めていると、いきなり腰に抱きついてくるアレギス。姿をいつの間に実体化し近くにいたらしい。肉体の実体化ができるようになって、ずいぶんと甘えるようになっているようだ。私が製作者だからか、親のように思っているのだろうか?そういえば、アレギスが他の頭領などど話しているのをあまり見ないな。

ニコニコと私を見上げるアレギスを観察する。その感情は作り物のようには見えないが、いったいいつこんなに感情を育てたんだろうか。友達なんかもできたのかもしれない。知らないうちに成長しているアレギスに寂しさのようなものを感じるが、これも将来彼のためになるものだ。

私は膝を付きアレギスを優しく抱きしめる。突然のことに一瞬固まっていたがすぐに抱きしめ返してくる。10年前はできなかったことだ。


「私のアレギス。私の家を、ライルズをいつも守ってくれてありがとう。」

「そんな、当たり前のことです!だって僕はそのために頑張ったんですから!」


かつては「そのために頑張った」ではなく「そのために作られた」といっただろうに。

最初は私の家の管理をヒトに任せられず、仕方がないと作り出しただけだった。彼が存在する理由はライルズの防衛や管理だが、それだけなら感情なんて要らなかった。だがアレギスを制作する(育てる)につれて、私はあえて感情を根付かせた。それは人工知能としての命令だけでなく、彼の家にもなればいいと思ったからだ。

生み出されたことを後悔する日が来るかもしれない。涙を流す日が来るかもしれない。それでも彼にも命令の遂行のためではなく、自らの意思で生きたいと思える存在になってほしかった。


彼はこうして成長した。まだまだ幼い部分はあるが、それも今後育っていけば良い。

私は、ヒトが信用に値するとは思えない。だがかつての無垢な姿を見ているからこそ、世界を知ったアレギス(人工知能)だったら、信じられるのではと思ってしまうのだ。

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