85.歴史的大発明
俺は船の図面を一発で理解した。
これなら材料があれば、ハンマーかつーん! で船が一発でできるだろう……。
だが……。
「ううむ……」
「どうしたよ、ヴィル」
キムズカジーさんが俺を見て尋ねてくる。
「船ってさ、凄い便利だけど、欠点あるよな」
「ふむ、聞こうか」
船の利便性。
これはなんといっても、たくさんの荷物を一気に運べることだろう。
しかし欠点は存在する。
「動力源が、今んとこ風だけってことだな」
通常、船は帆をはって、風の力を受けて進む。
裏を返すと、風が出ないと前に進めないのだ。
「仕方あるまい。船とはそういうものだからな」
「うーん……」
船大工さんにとっちゃ、船はこの形であるべきだと、そういう固定観念にとらわれちまっている気がする。
「そうだな……風が無くても前に進めるようにさ、たとえば車輪つけるのはどうだ?」
「は……? しゃ、車輪……?」
図面上に、船の側面に巨大な水車のようなものをくっつける。
「今ほら、魔法自動車ってあるだろ?」
「あ、ああ……帝国が開発した、魔法の力で動く不思議な鉄の馬車だろう?」
「それを応用するんだ」
魔法自動車の仕組みは、作り手によって様々である。
だがどれも、魔力を車本体に刻まれた術式に流すことで、車輪を動かすってものだ。
「船にもこういう車輪をくっつけてさ、魔法で動くようにするんだ。これなら風がなくても……って、どうした?」
キムズカジーさんは目を剥いて、ふるふる……と体を震わせる。
やがて……。
「て、天才じゃぁあああああああああああああああああああああ!!!!」
天災?
嵐でもきたのか?
キムズカジーさんは俺の手を握って言う。
「盲点じゃった。車とはこうだ、船とはこうだという固定観念にとらわれてて、車の技術を船に使うことに、気づけなかった……」
まあでも、簡単ではないだろう。
なにせ車と船とじゃ質量が違う。
車の原理を使って、船を今のままじゃ動かせない。
工夫は必要だろう。
「それでも……最初のひらめき。これを思いついたおぬしは、本当にすごいぞ。まさに天才!」
「いやぁ……ただ俺は思いついただけだぜ? こんな思いつき、誰でもできるだろ?」
ぶんぶんぶん! とキムズカジーさんが首を強く振る。
あれぇ……。
「一流の職人だからこそ、一流の発想が生まれたのだ。本当に、おぬしはすごい職人じゃあ! さすが黄金の手を持つ男……!」
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