83.船大工
俺は南の国フォティヤトゥヤァへ渡るため、船に乗ろうとする。
しかしモンスターが出現したことで船が壊れた。
それを直す職人を探していたので、俺は名乗りを上げたのだったが……。
「商人さん」
「エチゴーヤ、と申します」
ウォズの街で出会った商人、エチゴーヤさんが名乗ってくる。
「船を直すっつっても、あんたんとこのおかかえの職人っていないのかな? そいつに話を通すのが筋ってもんだと思うけど」
どんな物でも壊れることは想定されてる。
ということは、それをメンテするお抱え職人がいてもおかしくない。
「ああ、まあ……しかし少々気難しいひとでして……」
エチゴーヤさんがうんざりした表情で言う。
「キムズカシーひと?」
港にはいくつもの倉庫があった。
そのうちの一つへと向かう……。
「なにぃい!? わしが作った船を、別のやつが直すだとぉおおおおおおおお!」
倉庫の中から老人の声がした。
エチゴーヤさんは「またあの人は……」とため息をつく。
あの人?
倉庫の中に入ると、そこには、そりゃあもう気難しそうなドワーフがいた。
「ドワーフ?」
「はい。彼はとても腕のいい船大工なのですが、少々……」
「おいエチゴーヤ!!!!」
ずんずん、とそのドワーフ職人が俺の元へやってくる。
……身長は俺の腰あたりまでしかない。
日に焼けた肌に、長いひげは三つ編みにされている。
じろりとにらみつける三白眼に……俺はよく知る人物を想起させられた。
「【キムズカジー】さん……」
『名前まんまじゃの』『きむずかしー?』
光と闇の聖剣がポロの腰のあたりで言う。
ドワーフ……キムズカジーさんが俺をじろりとにらみつける。
「む!」
キムズカジーさんは俺……じゃなくて、俺の手を見やる。
「む?」
俺はキムズカジーさん……じゃなくて、彼の手を見やる。
しばし無言が続いた。
俺は……。
いや、俺たちは……。
がしっ! と手をつなぐ。
「「え?」」
ポロとエチゴーヤさんが困惑する一方で、キムズカジーさんは言う。
「やるな」
と。
「あなたも、相当」
「ふっ……」
すごい職人だ……手を見ればわかる。
向こうも俺の手から察したのだろう。
「貴様、名は?」
「ヴィル・クラフト。八代目八宝斎です」
「なんと! では……ガンコジーを……」
「はい、孫です」
「おおお! そうか! やはりか!」
「じゃああなたも……」
「そうじゃ! 弟だ!」
「そうでしたか! やはり……!」
うんうん、と俺たちはうなずく。
だが一方でポロとエチゴーヤさんがやっぱり困惑していた。
「あの……ヴィル様? 話しについて行けないのですが……」
「お、すまん。俺たちはお互いに、腕を見て理解したんだよ」
「は、はあ……?」
ふん、とキムズカジーさんが言う。
「小娘には男の……否、漢の仕事がわかるまい」
「…………」
ポロの尻尾が竹箒のように逆立つ。
怒ってらっしゃる。
「キムズカジーさん……」
「キムでよい」
「キムじーさん、あんたの船直すの手伝わせてくれよ」
ふむ、とキムじーさんは俺を見て言う。
「船ははじめてか?」
「ああ。だから、すげえわくわくしてるんだ」
船作ったことないしな!
するとじーさんはにやりと笑う。
「いいだろう。伝授しよう! ただし勘違いするなよ。別におまえが兄者の孫だから教えるのではないぞ、おまえさんがやるやつだからだ」
「あざっす!」
俺とキムじーさんは奥の作業場へと向かう。
取り残されたエチゴーヤさんが、後ろで感心したようつぶやいていた。
「す、すごい……あの気難しいドワーフに、気に入られてるなんて……彼は何者?」
ポロが答える。
「世界最高の職人ですよ! さすがヴィル様です!」
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