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08.洪水の被害に遭った村を一瞬で復興



 獣人のポロと野営した。

 翌日、俺はポロと一緒に歩いていた。


「本当についてくるの?」

「はい、ヴィル様」


 存在進化したことで、大人のお姉さんみたいな見た目になった。

 その影響か、しゃべり方も変化していた。


「なんかキャラ違くない?」

「お姉さんになりましたので。それと、その、も、もう赤ちゃん産めますので!」

「はぁ?」


 まあ魂は肉体に引っ張られるっていうしな。


「こほん。私は、帰る家がございません。できれば、あなた様のおそばに仕えさせていただけたらと」


 ポロの家族は病気で死んだそうだ。

 幼い彼女は途方に暮れていたところ、悪い商人に捕まってしまったという。


 顔は良いから買い手は結構いたらしいんだが、気性が荒いせいで何度も屋敷を追放されていった。


 で、次の新しい買い手のもとへ行く途中、馬車が襲われたとのこと。

 故郷に帰っても家族も友人もいない。


 だから、ついてきたいんだってさ。

 まあかわいそうだし、別に同行してもいいかなとは思ってる。


「わかった。ついてきていいよ」

「ほんとですかっ! ありがとうございます!」


 うれしいのか、ぶんぶんとポロの尻尾が激しく揺れる。

 おお、彼女の乳もぶるんぶるんと。


 ちなみに彼女は、俺が仕立てた新しい服に身を通している。

 服は着てるけど武器も何も無い状態だ。


「これからどうしますか、ヴィル様」

「そうだなぁ。歩き旅だと疲れるし、どっかで馬車でも調達したいね。食材の補給もしたい」

「でしたら、この奈落の森(アビス・ウッド)を抜けた直ぐ近くに、村があったはずです」


 ポロは貴族の屋敷を転々としてきた。

 屋敷には結構な客が来るらしい。


「会話が聞こえるんです。私、耳が良いんで」


 ぴくぴく、と狼耳が動く。

 なるほどなぁ。


「じゃあその村まで案内よろしく」

「はい! ではこちらです!」


 ポロの案内で歩いてしばらく歩いて行くと森を抜けることに成功。

 草原を歩いていくと、貧相な柵で囲まれた村を発見。


「あれか」

「はい。あそこが目的地、デッドエンド村です」


 なんだか物騒な名前の村だな。

 デッドエンドって。


「けどなんか、様子おかしくないか?」

「そうですね……見に行ってみます?」


 そうだな。

 俺はポロと一緒に村を訪れた。


「なんじゃこりゃ……水浸しだ」


 村のなかは結構酷い有様だ。

 半壊した建物があちこちにある。


 道は浸水されている。

 老人達が困り果てた表情で、壊れた家の前で棒立ちしていた。


「私、ちょっと話聞いてきます!」

「あ、おい! ……足早いな。もう行っちゃった」


 ポロは村の老人と会話する。

 すぐに、老人のひとりを連れて俺の元へと帰ってきた。


「わしはこの村の村長、アーサーと申しますじゃ」


 村長のアーサーさんに、俺は挨拶をする。


「俺はヴィル。旅人だ。なんかあったのか?」

「実は先日の大雨の影響で、村が洪水にあいましてのぅ」

「大雨……洪水……それでか」


 村がやばいことになってるのは、近くの川が氾濫した影響による物らしい。


「この村には若い衆がおりませぬでな、どうしたものかと途方に暮れておったところなのです」


 確かに、村を見渡しても、じーさんばーさんしかいないな。

 どの人らも普通の老人たちにしか見えない。


 土嚢を積むのも一苦労だろう。

 このままじゃ雨が再び降ったら、今以上に村がやべえことになりそうだ。


 かわいそうだなぁ。

 よし。


「じーさん。俺が手を貸してあげるよ」

「なんと。よろしいのか?」

「ああ。直すのは得意なんだ」


 俺は一番近くにあった家の元へ行く。

 洪水のせいで、壁が壊れて、中もぐっしゃぐしゃだった。


 俺は神鎚ミョルニルを手に取って、それを太陽の手と接続。

 壊れた家に向かってハンマーを振る。


「【全修復】」


 こつんっ。 

 ずおぉおおおおおおおおおおお!


「お、お、おおお!? なんと! 一瞬で壊れた家が元通りに! す、すごい!」


 俺の太陽の手には5つの物作りスキルが刻まれている。

 そのうちのひとつ、全修復。


 壊れた物をそっくり元通りに戻すスキルだ。

 木の家が元通りとなった。


「このままだとまた雨降ったときに崩れるか。よし」


 (ボックス)から俺は鉱石を取り出す。

 これは、よく使う【ありふれた】鉱石だ。


「錬成」


 鉱石を1度、こつん。

 続いて、木の家をコツン。


 すると鉱石と木の家が合わさって……。


「す、すごいですヴィル様! 頑丈そうなおうちが完成しました!」

「修復ついでに、補強しておいたぜ」


 じーさんが目を丸くした後……深々と頭を下げる。


「ありがとうのぅ、若いの。助かるのじゃ」

「なんのなんの。さ、残りもサクッと修復&補強していくか」


 コツン。

 コツン。

 コツン。


「おお!」「すごい!」「すごすぎる!」


 家を次々なおしていくと、じーさんばーさんたちが大喜びしてくれる。

 うんうん、治して良かった。


「とても助かったのじゃ」

「いや、まだだね」

「というと?」

「川まで案内してくれないか?」


 俺はアーサーじいさんと一緒に村を離れて、近くの川までやってきた。

 思った通り堤防なんてものはない。


 今川が雨で増水していた。

 このままじゃまた雨降ったら大洪水起こすだろう。


「てことで、【錬成】」


 俺は川の近くの地面を、ハンマーでコツン。


 ずぉおおおおおおおおおおおおおお!


「おお! 土が隆起してあっという間に堤防に!」


 川に沿って遥か遠くまで堤防が続いている。

 物作りの一つ、超錬成。


 素材があれば、物を作り替えて、どんなものでも作れる(同質のものに限るけど)。

 

「すさまじいのぅ。その手は」

「そうそう。超錬成を使えばこれくらいは朝飯前なんだよね」

「いやぁ見事、お見事」

「いやいやどうも。さて、最後の仕上げといきますか」

「まだなにかするのかの? もうたくさんよくしてもらったのじゃが?」


 雨で川があふれかえったってことは、また近いうちに同じことが起きる。

 俺はさっきの森へ行く。


「さてやりますか。神鎚ミョルニル……形態変化【大】」


 俺が命じると、神鎚ミョルニルはぐんぐんとでっかくなっていく。


「なんという大きさ! そして、それを軽々と持ち上げるおぬし、すごい!」

「どうなってるんですかこれは!?」


 俺はポロに説明する。


「このハンマー、魔力を必要とせず、命じれば好きな形に変化できるんだ」

「す、すごい……! 万能のハンマーですね!」


 ふふふ、じーさんの作った神器じんぎはすごいんだ。

 形の変化もそうだけど、俺の力を引き出す触媒になってくれている。


「そんで……よいしょぉお!」


 俺はでかハンマーを思いっきり、森の地面にたたきつけた。


 ドゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 ハンマーの一撃で、森の木々は粉砕。 そして大きな穴を作った。


「そんでもういっちょ!」


 俺は今度は、穴の位置から、川の方角へ向かってハンマーを振り下ろす。


「【ショック・ウェーブ】!」


 ハンマーを振り下ろすと、衝撃が一直線に走る。

 さっきと違って、衝撃に指向性が存在する。


 衝撃波は森の木々を砕き、地面を引き剥がしながら、まっすぐ進んでいく。

 ちょうど、この大穴と川とをつなぐ【道】を作った。


 すると……。

 ドドドドドッ! とそこへ水が流れ込んでくる。


 川からの水が森の中の穴に入っていき、やがて池を作った。


「そうか! ため池か!」

「正解。これがあれば川があふれることも防げるだろ?」


 キラキラした目をポロが向けてくる。


「すごいですヴィル様! 今のはなんですか? あの衝撃波は!」

「【ショック・ウェーブ】?」

「はい! スキルですか?」

「いや、職人の技だよ。じーちゃんから習ったんだ」


 ハンマーを打つ、のこぎりをひく。

 そういう職人が使う技の、一つだ。


「今のは、大魔法使いが使う地属性魔法、【地竜疾駆グランド・ダッシャー】ではないのか?」

「うん、ただの職人技」

「いや、あれは地竜疾駆じゃった」

「いや、職人技だって」


 じーさんは結構頑固で、違うって言っても信じてくれなかった。


「ともかく、おぬしがその当たり前に使っていた職人の技は、才能ある魔法使いが長い修練の末に身につける、大魔法と同質のものだったのだよ」

「へー」


 わりと、どうでも良かった。

 魔法とか興味ないし。


「なんと……この男は、色々と規格外なのじゃな」

「はい! ヴィル様は、とても凄いお方です!」


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでて安らぐ [気になる点] 作者身長コンプレックスあると思う
[一言] 洪水を防ぐ為の調整池は普段は水溜めないんです… 近年大雨多いから洪水対策紹介してる記事もたくさんありますのでご一読ゎ
[気になる点] 最近はストーリが絡まるケースが増えてきている印象。 どういった化学反応が起きるか楽しみです。
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