76.なんか……ハエ?
《ヴィルSide》
俺は王城外壁の上から、ポロとペルシャの訓練を見守っていた。
「うんうん、いいぞポロ」
『何をやっておるのじゃ、主よ?』
俺の腰には闇の聖剣、夜空が装着されてる。
ルクスは王城(俺たちは城に泊まらせてもらってる)で寝てる。
「いやなに、ポロが朝から外へ行くからさ、どうしたんだと思ってよ」
■から双眼鏡を手に取って、ふたりの戦いを見ている。
ポロはペルシャに圧倒されている……が。
それでも立ち向かおうとしてる。
「あいつ……夜空をちゃんと扱える人間になろうとして、努力してるんだなぁ」
『うれしそうじゃな?』
「そりゃね」
だって俺の作った武器に対して、真剣に、使えるように頑張ってくれてるんだぜ?
武器とはいわば、作者からしたら、作品みたいなもんだ。
作り出した作品に、あんなに真剣に向き合ってくれてるんだぜ……?
「作者冥利に尽きるってもんだろ?」
『ふぅむ……そういうもんかの?』
そのときだった。
「う゛ぃぃいいいいいいるぅうううううううううううううううううううううううううううううう!!!!」
「うっさい」
ばごん!
「うぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
きらん……。
『わ、わが創造主よ……なんか今、とんできたような』
「おう? そうなん?」
俺……双眼鏡を除いててよくわからなかったけど。
「なんか。うっさいハエ……? みたいなのが来たから、思わず神鎚ミョルニルで追い払っちまったよ」
双眼鏡から目を離すも、そこにはもう誰もいなかった。
うん、なんもいなかった。
『い、いやでも何かが飛んできてたような……』
「何かって?」
『我には早すぎて目で追えなかったんじゃが……』
「じゃあ……ハエじゃね?」
てゆーか!
ポロが頑張ってる姿を見守ってやらないと。
俺の作品のために、頑張ってるポロのほうが大事だ。
頑張れ……ポロ!
『ううむ……なんじゃったんだろうか、さっきの白いの……我の見間違いじゃなかったら、人間だったような気がするんじゃが……』




