63.作戦会議
俺たちは獣人国ネログーマへとやってきてる。
突如王都に出現した巨神兵。
その正体は、水の勇者にしてこの国の女王、ペルシャ=フォン=ネログーマが異形化した姿だった。
「そんな……お母様が……」
娘のラグドールは、母親が化け物になったとしって、ショックを受けている。
それはしょうがない。
だが今は嘆いてる暇はない。
「大丈……」
「大丈夫ですよ、ラグドールさん!」
俺が言う前に、ポロがラグドールを励ますように言う。
「ヴィル様なら、元に戻せます!」
「! 本当ですの? あんな……あんな大きな化け物になってしまわれたのに……?」
「はい! 大丈夫、ヴィル様はすごいんです。だから……落ち込まないでください。ね?」
……珍しい。
ポロが、他人を励ましている。
旅を通じて、何か心境の変化でもあったんだろう。
いいことだ。近づいてるじゃあないか。
「……わかりました。ヴィル様を信じます」
「よし。じゃあ状況を整理しよう」
俺たちは王都からかなり離れた場所にいる。
王都には、ものすんごい大きな巨神兵が暴れ回ってる状態だ。
向こうはまだこっちを認知できていない様子。
「ラグドール。王都の人たちはどうなってる? まだいるか?」
「いいえ、お母様が暴走した日、民は王都を離れて疎開させましたわ」
水の聖剣が暴走し、王都は植物の化け物であふれた。
被害を拡大しないために、王都の人たちを直ぐに避難させたらしい。
素早い対応だ。
ラグドールはできる女の子である。
「じゃああの足下には、王都の人が居ないってことでOK?」
「はい。ただ、先ほどお母様が起こした大津波の影響は、周辺の村にあるかと……」
防波堤を作って津波を止めた。
だが王都から防波堤までの間にある村には、被害が出ていると思われる。
水で街が流されてる危険があるな。
「つまり、今俺たちがやらないといけないのは、あの巨神兵を倒すのと、怪我人の救助ってわけだ」
ええ、と二人がうなずく。
なら……よし。
「ポロ、おまえに仕事を任せる。怪我人の救助へ回れ」
「!」
ぎゅっ、とポロが悔しそうに唇をかみしめる。
「……ヴィル様は?」
「あのデカブツを何とかしてくる」
「……私は、足手まといですか?」
ああ、なるほど。
戦いの邪魔だと思ってるのか。
俺はポロの頭をなでる。
「違う。単に分業だ。おまえには、救助を任せたい。そんだけだ」
ポロには光の聖剣ルクスがある。
怪我人を治すにはもってこいだ。
「■、全開」
俺は……あんま使いたくないスキルを、使う。
「【無限神器複製】」
今まで俺を含めた八宝斎が作ってきた神器を、複製するスキルだ。
俺はアイテムの複製なんてほんとうはしたくない。
だって物には心があるから。
ものをただ大量生産するのは、俺のポリシーに反する。
それでも……だ。
俺は■から、手のひらに収まるサイズの、小さな水晶玉を作り出す。
これは、昔の八宝斎が作った神器の一つ。
「無限魔力の水晶だ。これを持っていれば、魔力を無尽蔵に使える」
「! 国宝なんてレベル超えてますわ! そんなものを作ってしまうなんて……」
作ったっていうか、複製しただけだ。
本当はやりたくなかった。
でも、今はそんなこと言ってる暇はない。
水晶を、ポロに渡す。
「光の聖剣は、使うのにかなり魔力を食う。でもこの水晶があれば、複製品が消えるまで、おまえは無限に回復術が使える」
複製品は一定時間経つと、消えてしまう。
「……どうして主義を曲げて、複製を?」
「おまえのためだポロ。これがあれば、まだ光の聖剣ルクスを上手に扱えないおまえでも、みんなを救える」
「私のため……」
ああ、とうなずいて言う。
「頼むよ」
ポロは、しばし考え事をしたあと……。
こくん、とうなずく。
良かった……。作られたこいつも、浮かばれてくれるだろう。
ごめんな、無限魔力の水晶。
でも、おまえの命は無駄じゃない。
こうして、人を救うために使える。だから……許してくれ。
「わたくしはポロ様をお手伝いしますわ。村の場所を知ってるのはわたくしだけですもの」
「頼んだ。あとは……俺に任せてくれ」
こくん、と獣人二人がうなずく。
こうして、俺たちは手分けして、事態に当たることにしたのだった。
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