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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
一章

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34.弟は、嫉妬に狂う



 ヴィル・クラフトが帝国で、英雄扱いされている。

 そのことが日刊 予知者ノストラ新聞に大きく取り上げられた。


 当然……ヴィルの弟、セッチンもそのことを知った。


「ヴィル兄……ヴィル兄……!」


 くそくそくそ! とセッチンは新聞をビリビリに破く。


「なにが英雄だ、なにが聖剣を治した天才鍛冶師だ! くそ! くそ! みんな口を開けばヴィル兄のことばっかり! あんなやつのどこが凄いんだよ!」


 セッチンは、これだけ差を見せつけられてるというのに、嫉妬していた。

 あれはもう異次元だ、自分には敵わない……。


 とは、しなかった。

 彼は今、誰もいない工房のなかでひとりでいる。


「僕だって! 僕だってやればできる子なんだ! なんで誰もわかってくれないんだ! ヴィル兄ばっかり優遇して! 父さんも……爺さんも!」


 ……自分の才能のなさを棚上げして、全部自分以外のせいにする。

 駄目人間の典型であった。


 そのときだった。


「セッチン。一緒に出かけるわよ」


 魔女のところから、シリカルが帰ってきた。

 彼女は慌ててるようだ。


「でかけるって、どこにだい?」


 セッチンはシリカルから、三行半をつきつけられた。

 何もしないでと。


 しかし彼女はセッチンに惚れている、と思っている。

 セッチンもまた、シリカルを愛してる状態だ。


 そんなときに。


「ヴィルのところよ。一緒に謝ってちょうだい」


 ……そんなことを言われる物だから、セッチンの頭は、怒りで真っ白になった。

「ふ、ふざけんな……!」


 どんっ! とセッチンはシリカルを突き飛ばす。

 彼女は大きく尻餅をついた。


「ちょっと……セッチン!? なにするのよ! お腹にあなたの赤ちゃんがいるのよ!?」


 ハッ、とセッチンは冷静になる。

 まだシリカルのお腹は膨らんでいないものの、確かに二人が作った愛の結晶が、腹のなかにいるのだ。


「ご、ごめん……」


 セッチンは一旦冷静になる。

 シリカルはこれくらいでは、彼を嫌いにはならない。


 なんだかんだで惚れている、愛してるのだ。


「それで……なんでヴィル兄のとこいくんだよ」

「決まってるでしょ。ヴィルに戻ってきてもらうの」


 ヴィルに……戻ってきてもらう。

 どうして?


 いや、聞かなくてもわかる。ハッサーン商会の現状は、経営に詳しくない自分でもわかっている。


 でも……でも!


「駄目だ!」


 と言ってしまった。兄が憎いから。兄に嫉妬しているから。

 兄が帰ってくれば、確かにこの工房も、商会も元通りになるかもしれない。


 でも……そんなの近くで見ていたら嫉妬に狂ってたえられない。

 それにセッチンの居場所がなくなってしまう。


 ……兄を馬鹿にしながらも、心のどこかで、セッチンは兄の腕を少しずつ認めているようだ。

 しかたないだろう、新聞には彼の偉業が書かれている。


 領地を救い、国を救い、聖剣を修復したのだ。

 いやでも、兄が凄いんだということを、思い知らされてしまう。


 でも、でもだ。


「何馬鹿なこと言ってるの? ヴィルが帰ってくれば全部元通りなんだから、謝って戻ってきてもらうのは当然でしょ?」

「嫌だ!」

「いやだって……」

「僕は死んでも、ヴィル兄には謝らないぞ!」


 兄に謝る気はゼロだった。

 彼は自分から全てを奪ったのだから……!


「子供みたいなこと言わないで! 今状況わかってるの!? うちは……ヴィルが居ないともうおしまいなの!」

「ぼくがいる! ヴィル兄なんていなくっても、ぼくがいるじゃないか!!! 何が不満なんだ!」


 シリカルは、激情のままに言ってしまう。

 セッチンが……一番聞きたくない言葉を。


「だってあなた、職人の才能ないじゃない!」


 ……職人の才能が無い。

 それは、父にも言われた、【呪いの言葉】。


 ずっと幼い頃、父に言われた。

 才能が無いと。


 ……だがそれは、決して父のイジワルではなかった。

 兄とセッチンは、違う生き物だ。


 天才である兄のマネをしたら、いつまで経っても成長ができない。

 だから、自分の才能のなさを認め、努力し続けろ。


 そうしないと、いずれ破滅する。

 それは父からの忠告だった。


 でもセッチンにとっては、父から才能が無いと決めつけられたことで、呪いをかけられてしまったのだ。


 兄に対する、執念。

 兄に対する、憎悪。


「ヴィル兄ヴィル兄って……なんだ! なんでみんなあいつがいいんだよ!!!!!!!! くそっ! くそっ!」


 シリカルはそんなセッチンの態度を見て……大きくため息をついた。


「……もういいわ。私ひとりでヴィルのとこいって、謝ってくる。あなたはここに居て」


 シリカルは直ぐに出て行こうとする。

 セッチンはそれを、こう解釈した。


「ま、待ってよ!!!! シリカル! ぼ、僕を捨てるのかい!?」


 彼の大切な女までも、ヴィルに奪われる。

 そう思って引き留めたのだ。


「捨てるって……」

「僕がヴィル兄より腕で劣るから捨てるのかい!?」

「ちょ……何馬鹿なこといって……」

「馬鹿っていうな! 馬鹿っていうなぁああああああああああ!」


 彼の心は嫉妬で荒れ狂っている。

 まともに人の話が聞けない状態だ。


 シリカルは顔をしかめると、パンッ! とセッチンの頬をぶつ。


「もう……家でおとなしくしてて。お願いだから……」

「そんな……ぼ、ぼくは用済みなの……?」

「違うから」


 嘘だ……。

 セッチンは、シリカルが嘘をついてるって思った。


 絶対にヴィルに復縁を迫るつもりだ。

 ……と、勝手に妄想する。


 あくまでシリカルは、謝って、彼に職人として戻ってきてもらうだけだと思ってる。

 けれどセッチンは、シリカルが自分を見限って、兄に復縁を迫る物だと思っていた。


 用済みなんだ。


「とにかく、あなたはここにいて。いい、絶対に余計なことしないで? これ以上……事態を悪くしないで? お願いだから……良い子にしてて? ね?」


 それだけ言って、シリカルは出て行く。

 引き留めることができなかった。


「ああ。ちくしょう……ちくしょう……ちくしょぉお!」


 だんだんだん! とセッチンは地面を叩く。


「またヴィル兄だ! あいつが、くそ、くそ、くそ!」


 だんっ……! と地面を強く叩くと、棚に置いてあった……スタンプが落ちる。

「これは……あの男からもらった……偽装のスタンプ」


 以前見知らぬ男からもらった、押せば武器を偽装できるスタンプだ。


「ふ、ふふ……そ、そうだ……これがあるじゃん。ふふふ、これがあれば……シリカルをヴィル兄から、取り戻せるじゃないか……ふ、ふふふふ!」


 ……以前シリカルから、これはもう二度と使わないでといわれていた。

 というか、これのせいで彼女は多額の賠償金を払う羽目になっている。


 使うなと言われても、彼は手に取った。

 だってもう、彼にはこれしかないから。

 ヴィルのような職人の腕は無い、自分には。


「シリカルぅ……ぼくが、ぼくが君のために、商会を立て直してあげるからねぇ……ひひ! いひひひ!」


 ……そんな彼の体から、黒い靄が発生していた。

 それをヴィルが見たら、【見覚えがある】と一発でわかっただろう。


 魔神ロウリィ、そして獅子神から立ち上っていた、黒い靄そっくりだったから。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >セッチンはそれを、こう解釈した。 『こう』とは? 前後に記載無いけど。
[一言] 弟さん。救われてほしい。嫌なやだけど!
[気になる点] やはり邪神騒動とセッチンの偽造シールは繋がりがありそうですね。 [一言] このままセッチンとシリカルは主人公のヴィルと和解することなく後悔と絶望のままこの世から退場する流れが良いですね…
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