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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
一章

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28.砕け散った聖剣を直す



 領民の住む村を直して回っていった、ある日のこと。

 俺のもとに伝書フクロウが飛んできた。


 その内容を見て、急いで俺は帝都カーターへと向かった。

 帝都にある、帝都国立病院にて。


「キャロライン! 無事か?」

「……ヴィル、様」


 帝都のベッドに横たわっていたのは、氷の勇者キャロライン。

 彼女は体中に包帯を巻いて、弱弱しい姿を見せていた。


 伝書フクロウには、至急帝都に来てほしいと書かれていた。

 そして、こうも言伝が加えられていた。


『氷の勇者負、謎の獣と戦い負傷。氷聖剣アイスバーグ、損壊』


「アイスバーグが……戦いの最中に壊れたんだな?」


 キャロラインが大粒の涙を流しながら、うなずく。


「何があった……?」


 キャロラインが語ったことによると、以下の通りだ。

 帝国内にて、謎の巨大な化け物と交戦。


 敵はあまりに強く、キャロラインでは勝てる見込みがなかった。

 アイスバーグがおのれの力、すべてを振り絞って、敵を氷に閉じ込めた。


 その代償として、氷聖剣アイスバーグが粉々に砕け散った……。


「そんな……勇者様でも勝てない相手なんて……」


 獣人ポロが絶句している。

 俺も、驚くしかない。


 キャロライン、というか聖剣の強さは、メンテしている俺がよく知っている。

 どんな敵も凍らせ、打ち砕いてきたあの聖剣が、まさか通じない相手が現れるなんて。


 いや、それよりもだ。


「アイス……うう……あいすぅ~……」


 氷の勇者が大粒の涙を流してる。

 あまり感情を表に出さない、この少女が。


 今は、人目もはばからず泣いてる。


「ヴィル様……どうして勇者様はこんなにも悲しんでいるのですか?」

「こいつにとって、アイスは相棒以上の存在だったからだよ」


 キャロラインは、生まれ持って孤独を抱えている。

 そんな彼女の唯一のよりどころ、それが、聖剣アイスバーグの存在だった。


「母親とか、姉とか、ともかくそういう存在だったんだ」

「……それは、お辛いですね」


 俺をここに呼んだ人物がいないが、たぶん、依頼はこういうことだろう。

 聖剣アイスバーグを、なんとかしてほしいって。


「ヴィル様、聖剣は治せるのでしょうか?」

「……無理、無理だよぉ」


 キャロラインが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言う。


「……聖剣使いだから、わかる。聖剣は、人と一緒。壊れたら、死んだら、もう二度と、絶対に、元通りにはならないの……わぁあああああん!」


 先代の八宝斎はっぽうさいガンコジーさんも同じことを言っていた。

 壊れたらそれまで。


 何をしても直らないと。

 だから、メンテは欠かさないようにといっていた。


「……どうして、先代様は、壊れたらそれまでと知ってるのですか?」

「……昔、聖剣が、壊れてしまったことがあったんだよ」


 今は全部で6本の聖剣。

 でも昔は、もう少しあったんだそうだ。


「実は聖剣には、大聖剣と小聖剣の二種類に分かれてるんだよ」

「大聖剣、小聖剣……」

「勇者が使い、世間一般でいうところの聖剣が、大聖剣。大聖剣には及ばないにしても、強い力を発揮する剣があった。これが小聖剣」


 大聖剣は、勇者にしか使えない、6本の剣。

 小聖剣は、勇者以外でも使える、複数本の剣。


「じーさんが修理を依頼されたのは、小聖剣だった。……壊れた小聖剣は、治すことができなかったんだ」

「そん……な……」


 キャロラインの表情が絶望に沈む。

 多分、俺に一縷望みをかけていたのだろう。


「アイス、ごめんね。……ちゃんと、お別れできなくて、ごめんね、ちゃんと今までのお礼が言えなくて、ごめんねぇ」


 キャロラインの涙を見ていると、胸が締め付けられる。

 彼女にとって氷の聖剣は家族だったんだ。


 家族が死ねばそりゃ、悲しむ。

 

「…………」


 人は死ぬ。それは世の理だ。

 道具アイスバーグだって、そうだ。


 いつか、壊れる。

 道具なんだから、しょうがない。


 ……本当にそれでいいか?


「いいわけないだろ」


 じーさんが直せなかった、聖剣。

 俺に直せるだろうか?


 多分、王都にいたころだったら、無理だったろう。

 でも、今は。


 王都を出て、いろんなものを直してきた、今なら。


「キャロライン。聖剣のコアは、持ってるか?」

「ヴィル様、コアとは……?」

「聖剣の力の根源だ。夜空にも、柄の部分についてるだろう?」


 闇の聖剣、夜空の柄には、アメジストの宝石がついてる。

 ここが聖剣で言うところの、頭脳にして心臓。


「……持って、ます。これを」


 キャロラインが大事に大事に抱きかかえていたものを、俺に差し出す。

 空色の美しい宝石だ。


「キャロライン、これを貸してくれ。俺が、再生させてみる」

「! できるの?」


 彼女の表情は曇っている。

 先代の八宝斎はっぽうさいですら、壊れた聖剣を直せなかった。


 そのエピソードを聞いたのだ、死んだ家族の命は、もう戻らないって絶望してしまったのだろう。


 昔の俺ならば、言えなかった言葉。


「任せろ。壊れた聖剣を、おまえの家族を……俺が直す」


 俺にとってガンコジーさんは、高い目標だ。

 超えられない壁だと思っている。


 いくらすごい手を俺が持っていたとしても、技術者として、じーさんには遠く及ばないって。


 でも、うるせえ。

 今は、そんなこと言ってる暇ないんだ。


「な、なおるの? アイス、なおるの!」

「ああ。核を触ってわかった。まだ、温かい。ここにまだ、アイスの魂は宿っている」


 でも触れている核からは、どんどんと熱が失われて行っている。

 多分、もうあと少しでアイスの魂は天に還ってしまうだろう。


 その前に体を作り、現世に留まらせないといけない。


「……で、でもヴィル様。できるの? だって、聖剣は神器だよ?」


 砕けた神器。

 手元には核しかのこっていない。


 今までのように、呪いのアイテムがあるわけじゃない。

 でも……。


「任せろ。俺が、アイスの体を作る」


 強い言葉を選んで発した。

 でもそれは、自信があるから言ったのではない。


おのれを鼓舞する言葉だ。

だって、一歩間違えば大事な家族の命を、この手で摘んでしまうやもしれないのだから。


 でも、やる。

 やるんだ。泣いてるこの子を、笑顔にしたい。


「大丈夫です、ヴィル様」


 ポロが微笑みながら、俺の右手に触れる。


「あなた様ならば、必ずできます。たくさんの人たちを救い、笑顔にしてきた、この黄金の手があるのですから」


 ……覚悟は固まった。

 俺は神槌ミョルニルを手に取る。


「キャロライン。核は、君が手で支えててくれ」


 こくん、とキャロラインがうなずく。


「……アイス、戻ってきて。まだ、わたしはあなたと一緒にいたい」


 願いと、祈り。

 それに呼応するように、核から巨大な魔法陣が出現した。


「アイスバーグの、設計図だ」


 俺にしか見えない、設計図。

 何が必要で、どう加工すればいいのかが、わかる。


(ボックス)オープン」


 俺はボックスから必要となる素材を取り出し、設計図である魔法陣の上に置く。

 右手に宿りし、5つの生産スキル。


 それらすべてをつなぎ合わせ、俺は新しいスキルを、発現させる。


「ヴィル様の体が、金色に光っておられます!」


 俺の右手から発せられたエネルギーが体全体に、そして、俺の持つ神槌に満ちていく。

 5つの生産スキル。


 これらは、過去だれかしらが持っていたスキルだ。

 万物破壊は魔神が、超錬成はじーさんが持っていた。


 でも、これは違う。

 全く新しい力。


「【神器修繕】!」


 その瞬間、核および素材が黄金に輝きだした。

 それらは混然一体となって、やがて1つの形を成す。


 キャロラインの手の上には、美しい1本の聖剣が握られていた。

 そう、氷の聖剣、アイスバーグだ。


 傷もひびも、なにもひとつない、新品同様の聖剣がそこにはあった。


『うう……キャロ?』

「アイス! 生き返ったのね! わぁああん!」


 キャロラインを認識できていた。

 アイス本人だ。模造品でも、劣化品でもない。


「す、すごすぎます! ヴィル様! 誰もなおせなかった聖剣を、復活させるなんて! まさに、ものづくりの神、創造の神ですよ!」


 神かどうかはしらん。

 だが、これでいいんだ。


「ありがとう、ヴィル様!」


 使い手と道具が、笑っている。

 俺は、もうそれだけで十分なのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぎゃはははははははは!!!!くっだらねぇ!!!!WWWWWW
[気になる点] SSランクの古龍100体相手に楽勝だったのにたった1体の化け物に勝てないってどういうこと?それに帝国内なら雷の勇者の出番じゃないの? [一言] ご都合主義すぎる……
2023/01/30 18:32 退会済み
管理
[気になる点] キャロラインの反応が違和感… 「聖剣は人と同じで壊れたら絶対に直せない」と断言したのはキャロラインなのに、過去に直せなかったと聞いて「そんな…」という反応は変です。だって直せないと聞…
2023/01/30 16:20 退会済み
管理
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