278.愛
ポロが俺の前にやってきた。
「おまえ……どうして?」
彼女は他の勇者達と一緒に、無限に湧き出る呪いの相手をしていたはずだ。
ポロがニコッ、と笑う。
「ヴィル様のお手伝いをしたくて!」
「……お手伝いっておまえ……これは……八宝斎の因縁の話であっておまえには……」
関係ない、と言う前に、ポロが口を挟む。
「確かに私は、七福塵と八宝斎の因縁に関係ないです」
「なら……」
「でも……私はヴィル様の従者です!」
その両手には、光と闇の聖剣が握られている。
「因縁とか、知りません。私はただ! あなた様のために、剣を振るいたい。あなた様を守りたいのです」
「ポロ……」
「どうか、私をお側においてください」
……相手は呪具使いだ。
体中に呪いの道具があって、正直かなり強い。
それを、ポロも承知の上で来てる。
「どうしてそこまで……するんだ?」
ポロが笑顔で、しかし、はっきりと答える。
「あなた様を、お慕いしてるからです!」
「! ……俺のことを?」
「はいっ! 私を地獄から救ってくださった……あなた様のことを! 愛してるのです!」
「…………」
……誰かを愛する、か。
シリカルに婚約破棄されたとき、俺は……当然って思ってしまった。
誰かを愛する心ってもんを、俺は持っていなかったからな。
ずっと物作りに邁進しつづけてきたから。
……でも。
今この状況で、俺は……ポロを、守らなきゃって思ってる。
強い相手、死ぬかも知れないという状況において……俺は自分ではなく、他人を……思ってる。
「俺さ、おまえのことは大事だと思ってるよ。絶対に……帰してあげないとって、思ってる。おまえの幸せを考えてる」
「! それって……」
「それが愛だって言うなら、俺も、好きだよ。ポロ」
「ヴィル様……ううん、ヴィル、さん!」
ポロがうれし涙を浮かべる。
俺も笑って、彼女の頭を撫でる。
「俺、一人じゃどうにもならなかった。俺は、職人であって、武器の使い手じゃあない」
やつに勝てないのは当然だ。
己の領分を越えたことを、やろうとしてるんだから。
なら……俺は俺の領分で、それ以外は……ポロに任せよう。
「戦おう、一緒に」
「はいっ! 供に!」
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