275.矜持
八宝斎を作った、目的を聞いた、俺。
願望器。
どんな願いも叶える魔法のアイテムを作ることが、こいつの目的。
作ってどうしたい、じゃあなくて、作ること自体が目的。
……そっか。
「じゃあ、俺はあんたと相容れないな」
「なに……?」
「俺は、道具はあくまで目的達成の道具でしかない。つまりは手段であると思っている」
俺がしたいのは、道具をただ作りたいんじゃあない。
「俺の作った道具で、皆を幸せにしたいのだ」
作っておしまいではないのだ。
作品とは、作って、そだてあげ、そして……誰かの役に立てるようになる。
そこまで、面倒見ないといけない。
「作っておしまい、なおまえとは……考えが違うよ」
「……ふふ、そうか」
「ああ、そうだ」
俺たちの間に静寂が流れる。
俺はこいつと近い存在なのは理解してる。でも……俺たちには、それぞれの職人としての矜持があった。
「あんたは、これからどうするんだ? 八宝斎は完成したんだろう?」
すると七福塵が……凶悪に笑う。
「いいや! 完成していない! おまえの未熟な考えを聞いて、理解した! 八宝斎は完成していないと!」
ずぉお……! とやつの体から、呪いの気配が立ち上る。
「確かにおまえには、願望を叶える力がある! だが、無駄な【思考】というものがある! そんなのは要らない! 我の理想とする願望器は! 自動で、どんなやつの願いも叶えるマシーンであるべきなのだ!」
つまり、
「モノに心なんて要らない……!」
……ああ、そうか。
こいつも、そういうタイプか。
なるほどね。
なら……俺のすることは一つだ。
「全力で抵抗させてもらうよ。俺はこれからも……たくさんモノを作っていきたい。たくさんの人を、幸せにしたいからな!」
「ははっ! いいぞ! それでこそ……矯正のしがいがあるというものだ!」
八宝斎と、七福塵。
最後の戦いが、始まる……。
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