274.相対
俺は転移の魔法陣を作り、七福塵のもとへと飛ぶ。
……そこは、地下空間。
溶岩の海の中に……一つぽつんと浮島があった。
その上にあぐらをかくのは、七福塵。
長い髪の、美青年だ。
だが、俺にはわかる。やつは見た目こそ整っているものの、長い年月を生きる醜悪なバケモノだってことがな。
「来たな、八宝斎」
俺の屋号……八宝斎と、七福塵。
「ああ、来たぞ、七福塵」
俺たちは相対する。これが……初めての邂逅だったかな。
こいつの作った作品とは、何度も出会ったが。
「最高だぞ、八宝斎。おまえは……我の悲願を達成してくれた」
「悲願? なんだそりゃ?」
「最高のモノ。願望器……八宝斎を作ることさ」
願望器……八宝斎……?
「八宝斎は、屋号じゃあないのさ。我の作りたいと思っていた、【何でも願いが叶うアイテム】のこと」
……何でも願いが叶うアイテム。願望器……か。
「何勝手に決めつけてんだよ。八宝斎は、俺たちの屋号だぞ?」
「まあな。だが、別にいいだろう。なにせ、我が初代・八宝斎だからな」
……こいつが。
いや、でも、そうか。
合点がいった。
こんなすげえアイテム(呪物)の作り手が、俺たち八宝斎と、無関係なわけがないのだ。
「我は、八宝斎……願望器の作成を望んでいたのだ。どんな願いも叶える凄いアイテム……そのために、八宝斎という屋号を作り、そして彼らに使命を与えたのだ」
「神器を、天に献上しろってやつだな」
「そうさ。天っていうのは、とどのつまり……我のことだ」
……つまりこいつは、願望器を作るために、俺たちを利用したってことか。
「そしてついに、ヴィル、おまえが八宝斎を完成させた。おまえは、あらゆるやつらの、願いを……形に変える力を得た」
七色に光るこのハンマー、そして……イメージを実現する、俺の力のことを言ってるのだろう。
「で、あんたは……八宝斎を作って、いったい何がしたかったんだよ?」
すると七福塵は笑う。
「別に、何も。ただ我は、凄いものを作りたかった。ただそれだけさ」
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