254.毒を薬に
ズ=オカへと向かう途中、勇者達が苦しみだした。
どうやら大気中に含まれる瘴気を吸い込んでしまったらしい。
しかもこれは、ただの瘴気じゃない。勇者にも効く……というか、勇者にしか効かない毒だと思われる。
特定の誰かにしか効かない毒なんて、自然界に存在するわけがない。誰かが作ったんだ。
なんて……もったいない。
毒は薬にもなる。この強毒も、使い方次第では人を直すための凄い薬にもなるっていうのに!
どうして、作ったモノで人を傷つけようってするんだろうな!
っと、怒る前にまずは皆の治療だ。
俺は神鎚ミョルニルでポロの胸をトンとたたく。
瞬間、ポロの体が輝く。
「あれ、胸の痛みが消えた……」
光が消え去ると、ポロの顔色が良くなっていた。
よしよし。
「壊れた体の組織を、俺の【全修復】で直したんだ。あとついでに、体に害をなす毒性分を作りかえた」
「治療と同時に、毒の無効化までするなんて……やっぱりヴィル様は凄い!」
無効化?
ノンノン。
「ふふ、ポロよ。毒を消したんじゃないぜ」
俺は他の勇者達にも同様の治療を行う。
するとイリス、ミリスたちも元気になった。
「な、なんか体のそこから、力が湧き上がってくるよ!」
「すさまじい魔力量ですわ!」
あの毒は体内にある魔力を食らいつくす効果を持っていた。
それを反転させ、魔力を無限に作り出す薬へと変化させたのだ。
結果、勇者達は無限の魔力を手に入れたってわけ。




