241.過去
ミリスは自分の過去を語る。
「元々ぼくと双子のイリスはね、捨てられてたんだ」
「捨てられ……」
「孤児、ってやつさ。まあしょうがないよね。エルフと人間の子供だもん」
ハーフエルフ。
人間とエルフの血が半分ずつ混じった種族のこと。
この世界で混血は、混じり物だとして、忌み嫌われていた。
たとえば、獣人。
獣人は人間と獣の血がまじっているせいで、人間たちからかなり嫌われている。
ハーフエルフもまたしかり。
エルフからすれば、下等な人間の血がまじった半端物。
人間からすれば、エルフの力を持って生まれたはぐれモノ。
どちらの種族からも忌み嫌われる存在、それが……ハーフエルフ。
「森に捨てられていたぼくとイリスを、孤児院のジレット先生がひろってね、育ててくれたんだ」
ジレット先生というのが、ミリスたちの恩人であるのはわかった。
ミリスが楽しそうにしているから。
「ジレット先生の知り合いに、先代の八宝斎……つまり、ヴィルししょーのおじいさんがいてね。ししょーはそのとき知り合ったの」
先代の八宝斎、ガンコジー。
彼はヴィルを連れて、孤児院に来たことがあるそうだ。
ヴィルとのつながりはわかった。
次に気になるのは……。
「いつ勇者に……というか、聖剣に選ばれたのですか?」
「これがですなぁ、生まれたときから何だよ」
「?」
「ジレット先生がね、ぼくらを見つけたときに……そばに聖剣が落ちてたんだって」
風と地の聖剣が、それぞれ、ミリスたちの傍らにおいてあったという。
「ししょーのおじいさん曰く、聖剣がぼくらを、森の魔物から守ってくれてたんだって」
森には魔物がいる。
赤ん坊なんて格好の餌になってしまうだろう。
生き延びられたのは、聖剣が彼女らを守ってくれていたから。
「ぼくらが五歳の誕生日に、ジレット先生が、聖剣をぼくらに返してくれたんだ。で、ぼくらは聖剣の使い手になったってわけ」
ジレット先生は、ミリスたちが自我を持つまで待ってから、聖剣を渡したそうだ。
自分で、聖剣を手に取るかどうかを、選ばせたかったらしい。
「いい先生なんですね」
「うん! すっごく!」
 




