210.いざ魔族国へ
俺、ヴィル・クラフトは、魔王の娘ロクサーヌの依頼で、ボロボロの状態の魔族国を修理することになった!
うぉお! テンション上がるぅ! 国まるごと、作り直していんだってぇ!?
そんなの初めてだ!
テンションも、上がりまくるぜえ!
「ヴィル様楽しそうですねっ」
俺たちは竜車に乗って、魔族国のある北を目指す。
ポロがニコニコしながら尋ねてきた。俺が機嫌がいいのが、伝播したんだろうか。
一方で、ロクサーヌちゃんは少し不安そうな顔してる。
「ヴィル殿……やっぱり、危ないのだ」
「おやどうしたよ、ロクサーヌちゃん?」
「うむ……今魔族国内は、かなり荒れておるのだ。あちこちで戦が起きてる。戦闘の素人が行って無傷で済まされるところではないのだ……」
ははん、ロクサーヌちゃんは、俺がただの鍛冶職人だと思ってるわけだ。
物作りはできても、戦いはできないと。
「大丈夫ですよ、ロクサーヌ様。ヴィル様は、すごいんです!」
えっへん、とポロが胸を張る。
一方ロクサーヌちゃんは「な、なにがすごいのかわからん……」といっていた。ごもっとも。
と、そのときである。
「ヴィル様! 敵の気配がします!」
「ん~? どれどれ」
窓からひょっこりと顔を出す。
空の上に、黒い点がいくつもあった。
ぎゃあぎゃあ、とやかましい鳴き声が聞こえてくる。
「ありゃあ……飛竜かな」
「Aランクモンスターですね。数は結構います。100程度でしょうか」
ふぅん、100かー。
飛竜は獰猛だし、こっちが何もしなくても、襲ってくるだろうなぁ。ロクサーヌちゃんの表情がこわばっている。
「どしたん?」
「あ、いえ……別に……」
怯えてる? いやでも魔族ってめっちゃ強いはずだぜ?
ロクサーヌちゃんは魔族のなかでも上の立場みたいだ。
てことは、強い魔族のはず。
飛竜ごときに恐れをなすようなことはないだろうに……ううん。
ま、いっか。
「ヴィル様、ここは私が」
「いや、出るまでもねえよ」
俺は竜車の壁にあるボタンを、ぽちっと押す。
その瞬間、ごんごんごん、という音とともに、屋根がぱかっと開く。
「新兵器も試したかったし、俺に任せなさい。■、オープン」
俺の目の前に■が出現。
その中に手を突っ込んで、取り出す。
「それは……巨大な筒? ですか」
「ああ。魔大砲ってんだ。こんなかに爆薬とかなんやらを詰めた砲丸が装填されてるのよ」
大筒を構えて、照準を合わせる。
「ふぁいあー!」
どんっ! というすごい音とともに、砲丸が一直線に飛んでいく。
砲丸には物体操作の魔砲が付与されておるため、狙ったところに正確に着弾。
どがぁああああああああああああああああああああああああああああん!
激しい爆発を起こし、飛竜は一瞬で消し炭になった。
よしよし、いい武器だ。
「す、すさまじい武器なのだ……ヴィル殿……これは一帯どこで手に入れたのだ?」
ロクサーヌちゃんが恐る恐る俺に尋ねてくる。
「いや、これは俺が作った武器だよ」
「! 飛竜の群れを瞬殺できる武器を、作るなんて……」
「ま、こんな感じで自分の身は自分で守れるからさ、ロクサーヌちゃんは気にしなくていいよ」




