195.星になる
俺の持つスキルの中で、最も使いたくないもの……。
無限神器複製。
俺は道具には心が宿っていると思ってる。
だから、道具の心を、意思を無視して、ただガワだけを複製する……そんなスキルが好きには絶対になれないのだ。
だが今は緊急時。
無数に出現した、破壊の魔剣。
これは勇者の結界を容易にひきさいて、外に出て、そしてこの地上を破壊し尽くしてしまうだろう。
そんなことはさせない。
だが万物破壊の宿ってる魔剣に対して、生半可な道具で対抗できない。
だからこそ、神器なのだ。
無数に出現した黒い■、そこから吐き出されるのは、俺たち八宝斎が作ってきた神器、その複製。
無数の神器が■から照射されると、魔剣とぶつかり合って対消滅する。
「くそくそくそぉおおおおおお! ヴィルぅうううううううううううううううううううううううううううううううううう!」
魔剣の嵐が降り注ぐ中、俺は空気塊を蹴ってウィニーちゃんに接近する。
「ウィニーちゃん……あんたはすごい才能を持っていたよ。ともすれば、すごい職人になれてたかもしれない」
でも、彼女は最後の最後まで、道具を人殺しのためにしか使わなかった。
道具をないがしろにし続けた。
そんな彼女に、職人は向いていない。
「職人失格だ……!」
俺は神鎚を片手に、思い切り振りかぶって……。
「もう一度……ゼロからやり直すがいい! くらえ!」
俺は肉体改造し、渾身の一撃を……ウィニーちゃんにぶつける。
バゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「うぎゃぁあああああああああああああああああああああああ!」
殴り飛ばされたウィニーちゃんは勇者結界をもぶち破り、空の彼方へと飛んでいく。
「ヴィル・クラフトぉおおおおおおおおおおおおおお! 覚えてろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
……そして、彼女は星となったのだった。




