183.使い手の差
《ウィニーSide》
「くそくそくそくそ! なんなんだよぉ!」
炎の魔神となったウィニーは苛立ち下にそう叫ぶ。
彼女の体は、空中要塞と完全に同化していた。
この要塞にはたくさんの神器が使われていた。
それらすべてウィニーの親、七福塵が用意した物だ。
トラップや壁にいたるまで、たくさんの神器が配置してあったこの要塞を、ウィニーは取り込んだ。
つまり、多くの神器がウィニーの体を構築してるといってもいい。
その数なんと、999個。
そこに聖剣ファイア・ローが加わり、合計で1000の神器が合体して作られたのが、この炎の魔神というわけだ。
神器は1つで、国一つ滅ぼす力を持つ。
それが1000も集まれば、この星の制圧なんて簡単な……はずだった。
だが、実際はどうだ。
たかが人間、数人すら倒せないで居る。
「なんでだよぉおお! どうしてだよぉおおお! ボクは1000の神器を身に付けて、強くなったんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!」
ヴィルも、勇者達も実感ないのだろうが、今現在この星は危機的状況にあるのだ。
なにせ国を滅ぼす1000の神器が集まって、人類に刃を向けているからだ。
だが彼らが脅威に感じていない理由は二つ。
ひとつは言わずもがな……ヴィル・クラフトの存在。
彼がいることで被害がまるで拡大しないのだ。
勇者達は気づいていないようだが、魔神たちの熱をよそに逃がさぬよう、ヴィルは空気の層で城を作っていた。
また、彼がいることで勇者達の使う武器が、通常より高いパフォーマンスを発揮してる。
といっても、彼が意識して何かしてるのではない。
……聖剣たちが、勇者と同様に、自発的に、ヴィルのために何かしたい。
そう思うことで、聖剣のパフォーマンスを100%以上……いや、200%に引き上げているのだ。
物に心があると、そう本気で思って、行動してるヴィルだからこそできる、バフ効果といえた。
……他方、ウィニーはと言うと……。
「クズ神器ども! ふざけるなよ! おまえら1000も集まってなんだこのていたらくはよぉお!」
ウィニーは自分の劣勢をすべて、神器のせいにしていた。
だが神器のパフォーマンスを下げているのは、ウィニー自身だった。
ウィニーは神器1000個を、ただくっつけただけだった。
どれとどれを組み合わせるのが、最大の威力を発揮するか、など。
そういうことをまるで考えず、とりあえず数作って、1000個くっつけてみただけ。
その結果どうなったかというと、神器同士で効果を打ち消しあったり、元の形を無理矢理変えたことで、最大の効果を発揮できなくなったりした。
……そう、神器が弱いのではない。
それを扱う、ウィニーがわるいのである。
道具を大事にするヴィルは、人にも物にも好かれて、戦闘を優位に進めている。
道具をないがしろにするウィニーは、全てに嫌われ、劣勢を強いられている。
どんな道具を使うかではない、誰がそれを使うのか。
それが……この戦いにおいて、最も重要なファクターであった。
そのことを……ウィニーは知らなかった。
そして悲しいことに、ヴィルもまた知らない。
普段の行いの差が、こうして目に見える形で、あらわになってるのだが……。




