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【完結】追放された鍛冶師はチートスキルで伝説を作りまくる 〜婚約者に店を追い出されたけど、気ままにモノ作っていられる今の方が幸せです〜  作者: 茨木野
一章

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18.知らぬ間に結界を超強化してた



 俺は女皇帝アルテミス陛下の病気を治す……つもりが、若返らせてしまった。

 怒られることがなくてよかった。


 泊まっていけというので、帝城に一泊した。

 翌日、俺は獣人ポロ、勇者ライカとともに、皇帝の謁見の間にいた。


「ヴィル、このたびは勇者ライカ、そしてわたくしの命を救ってくださったこと、心より感謝申し上げます」

「いやいや、気にしないでくださいよ。たいしたことしてないんで」


 ただ治しただけだしな、物を。

 

「それで報酬の件なのですが……」


 と、そのときだ。


「皇帝陛下! 大変でぇございますぅ!」


 謁見の間に入ってきたのは、ひげ面のおっさんだ。

 制服(軍服っていうらしい)に身を包み、帽子をかぶっている。


「どうしたのですか、アクヤック大佐」

『その悪人顔にふさわしい名前じゃのぅ』


 ポロの腰につけられた、闇の聖剣・夜空がぼやく。

 たしかに目つきは悪い。


「陛下。ご病気からご快復なされて、わたくしとてもうれしく思います! しかし神は我らに次なる試練をお与えしたようです!」


 なんだか随分と芝居かかってるな言い方が。

 大変だって入ってきたわりに。


『ヴィルが皇帝を治療したことは知られておるのじゃな』

 なんか昨日のうちに会議が行われてたらしい。

 そこで情報共有されたとか。


「なにがあったのです、アクヤック大佐?」

「結界装置が、壊れてしまわれたのです!」

「! 結界装置が……壊れた……?」


 文字通り結界を発生させる魔道具だ。

 しかし道具の宿命か、使っているとほころびが生じてくるのだが……。


「ええ、ええ、しかもです! 間の悪いことに! 魔蟲まちゅうどもの大群が、帝都カーターに押し寄せているとの知らせが!」

「そ、そんな……!」


 皇帝陛下が青い顔をして叫ぶ。


「まちゅー? ライカ、なんだよ魔蟲って?」


 雷の勇者ライカに尋ねる。

 彼女の顔に緊張の色が見て取れた。


 ライカは強い。

 そんなライカですら、怯えるような強敵ってことか?


「先生、魔蟲ってのは帝国内の森、妖精郷アルフヘイムに住む馬鹿でかい虫のモンスターのことだ。その外皮は神威鉄アダマンタイトを凌駕する。攻撃力は、古竜に匹敵……いや、それ以上だ。あたいも手を焼く」


 まじか。

 勇者ですら厄介と感じる敵が、大群をなして襲いかかってきてるってことか。


 しかも、結界装置が壊れてるときに。


 にぃ……と一瞬アクヤック大佐が笑ったように思えた。

 が、それも一瞬のこと。


「陛下。いかがいたしましょう。メンテならともかく、完璧に壊れた結界装置を修理できるほどの技師は、国内にはおりませぬ」

「え?」


 何言ってんだこのおっさん……?


「帝城内に民達を避難させましょう。魔蟲どもはわたくしの部隊、錦木にしきぎ隊が討伐して……」

「あー、ちょいといいかい?」

「なんだ貴様! 今わたくしが陛下と大事な話を……!」

「いや、結界装置直せるけど、俺」

「は………………?」


 ぽかんとするアクヤック大佐。

 しかし、首をふるって言う。


「な、なにを言ってるんだね貴様! 六大国で、ドワーフ国に次いで技術力のある我が国の技師ですら、完璧に壊れた結界装置は直せぬのだぞ!?」

「え、でも直せるけど」

「何を根拠にそんなことを!?」

「根拠って……まあできるからできるって言ってるだけだぞ?」


 アルテミス陛下がこくりとうなずいて言う。


「アクヤック大佐。彼は天才鍛冶師です。彼なら直せます。私が保証します」

「へ、陛下! こんな得体の知らないやつにだまされてはいけません! だいいち、結界装置を今から直しても無駄です! 今まさに、魔蟲の大群が押し寄せている! 結界は解除されているのだ! 直してる間にも魔蟲の群れが大量に流れ込んでくる!」


 いや、一瞬で直せるから。

 こんなとこでぐだぐだ言ってる間に直せるから。


『あやしいおっさんじゃな。まるで時間を稼いでるようじゃ』


 夜空の言う通りだ。

 緊急事態だってわりに話を引き延ばそうとするし……。


 と、そのときである。


「こ、皇帝陛下に急ぎ、ご報告があります!」


 別の軍人が謁見の間へとやってきた。


「魔蟲の大群が……」

「ほれみろ! 貴様がぐだぐだ虚言を言うせいで、魔蟲の大群が帝都に入ってきてしまったではないか!」


 アクヤック大佐がにやりと笑って言う。

 だが、報告に来た軍人は、ふるふると首を振るった。


「いえ、大群が一瞬で消滅しました」

「そうかそうか! ほら聞いたか小僧! 結界装置がないせいで、魔蟲の大群が一瞬で……え、えええええええええ!? しょ、消滅しただとぉおおお!?」


 アクヤック大佐が大慌てで、伝令の肩を掴んで揺する。


「ば、馬鹿な!? どういうことだ貴様!」

「あ、はい。魔蟲の群れが帝都の結界に触れた瞬間、なぜか消滅したのです」

「な!? け、結界ぃいいいいいいいいい!?」


 アクヤック大佐が驚愕の表情を浮かべる。

 アルテミスは困惑しながら尋ねる。


「どういうことですか? 結界装置は壊れたのではなかったのです?」


 結果装置が壊れてるんだから、結界は消えているはず。

 しかし、伝令の曰く、結界はあるという。


「そうだ! 結界装置はたしかに【壊した】! 結界はたしかに消えたはずだぞ!?」


 ……ん?

 このおっさん、今壊したっていわなかった?


「し、しかし結界はたしかに張られていると思います。でなければ、魔蟲達は帝都の中に入ってきたはずですので」

「ばかな! 結界装置が無く、結界が作動していたということか!? そんなありえない!」


 あ。

 ひとつ心当たりがあった。


「そうだ俺、昨日ここに来るときに結界直しておいたぞ」

「「「は……?」」」


 アクヤック大佐、伝令、そしてアルテミス陛下も、呆然とする。

 あー……そうだ。報告遅れてたや。


「帝都に入る前にさ、結界のほころびが見えたんだよ。だから直した」

「ま、待て……え? 結界にほころびが、見えた? ば、馬鹿を言うな! 結界は人の目には見えぬのだぞ!?」

「そうらしいな。俺も昨日はじめてしったよ。でも今は見えるんだ。だからほころびを修繕したんだ」


 そのとき、ぱぁ……! とポロの剣が光って、そこに一人の着物の美女が現れる。


「な!? き、貴様どこから現れた!」


 ちゃき、と大佐が腰の銃を、人間の姿になった夜空に向ける。

 だが彼女はふっと笑うだけで、拳銃が一瞬で消えてしまった。


「なぁ!? 銃が消えた!」

「少し黙れ。我は闇の聖剣、名を夜空という。この天才鍛冶師、ヴィル・クラフトがつくりし、最も新しい聖剣じゃ!」

「なにぃい!? せ、聖剣を作り出しただとぉおおおおおおおおお!?」


 驚くアクヤックおっさん。

 夜空を見て、アルテミス陛下が納得したようにうなずいた。


「得心がいきました。私の壊れた体を治せたのも、聖剣を作れるほどの力を持っているからがゆえに。ならば、結界を直せても当然」


 どやら陛下は俺の言葉を信じてくれるようだ。

 さすが年の功。


「補足しておくと、魔蟲の群れが消えたのも、すべて我が創造主たるヴィル・クラフト様による物じゃ」

「ど、どういうことだ!?」


 おっさんが叫ぶと、夜空が説明する。


「結界は通常、魔物を避ける効果しか付与されておらぬ。しかし、主が結界を直したことで、新しいものへと作り変わったのじゃ。装置を必要とせず維持でき、モンスターが入ってこようとした瞬間に敵を消滅させる、すごい結界へと」


 まじか。

 そんなことしてたの俺……?


単に結界のほころびを直しただけのつもりだったのだが……。


「すごいですヴィル様! 結界装置を必要とせず結界を張るなんて!」

「しかもモンスターが入ってくる瞬間に消えるなんて、そんな夢のような結界作っちまうなんてよぉ! さすがだぜ先生!」


 ポロとライカが褒めてくれる。

 いやぁでも、許可も無く別物に変えちゃったな。


「すんません、陛下。知らない間にやっちゃってたみたいで」

「い、いえ……ヴィル。感謝こそすれ、とがめるつもりはいっさいありません。神の奇跡としかいいようがない、結界を作って、我らが国民を守ってくださったのですから。すごいです、あなた様は」


 あれ、許してもらえた。

 いやぁ、ラッキーだったな。


「そ、そんな……そんな馬鹿な……どうして、こんなタイミングで……」


 さて、と。

 俺はおっさんに近づいて言う。


「あんたさ、さっき結界装置を壊したって、言ったよな? 自分で」

「! し、しまった……!」


 つまり、まあ犯人はこいつってことだ。


「自作自演だったんだな?」

「く、くそぉお! こうなったらヤケだ! 死ねぇ!」


 おっさんが懐から、卵のようなものを取り出す。


「! しゅ、手榴弾!?」


 ライカがぎょっ、と目を剥く。

 おっさんの手には、最近帝国で開発された道具、手榴弾が握られていた。


「【七福塵しちふくじん】に栄光あれぇ……!!!」

「しちふくじん……?」


 ぴんを抜いて、おっさんが自爆しようとする。

 俺はアクヤックのおっさんから手榴弾を冷静に奪い取る。


「【万物破壊】。レベルMAX。てい」


 神槌でこつん、と俺はハンマーで手榴弾を叩く。

 その瞬間、一瞬で消えた。


「は……?」

「手榴弾って、ピンを抜いて爆発するまでにタイムラグがあるんだよ。万物破壊の力で、その間に存在まるごと破壊させてもらった」


 手榴弾に物理的衝撃を与えたら爆発する。

 けど万物破壊の力は、物理的に壊すんじゃ無くて、存在を消すのに等しい。


 ゆえに、爆発しなかったってわけ。


「な、な、なんだ……なんなんだきさまぁ~……」


 どさ、とその場に尻餅をつくアクヤックのおっさん。


「俺? 鍛冶師だよ」

「貴様のような鍛冶師がいるわけないだろぉおおおおおおおおおお!」


 まあちょっと特殊かもだけど、ちゃんと鍛冶師ですよ、俺は。

 その後おっさんは逮捕され、地下牢に連れて行かれた。


「ありがとうございます、ヴィル。何度も帝国のピンチを救ってくださり」

「いえいえ、どういたしまして」


 すると彼女は頬を赤く染めると、「これで【あの話】が進められます」と何かをつぶやいていた。

 あの話ってなんだろ。


 てゆーか、さっきのおっさんが言っていた、七福塵しちふくじんってのも気になるしなぁ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] この世界の理論だと獣人も結界に触れると消滅しない?大丈夫?
[気になる点] 「治す」は病気等を治癒する時などに使う方で 物を修理したりするのは「直す」だと思います。 [一言] アクヤックをボコって欲しかった。
[気になる点] 登場人物がアホしかおらんのか…自分から壊したとか言ってるしそれを聞いてるのが主人公しかいないし
2023/01/24 12:08 退会済み
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