177.友達
ヴィルたちの元へ、獣人ポロが聖剣を手に現れた。
「さ、ヨウさん! 一緒に大事なお友達を、取り返しましょう!」
明るい笑顔でポロが言う。
だがそれを聞いて、ヨウは不思議に思う。
「……な、んで?」
「え?」
「どうして……うちに手を貸すのでありますか?」
ヴィルは、なんとなくわかる。
彼にとって物、聖剣が大事。
悪人の手に渡らないよう、手を貸してくれる。そこまでは理解できる。
問題はポロだ。
彼女が危険を冒してまで、自分に手を貸してくれる道理はない。
あの炎の魔神は、見るだけでわかる、かなり強力な敵だ。
下手したらポロに大ダメージが入る可能性はある。
ヴィルはそれをわかっていたから、ポロを下がらせた気がする。
そう……わざわざその身を危険にさらしてまで、助ける理由はポロにはないはずなのだ。
「何言ってるんですか」
ポロがニコッと笑う。
「友達が困っていたら、助ける。でしょう?」
「友達……」
「って、私は獣人国で習いました」
……友達。
そこまで深い仲になったろうか……。
そう考えて、野営したときに、一緒にヴィルのどこが好きかと話したことを思い出した。
ここに至るまでの旅路で、仲良くなっていた、ということだろうか。
友達……。
「……初めて、であります」
ヨウの出自は特殊だ。
砂漠エルフたちからも、エルフたちからも、仲間はずれだった。
ずっと彼女はひとりだった。
それでいいと思った。だって自分は狩人だから。
……でも。
狩人である以前に、彼女はひとりの女の子だ。
本当は友達とおしゃべりしたり、お出かけしたりしたい。
……友達、そうだ、友達が欲しかったんだ。
自分の聖剣以外の、本当の友達が……。
「ポロ……さん。おねがい、手伝って!」
ヨウのお願いに、ポロが力強くうなずく。
ヴィルはその様子を見て、微笑んでいた。
「よーっしゃ! じゃあ……3人で、あいつぶっ倒そうぜ!」
「「はい!」」




