175.それでいいのかい?
《ヨウSide》
二人で戦おうと、ヴィルは言った。
自分なんてまだまだひよっこ勇者なのに、彼は自分を見下さず、対等に扱ってくれる。
だから、好きなのだ。
「耐熱は付与しておいた。相手が近づいてきても燃え尽きて死ぬことはないぜ、安心しな」
「い、いつの間に……」
「さっき頭撫でただろ?」
……あれは慰めてくれたとかじゃなくて、耐熱性を付与していたのか。
ヴィルのこと好きだから、ちょっと、がっかりした。
「来るぜ! ヨウ!」
炎の魔神が雄叫びを上げる。
右手を振るうと、無数の噴石が飛んできた。
ヴィルがガードの体制を取ろうとする。
自分をも守ってくれようとしているのだ。……優しい、でもその優しいさにいつまでも甘えて良いのだろうか。
自分を対等に扱ってくれる、ヴィル。
メンテもしてくれている、ヴィル。
そんな彼に自分は何を返せている?
……何も返せていない。
親友を取られて、取り返す手伝いをしてもらってる。いつもと同じ、かれにせっかく対等に扱ってもらっているのに……。
「……いつまでも、おんぶに抱っこは嫌だ!」
ヨウは魔法矢を構えて、全力で矢を放つ。
「竜の矢!」
極太のレーザーが一瞬で噴石を消し炭にかえる。
「おー、やるじゃーん!」
ヨウはうなずいて矢をつがえる。
……だが、ぜんぜんだ。
この弓ですら、自分の全力が出せない。
やっぱり……ファイア・ローがいる。
「ヴィル様! ローを」
「そうだな、まずはローを救出だ」




