172.うきうき
……なんだあの男は。
火の聖剣の持つ火力を、最大限生かした攻撃をしたはずだった。
しかしそれを真正面から受けても、ヴィルはけろっとしてる。
あり得ない、物体全てを破壊せしめる炎を受けて……。
「どうして無事なんだ貴様!?」
「え、身体の細胞を作り替えただけだけど?」
「何を言ってる!?」
あれぇ? とヴィルが首をかしげる。
「いや、ほらだってこの部屋って無事じゃん。君の攻撃を受けても」
……その通りだ。
万物を燃やし尽くす炎を受けても、部屋は無事である。
「察するにさっきの攻撃は、君を傷つけないようになってるんだ。多分無意識か、細胞がそもそもそういうものになってるか。だから俺は自分とヨウの細胞を、あんたのものと同じにした。その結果、攻撃を受けなかったってだけ」
……正直そこまで説明されても、何を言ってるのかわからない。
するとヴィルは首をかしげる。
「おかしいなぁ、こんなすごい物を作れるあんたなら、今のセリフも理解できると思ったんだけどなぁ?」
……恐ろしいのは、ヴィルがこれを別に、あおりで言っていないことである。
この建物を作ったのはウィニーではなく、彼女の父、七福塵である。
つまりだ。
おそらく父はヴィルの言ってることを理解できるのである。
……自分では理解できないことを、その息子であるヴィルは理解できる。
「いいや……ぼ、ボクは認めない! 認めないぞぉ……!!!!!!!!!」
ばき、ごき……とウィニーの身体が変形していく。
火の聖剣を完全に取り込み、その形を別のものへと作り替えていく。
「うぉおお! 変形だぁ! どうなるんだぁ!?」
……ヴィルを殺す形に作り替えているというのに、当の本人はウキウキだった。




