139.まず食糧
砂漠エルフの事情は理解した。
ようはこの南の国フォティヤトゥヤァが、ミダガハラ火山の活性化にともなって人の住めない土地になった。
そこで、このリクガメにみんな移り住んだ……ってわけだ。
「今はいいですが、このままずっとここだと……」
砂漠エルフのハオちゃんの母親、アンんさんが暗い顔で言う。
ふと、気になったことをきく。
「食料どうなってるんだ?」
「村から持ってきた保存を、みんなで分けてあって食べています。ただ……それももうつきかけております……」
「水は……?」
「貯水タンクがあるんです。それも同じで……」
なるほど、水も食料もつきかけてるわけか……。
「このままでは早晩、みな死んでしまいます……」
ふぅむ……。そうだよな、もともと避難用に作られてないもんな、この建物。
俺は周りを見渡す。
砂漠エルフのみんなは、暗い表情でうつむいてる。
固い地面に横になって、耐えている。
……こんなの駄目だ。
「よしわかった。俺に任せとけ」
「ほ、本当ですか?」
「おうよ」
俺は■から、神鎚ミョルニルを取り出す。
そして……。
ドサドサドサッ……!
「これは、さっきのクラーケンの死骸?」
「そう。そんで、まずは……ヨウ!」
こくん、と火の勇者ヨウがうなずく。
魔法矢を取り出して……。
「……鳳の矢」
ヨウが放った炎の魔法矢が、クラーケンの触手を良い感じに焼く。
その上から、俺はボックスに入れておいた調味料を振りかける。
ほわん……とうまそうな匂いがただよう。
「ポロ」
「はい! カッティングですね!」
俺の意図を悟ったのか、ポロがうなずくと、2本のナイフでクラーケンの触手をすぱぱぱんっと切っていく。
■からデカい皿を取り出す。
ポロの斬ったクラーケンのあぶり焼きが、皿の上にボトボトと落ちる。
「まずはクラーケンのあぶり焼き! お上がりな!」
砂漠エルフ達が困惑してる。
クラーケン食べられるのかって思ってるのだろう。
ハオちゃんは一番に飛びついて、かぶりつく。
「おいしー! おいしいよおう! こんなおいしいのたべたことないよ!」
ハオちゃんの言葉を聞いて、警戒心を解いたのか、砂漠エルフたちが近づいてくる。
みんな一口食べると……。
「うめええ!」「なんだこれ! うますぎるだろ!」「あまじょっぱくっって最高!」
よしよし。
俺はお手製の調味料を振りかけておいたのだ。
「すごいですね、これ。なんていうんですか?」
「醤油、それとバター。醤油は極東の調味料だな」
「なるほど! こんな美味しくなる調味料を作れるなんて、すごいですヴィル様!」
いやいや、作ったのは極東の人だし……まあいいや。
「さ、何はともあれまずはメシだ! 食べようぜみんな!」




