102.砂漠エルフ
俺たちは南の国フォティヤトゥヤァへと上陸し、ミダガハラ火山を目指していた。
道中、どこでも蛇口を設置しながら、進んでいく。
「……なぜ?」
歩きながら、ヨウが俺に尋ねる。
俺の作った魔法の蛇口を指さす。
ああ……。
「これ置いてっていいかって? たくさん作ったからね、置いてってもいいんだ。ここを通った人で、喉渇いた人が、使ってくれればいいかなって」
「さすがヴィル様! このような素晴らしいアイテムを、無償で提供するなんて! なんて心が広いのでしょう!」
心が広い……?
うーん、別に。
「俺はただ、便利なアイテムを、たくさんの人に使ってもらいたいだけなんだがなぁ」
まいっか。
俺はあまり深く考えず進んでいく。
今度は、ポロがふと尋ねてきた。
「そういえばこのフォティヤトゥヤァに住んでいた人たちは、大丈夫なのでしょうか? この暑すぎる環境では、人も住めないでしょうし……」
「あれ、ポロ。知らなかったっけ、ここ、砂漠エルフの国だって」
「砂漠……エルフ?」
どうやらポロは知らないみたいだな。
「普通のエルフとは違うのですか?」
「ああ、森に住むエルフと違って、砂漠地帯に住むエルフ達のことを、砂漠エルフってんだ。昔はダークエルフなんて呼ばれてたかな」
「だーく……悪い人たちのなのです?」
ぴくっ、とヨウが体をこわばらせる。
ディスられたわけじゃないけど、こういうの過剰に反応するんだよなぁ、あいつ。
気にしなくて良いのによ。
「ううん、いいやつらだよ」
ぴくぴくっ、とヨウが体をまたもこわばらせる。
いや、多分フードの下で、耳が動いていたんだろう。
かわいいやつめ。
「砂漠エルフは森のエルフより熱に耐性があるのさ。だから、この暑いなかでも普通に暮らせてると思うよ」
「へえ……会ってみたいです、砂漠エルフさん」
「まあ、そのうち会えると思うよ。いやでも、なあヨウ?」
「…………」
彼女はスタスタ進んでいってしまう。
照れ屋だなぁ相変わらず。
まあいいか。




