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95 魔術師、敵地に行く

「ごくろう、ミスター。さて、この後どうするかだな」

「ゾンデルの屋敷に行ってドカーンと…」

「無茶をいうな、ノア。ターニャがそこにいるかも知れんのだぞ」

「そこですね。まずはターニャがどこに連れて行かれたか確認しないと」

「それでは、わたくしが先行して探りましょうか」

「また、アリサに負担をかけさせてしまうな…」

「わたくしの役割のようなものですから」

「それじゃぁ、僕と一緒にゾンベルグまで行くことにしよう」


トールたちに少し待つように言って、僕はアリサをゾンベルグまで送っていった。行きは街道にそってテレポートで刻んで行くしかなかったが、それでも馬や馬車で行くよりもずっと早く着いた。まだ奴らの馬車は着いていないはずだ。アリサにはゾンデルのやってくる馬車を見張って行き先を突きとめるように指示を出しておいた。


ついでに、この町のギルドの裏の路地に基準点を設置した。これで、テレポートでソリトの町との行き来が可能となり、みんなをゾンベルグまで連れて来ることが出来る。



ギルドの裏にみんなと一緒に転移した。出現と同時にトールが指示を出す。

「ソアとゴードは宿の確保だ。残りは俺と一緒にギルドだ、こいつをつれてな」

捕まえた男を引き立て、トールは表通りの入り口に向かう。その後を僕たちは着いて行った。


トールは受付に向かうと、部屋を借りられるか、受付と交渉を始めた。

「悪党を捕まえてきたんだが、すぐに治安部隊に突き出せない事情があるんだ。そいつを閉じ込めておける部屋がギルドにあったら貸してもらえないだろうか」

「地下室がお貸しできるかと思いますが…ギルマスの許可がないと…」

「すまんが、許可をもらってきてくれないだろうか。必要なら説明に言ってもいい」

「少々、お待ちを」


ソリトの町ではギルドの地下室が借りられた。結局、借りずにすんでしまったが…。この町のギルドでも貸してもらえるに違いない。ただ…ここはゾンデルの地元だ。ギルドの職員にもゾンデルに通じている奴がいないとも限らない。それと、ゾンデルの親父、この町の町長が問題だ。ゾンデルのやっていることを承知の上で放っているのなら、そいつも敵になるかも知れない。


しばらくして、職員が戻ってきた。

「許可がでました。こちらにどうぞ」


受付の案内で僕たちは地下室に行き、捕まえていた男を椅子に縛り付けた。猿ぐつわはそのままだ。テーブルがひとつ隅にあったので、そこにウェルナー氏とリーザさんを座らせ、念のためエマを残し、僕とトール、それにノアの3人でギルドの1階にもどり、ソアとゴードを待つことにした。



「ターニャちゃんの居場所がわかったらどうするの?」

僕は前にもこんなことがあったことを思い出していた。ゾルドバと戦ったときだ。コレトの町で、マークス商店のモルトさんが掠われて、悪事の証人と交換になったことだ。あのときは交渉の場でテレポートの奇襲で上手くモルトさんだけ取り返すことができた。こんども敵は証人とターニャちゃんの交換を持ちかけてくるだろうか。


「ギルドに連れてきたので、口塞ぎは難しいだろう。ターニャとの交換を持ちかけてくるかも知れんな」

「そしたらゾルドバの時と同じように、ターニャちゃんだけ取り返せば…」

ノアもコレトの町の事を想いだしたのに違いない。

「あのときは交換場所で事前に準備ができたからな。今度も出来るとは限らない。それに今度は証人だけじゃなく、相手はターニャちゃん自体が目的だからな。素直に交換するとは思えない。何か罠を仕掛けてくることも考えないと…」



ソアとゴードがギルドに入ってきた。宿が確保できたようだ。ここまでの事をふたりに説明し終わる頃にアリサがやって来た。


「やはり、ここにおいででしたか」

「ご苦労さん、で、どこに連れて行ったか判ったか」

「商店街にあるゾンデルの屋敷です。周囲は商店ばかりで、夜になれば住民はいません」

「なんで商店街に屋敷があるんだ」

「ゾンデルは卸し問屋を営んでいるようで、1階が店というか事務所になっています。2階と3階が住居で、ターニャちゃんは3階の部屋にいるようです」

「どうして3階と」

「忍び込んでみたところ、扉の前に見張りが立っている部屋がありました。他にそんな部屋はなかったので、そこに間違いないと思います」

「窓のある部屋か」

「いえ、表通りには面していない部屋です。建物の裏側にも回ってみましたが、その部屋の窓は確認できませんでした」

「通りに面していない部屋か…壁をぶち抜いてという訳にはいかんか」

「そんなことしたらターニャちゃんが危ないじゃない、トールはもう」

ノアの言葉にトールが苦笑いをしている。

「そりゃぁ、そうだな。忘れてくれ」


「ソア、宿まで案内してくれ。食事を出してもらえそうなら今夜は宿で食事としよう。部屋に基準点を設置するから。僕が帰るまでみんなはここで待っていてくれ。ウェルナーさんたちを連れて、歩きで移動するのは心配だから、テレポートで行けるようにしてくるよ」


少しおいて、僕たちは宿の部屋で夕食を食べていた。ギルドにはエマを残してある。寝る前に誰か交代に行かなければと思っていると、トールが

「もう少ししたら俺がエマと交代してくる。ミスター、すまんが送り迎えを頼むぞ」

と言う。ここはトールに任せることにしよう。


「あたしたちがここいることを知っているのかな?」

「心配するなノア、奴はこの町の有力者で、しかも町長の息子だ。奴に通じているのは町中にいるにちがいねぇ。当然この宿にもな」

「心配なんかしてないよー。じっと待っているのが嫌なだけ」

「まぁ、明日の昼まで待って何もなかったら、こちらから行動を起こすことにしようか」

「行動って?」

「そうだな、とりあえず奴の店に行ってターニャを返せって言ってみるとか…」

「おとなしく返すわけないじゃん」

「返すとは思っていないよ。ただ、相手の出方をみるだけさ。相手も目的はターニャだからな。いよいよとなるまでは盾にはしないと思う。そこがつけめだな。そうなる前に速攻で取り戻せればいいのだが…屋敷の中の状況がわかるまでは、こちらから仕掛けない方が良いだろう」


食事の後、トールをギルドまで送り、代わりにエマを連れて戻ってきた。食事をしている間に、エマに状況を説明する。


「アリサさんは戻っていないのですか?」

「戻ったきたよ。ゾンデルの屋敷にターニャが連れ込まれたのを確認してな。今はまたゾンデルの屋敷を見張っている。夜の間にターニャを移動される可能性もあるからな」

「アリサさんも大変ですね」

「あぁ、すまないと思っているよ。しかし、代われる者がいないからな…」


宿は男女別でふた部屋取ってあった。こちらの用心はノアに任せておけば大丈夫だろう。魔術師の感知は寝ていても有効だ。何かあればノアが気づくはずだ。




★★ 96話は2月2日00時に投稿


外伝を投稿中です

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王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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