表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/175

87 魔術師、留守の間に

すっかり凍り付いた左側の森をながめながら、魔力感知で確認する。さっきまで動いていた反応は動きを止めているね。まだまだ温度は下がるからね。じきに凍死するはずだ。


これなら山火事にならないもんね。あたしだって、ちゃんと考えているんだから。そう思いながらソアの方を見る。


どうよ、褒めてもいいんだよ。


「ノアにしては上出来です。火球でも放ったらどうしようかと…」


もう少し褒めてくれても…。そう思いながらソアのいる左側に魔法を撃とうとすると、

「駄目です。アリサが向かったのを忘れたのですか」

ソアに止められちゃった。


そうだった。アリサが森に入っていったんだ。感知してみると、反応が2つ。ひとつは有定として、山賊がひとり?そんな訳はない。もうアリサがやっつけちゃって、山賊の残りがひとりなのかな。


あれ、どちらもこっちに向かってくるよ。動きがゆっくりだから、戦っているようには見えない。いったい、どういうこと?


トールたちと睨みあってた山賊たちが、あたしの魔法で森が氷結し、反対側の森からの奇襲も始まらないのを見て、いっせいに森の中に逃げ込んだ。


なんで逃げちゃうのよー、根性なしがー

もう少し睨みあっててくれれば、あたしの魔法で全部まとめて吹き飛ばしたのに…

爆発系じゃないと、スカッとしないじゃない。

やっぱり山賊は許せないね。

ミスターが根城を見つけて戻ってきたら、問答無用で根城ごと吹き飛ばしてやるんだから。


ソアがトールに向かって叫んだ。

「アリサが戻ります。ひとり、着いてきています!」

それを聞いて、トールとエマがソアの元にやってきて、左側の森を警戒した。ソアはあたしの方に移動して、弓を構えてる。


反応の大きさから、アリサと一緒にいるのは魔術師じゃなさそうだ。

「魔術師じゃないよ。、魔法の心配はいらない」

あたしが叫んだとき、アリサが街道に姿を表した。


もうひとりは?


もうひとりは、街道の直前で横に移動すると、あたしたちから10メートルほど離れた位置で、森から出てきた。干渉魔法を警戒して、射程外で姿を現したに違いない。少なくとも、あたしたちを攻撃する意図はないね。剣士ひとりでは、魔術師を含む複数の相手には絶対に勝てないからね。


そいつは、両手をあげてゆっくり近づいてくる。アリサが迎えにいくと、トールも一緒について行った。


「何者だ」

トールが聞く。

「槍のキーファー、といっても知らんか…」

そう言いかけてエマに気づいた。

「氷のエマじゃないか…」

エマも気づいたようで、3人の元に行った。

「槍のキーファーが、なぜここにいる」

代わりにアリサが答えた。

「マスターにお話があるようです。キーファー氏はエンダーの友人です」


エンダーの名を聞いて、あたしだけじゃない、みんなが緊張したね。トールは剣の柄に手を掛けている。

「今のところ敵意はないようです」

アリサの言葉と、両手を挙げたままのキーファーに、トールも剣から手を離した。

「主殿に何の用だ」

エマの言葉に、驚いた様子だ。

「主殿?氷のエマと言えばエンダーの弟子ではないか。仇とも言える相手を何故主と呼ぶのだ」

「お前に答える必要は無い。もしも主殿に敵意があるならば…」

エマが一歩前に出て、槍を構えた。


肝心のミスターがいないときに、なんてやつを連れてくるのよ。

あたしも魔法を放つ構えに入った。


「エマ様、落ち着いてください。この男に敵意はございません。今のところは」

「今のところ?」

エマの言葉に

「はい、今のところはです。仇討ちのつもりはないそうです。マスターと話がしたいとか。エマ様の例もありますので、話し合いも良いかと思いご案内しました」


男とのやりとりを聞いて、

「エマの例っていっても、あいつは男だからねー。心配はないよね」

あたしがつぶやくと、ソアが

「心配って…何を考えているのよ、あんたは」

と言う。

「だって女だったら、またエマみたいなのが増えるかもじゃん」


あたしの考えとはうらはらに、前方では緊張感がただよいまくりだった。




★★ 88話は1月16日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ