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09 魔術師、護衛に参加する

「荷物を積み終わったら、こっちに集まってくれ」

トールに言われて皆があつまる。

「出発の前に打ち合わせだ。基本はいつも通りだが、今回からはミスターがいるからな。

ミスターに承知しておいてもらうこともかねて全員で確認するぞ、いいな」


「まずはミスターの役割だ、ミスター、登録したタイプは?」

「剣士ですね」

「普通は聞いてからパーティーにさそうよねー」

「黙っていろ、ノア。まぁ、用意してた武器がレイピアだからな、想像はついていた。魔法は使えないってことだな」

「あ、そのことなんだけどね…」

「使えますよ」

ノアの言葉を遮り、眼で、僕にまかせろと合図を送った。通じたかな…

「そりゃ凄い。ノア、どうだ、登録についていったよな。頼れるレベルか、ミスターの魔法は?」

僕の眼を見つめると、ひと呼吸置いて

「そこそこどころか、相当いけるかな」

「ノアが言うなら間違いないか、なんでタイプを魔術師で登録しなかったんだ?」

「それは…」

「なりゆきだよ、なりゆき!」


ナイスアシスト、ノア。

魔力がゼロだったからなんて言えないからな。


「右も左も判らないうちに、気がつけば剣士で登録されてました」

「レイピアは使えるのか?」

「レイピアは、そこそこというか初心者レベルだと思います」

「なるほど、街道で最初に出会ったとき、武器を持ってなかったのは魔法が使えたからか」


そういう訳ではないんですけどね…


「まぁいいか、その格好でレイピアを構えていれば魔術師と思われねえからな、相手の意表をつけていいかもな」

「魔術師は杖を持つのが普通なんですか」

「そうだねー、剣より軽いから非力な魔術師でも振り回せる」

「ノアの杖は頭の部分に大きめの宝石がついていますが、やっぱり魔力増強とか特別な効果があるんですか」

「そんなのないよー、おとぎ話じゃないんだから。これは飾り、今は赤い石が流行だね」

「そうなんですか、じゃ、防具も魔法が防げるみたいなものは?」

「聞いたことはないねー。あたしのは高級品でかなり頑丈だけど普通の防具だよ」

「…」


本当にここは異世界なのか…

魔法は確かにあったけど…

そういえば冒険者のレベルとかHPやMPの数値化とかの話をきかないよな。

宿でひとりのときに

「ステイタス」

とか

「オープン」

とか、思いつく限りやってみたけど、何も起こらなかったしな。

そういえば、ギルドで見た水晶玉以外に魔道具っぽいものも見かけていない。

さっきの荷物の話を聞くと、収納魔法みたいなのもないんだろうな。

あったらノアが使っているよなぁ、

自称どころか本物の天才魔術師なんだから。


「なにを考え込んでいるの、ミスター。ときどきおとぎ話みたいなことを言ったり、考え込んだりするのは記憶喪失のせいなのかしらね」

「そうだな、おとぎ話と現実が一部混乱しているようだ。はやく現実をちゃんと認識しないと」

「その通りですね、トール。ミスターの今後が心配です。わたしがいつも一緒にいて教えてさしあげる必要がありますね」

「心配ないよー、トール、ソア。あたしがずーっと一緒にいて、一生面倒をみるから大丈夫だよー」

「お子様が何をおっしゃっているのかしら、ノア」


また話がおかしな方向に…

早くこの世界の知識を学ぼうと決意を固めた。


「話を戻すぞ」とトール。

「馬車の前は俺とノアが歩く。ノアはいつも通り、索敵をやってくれ。後ろはソアとゴードだ」

「僕はどうしたら」

トールはちらっとノアとソアを見る。

「今回はタルトさんは馬車に乗らず馬で同行するそうだから、タルトさんと一緒に馬車の横についていてくれ。」


ノアがなぜか不満そうである…


「魔物が出たら、俺とノアで対処する。他の者は持ち場を離れないように」

「盗賊の場合は人数によるが、基本は同じで俺とノアで処理だ。ソアとゴードはミスターに合流し、馬車とタルトさんを守ってくれ。あとは臨機応変だ」

「わかりました」とソア。

「わかったー」とノア。

「了解しました」と僕。

「…」

ゴードさんは無言で頷いた。


「それからもうひとつ。重要なことだ。盗賊に出会って、もしも俺とゴードが倒れたらパーティーのリーダーはミスターとする」

「え、僕ですか」

「そうだ、そのことで後で話がある」

「いくらなんでも、無理ではありませんか」

「あたしはミスターでいいよー」

「これは相談じゃない。決定だ。黙ってしたがってくれ」

トールの言葉の強さにソアが無言で同意する。


「ところでミスターは人を殺したことはあるか?」

「人どころか魔物も殺したことはありません」

「経験が必要だな…。よし、もし単体の魔物に遭遇したら、ミスターに経験を積んでもらおう」

「どうすれば」

「決まってる、ミスターが魔物を倒すんだ」

「…」

「大丈夫だよー、街道沿いは弱いのしか出ないし、群れのときはみんなで対処するから」

「万一のときはわたしの回復魔法もあります」

「ソアの回復魔法はたよりになるよー、手足や首がもげたりしても死んでなければ大丈夫。ソアにかかれば元通りだよ」


いや、それ、首がとれた時点で死んでますから…

まぁ「トクギ」を使えば滅多なことにはならないけど。

問題は魔法に見えるように使わないといけないことか…


ソアが僕に近づいてきて耳元に口を寄せる。

「わたしの回復魔法はノアがいうほど強力ではありません。欠損はもちろん、命があっても致命傷や大怪我は治せません。ノアのいうことを真に受けて無茶をなさらないようにお願いします」

そうささやいて僕から離れていった。


打ち合わせが終わった頃に、タルト氏が馬に乗って現れた。

「みなさん、こんにちは。今回もまた護衛をお願いします」

「タルトさんの依頼ならば喜んでやらせてもらいます」

「おや、そちらにおられるのは、ええと、ミスター様ですね」

「はい、トールさんのパーティーに入れてもらいました」

「それはそれは」

「心配いらないよー、タルトさん。ミスターは凄くて頼りになるから」

「それはそれは、天才魔術師のノアさんがそうおっしゃられるのなら安心です。ということはミスター様も魔法を使われるのですかな。見かけは剣士のようですが」

「人は見かけによらないんだよ、タルトさん。ミスターの魔法を見たらタルトさんもビックリだよ」

「それは楽しみです。いや、何事もなくてミスター様の魔法を見る機会が無い方が良いのに決まっていますが」

「盗賊でも出てきてくれた方があたしは楽しいんだけどなー」

「おい、依頼者の前でそんな事を言うんじゃねぇ」

トールがたしなめる。

「まぁまぁ、それだけ皆さんが護衛として頼りになるということでしょう。準備がよろしければ、そろそろ出発したいのですが」

「いつでも大丈夫だ。打ち合わせ通りでいくぞ、配置につけ!」



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