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71 魔術師、ノアと話す

残念王女とのお茶会から帰って、宿で雑談をしている。この世界でこんな時間が持てるのは貴族か冒険者くらいだろう。あっ、元の世界でいうところの反社のチンピラも暇をもてあましているのかな…。商人も職人も、そして農民も皆働き者だ。働くしかやることがない。暇が出来ても娯楽がない。本も映画もTVもない。何かことあるごとに祭りになるのは娯楽のためなのだろう。


そんな雑談の合間に、王女の考えを聞いて浮かんだ懸念をノアに聞いてみた。


「以前に、都を吹き飛ばせるような魔術師がいるって言ってたよね」

「うん、国に数人くらいだね。あたしもそのひとりだよー、偉い?」

「帝国にもいるんだよね」

「当然いると思うよ。普段は国に管理されてるとかで、実際に都を吹き飛ばすやつはいないと思うけど。何のメリットもないし…」

「普段はともかく、戦争だったらどうだ?国に命令されたらやるんじゃないか。相手の魔術師が遠距離からそんな魔法を放ってきたらどうするんだ?」

「国の命令だからって、はいそうですかって訳にはいかないんじゃない?」

「どうして?」

「実魔法の射程は、あたしだって300メートルくらいだよ、都を吹き飛ばすレベルなら自分も巻き添えになっちゃいそうじゃない」

「それでも国のため、命を捨てる覚悟でやるやつはいるんじゃないか?」

「うーん、そうなると、近づけさせない仕組みをつくっているとか…」

「そんなの確実じゃないだろう。とてもじゃないが安心できないぞ」

「片方がやってくれば、相手もやり返すから共倒れになっちゃうよ。だからやらないんじゃないの」


MAD戦略。相互確証破壊ってやつか…。もとの世界でも、米ソ時代には冷戦てのがあったなと、歴史でならったことを思い出した…


「ノアだったら安心できるかい、そんなことで」

「うーん、考えて見るとやっぱり心配だね…。みんな考えないようにしてるんだね」

「王族がそんな安易な考えでいるとは思えないんだよね」

「じゃぁ、どうするってのよ」

「何か…王族だけが知っているような秘密の防衛手段があるのかもしれない」

「防衛手段って…」

「僕の障壁のようなものを都全体に張るとか、魔法を無効化するような魔法とか…」

「あたしの知る限りそんな魔法はないよ」

「あるとしたら厳重に秘匿されているはずだ」

「あったとして、第三王女は知ってるのかな」

「知らされていないと考えるのが普通だが…あいつは普通じゃないからな。面と向かっての戦闘力はないが、この国で一番可愛い…じゃない、一番恐ろしいやつかも知れん。防衛手段についても何か知っているかも知れん。そうでもなければ、あんなアホなプランは成り立たない」

「皇女と打ち合わせて準備ができたらまたお茶会に招くって言ってたけど…」

「すぐには無理だろう。クレアの方も帝都にもどって準備があるだろうし」

「待つしかないかー」

「そうだな」

「トールたちにも話しておいた方が良くない?」

「巻き込んじゃうからな…話すにしても準備が整ってからにしようか」

「そうだね…」


ここで、ソアとアリサがやって来て雑談に加わってきたので、ノアと話してたことを2人にも話した。

「わたくしの知る限り、そのような魔法が存在するという話は聞きません。公爵様もご存じないと思います」

アリサの言うことだ、間違いないだろう。あったとしても王だけが知っているのかもしれない。

「でも、そんな魔法があったとしても常時発動しておける魔術師がいるとは思えないのですが」

ソアが疑問を口にした。もっともだ、常時発動されてなければ意味がないからな。

「それに、現にこうして王都、それも中央区にいるわけですが、何らかの魔力が発動している感覚はありません」

「ソアの言うとおりだねー。王城にいたときも魔力の発動は感知できなかったよ」

「魔術師の魔法じゃないとすると、何か他に可能性はあるのか。そういえば軍やギルドが通信に使っている装置があったよな。その手の道具の類なのかな」

「ギルドの魔力測定器もそうですね。あれも魔道具です」

「魔道具か…あまりというかほとんど見かけないが、他にもあるのか」

アリサが答えた。

「魔道具はすべて厳重な管理下にあります。一般人に入手は不可能です」

「でも職人が作っているんだろ。横流ししたら…」

「魔道具はすべて古代の遺物です。今の世界では作れません。例の曲玉は例外ですが、素材が飛竜の魔力臓器の化石ですから古代遺物と変わりません。発見されたものはすべて王家の所有です」

「ギルドのやつは?」

「古代遺物はそのままで使えるものではありません。どんな効果があるのか、そもそも今でも動作するのか、それを王家直属の理論にすぐれた魔術師が研究と実験を経て使い物になります。個人が密かにできることではありません。ギルドの魔力測定器は王家から与えられているものです。あれも本来の使用法なのかどうか分かりません。たまたま魔力の測定に使えるというだけの話です。実はとんでもない兵器だったとしてもおかしくはありません」

「なるほど、密かに発見して持っていても、それだけじゃ使えないってことか…。それで、王家が独占した魔道具の中に防衛に使えるものがあったという可能性もあるのか…帝国も同じかな」

「ここで議論していてもしょうがないよー。あいつに聞いてみればいいんじゃない」

「そうだな…」


ノアの一言でこの話はおひらきとなった。


ソアとアリサが席を離れ部屋に戻った。僕とノアが残され、無言の時間が過ぎていく。しばらくしてノアが言った。

「クレアのことが好きなんだよね…。あたしよりも?それにあいつ、第三王女は?」

僕が無言でいると

「あたしも部屋にもどるね」

そう言って席を立った。部屋に向かって歩き始めたところで立ち止まり、こちらを見ることもなく小声でつぶやいた。

「でも、クレアは皇帝の命令で、あいつは王の命令で求婚してるだけ。そんなのでいいの、ミスターは…」

僕の返事を待たず、ノアは部屋に戻っていった。



★あとがき(撮影現場にて)★


ノア:「いったいどういうことなのよー」

いきなり何だい。

ノア:「指輪のことよ」

指輪がどうしたって?

ノア:「今日になったら、みんながあれはあたしのいたずらだって言っていて…。あんた、なんか言ったの?」

何も言わないよ、ソアと話しをしただけだよ。

ノア:「それよ!ソアがみんなにあたしのいたずらだって言いふらしてるに違いないわ」

どうかな…そんなことをするようには見えないが…

ノア:「本人に聞いてみるから!」

あ、今日の分の弁当は…

ノア:「今日は作ってなんかきてないわ、ロケ弁でも食べてればいいのよ」

ロケ弁って…もうノアが僕の分もさっき食べちゃったじゃないですか…あぁ、行っちゃった…



★★ 72話は12月6日00時に投稿

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