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31 魔術師、アリサと再会する

僕はいま都の宿に帰る途中だ。


「どうなさるのですか」とソア。

「どーするのかなー」とノア。

「どうしよう…」と僕。


先ほどまで公爵と会っていた。


アルプの町の森にドラゴンが現れた形跡はなく、代わりに飛竜を3頭討伐したこと。飛竜の営巣地まで行き、異状がなかったこと、そして間違いなく営巣地まで行った証拠として飛竜の卵を持ち帰ったこと。目撃証言はおそらく飛竜の目撃を針小棒大に伝えたものであろうということ。これらを僕らのパーティーのリーダーであるトールが公爵に報告した。


飛竜の卵を持ち帰ったことを公爵はことのほか喜び、約束以上の報酬をもらえることになった。殻の破片は別にして、卵そのものの入手など、ここ100年間なかったことだという。報酬の額を聞いてトールは大喜びしていた。公爵の馬車で中央エリアの出口まで送ってもらい、検問されることなく商業エリアに戻ってきた。今回の極秘の依頼の報酬は牙の依頼の報酬としてギルドに支払い済みだと公爵は言っていたので、早速。トールとゴードはギルドに報酬を受け取りに行った。牙の入手の報酬にしては余りに巨額なのでギルドのマスターも驚いていることだろう。しかし宮廷からの報酬なのできちんと支払われることは確実だ。


問題はアリサである、公爵の家をでるとき一緒についてきたのだ。公爵が僕への報酬として与えると言っていた奴隷の少女である。僕の後ろからメイド服姿でついてきている。


「解放するんだよねー」とノア。

「解放してさしあげるのがよろしいかと」とソア。

「そうだよね…」と僕。


ノアたちが僕に迫る。僕は振り返ってアリサに聞いた。


「アリサはどうしたいの」

「ミスター様がわたくしのマスターです。そのマスターのご意思がわたくしの意思です」

「ええと、奴隷から解放しようと思うのだが…」

「マスターの御心のままに」


「よーし、奴隷商のところに行って解放しようー」とノア。

「そういたしましょう」とソア。


ノアに案内されて奴隷商のところに行った。以前に行った市民エリアの店ではなく、商業エリアにある事務所だという。奴隷の解放はそこで手続きを行っている。店に着いてアリサの解放を依頼する。手数料の金貨3枚を支払い、洗脳の解除を行ってもらう。解除には一日かかるという。アリサを預けて宿に戻った。



翌日、ふたたび奴隷商の事務所にいく。ノアとソアも一緒だ。事務所で用向きを伝えるとすぐにアリサを連れてきた。昨日と同じメイド服である。洗脳の解除は終わったという。腕を見ると奴隷商の腕輪をしていない。解放されたのだ。


「アリサちゃんは自由だよー。何にでもなれるし、どこへでもいけるんだよ」

「ノアの言うとおりだ。好きなものになれるし、好きなところに行ってもいいんだ。君は自由になったんだ」

「わたくしは自分のすきなものになって良いのですか、好きなところに行けるのですか?」

「そのとおりだ。君の自由だ。若くて美しく、マナーも教養もあり家事能力もある。何にでもなれる。何をしてもいいんだ。誰にも止めることは出来ない」

「わかりました。わたくしを解放していただきありがとうございました、マスター」

「もう奴隷じゃないんだ。僕をマスターと呼ばなくてもいいんだよ」

「たった今、わたくしは何をしてもいいとおっしゃいました。マスターと呼ばせていただきます」

「いや確かに言ったけど…」

「何にでもなれる、誰にも止められないとおっしゃいました。わたくしはマスターの妻となります」

「そ、それは…」

「そんなのダメー!」とノア。

「第三夫人なら…」とソア。


僕の言葉を盾にして、アリサは言葉を翻さない。未成年は妻にはなれないというと、16歳だという。ノアと同じか。優柔不断な僕は、とりあえずアリサの希望は聞いたからと言ってこの場を取り繕い、結論を先に延ばした。


宿にもどるとトールとゴードが待っていた。


「アリサさんは解放できたのか」

「はい、洗脳を解除してもらいました」

「そいつはなによりだ、で、アリサさんはこれからどうするのかな」

「はい、わたくしはマスターの妻となりマスターに仕えさせていただきます」

「おい、解放したんじゃないのか?」

「まちがいなく解放して洗脳を解除したのですが…」

「そうか、アリサさんを妻にするというのなら、そのことに文句は言わねえ。しかし、ソアとノアはどうするんだ」

「あたしもミスターと一緒になるよー」

「第一はノアに譲ります。わたしは第二で…」

「そうだな、今決めねえとアリサさんが第一ってことになっちまう」


まだ何も決まっていませんが…


「よし、決まりだ。ミスター、それにソア、ノア、冒険者は辞めるよな」

「冒険者は続けるよー、ミスターと一緒に」

「わたしもまだ冒険者を辞める訳にはいきません」

「そういうことなら、今のところは婚約ということだな。アリサさんもいいかな」

「マスターが望むなら、それがわたくしの望みです」

「おい、本当に洗脳は解除されてんだろうな…。それじゃ、第一がノア、第二がソア、第三がアリサさん、これでいいな、ミスター」


トールさん、酔っていませんか…

剣に手を伸ばさないでください。


「…は…い…」

「よし、これで決まりだ。あとは冒険者を出来るだけ早く引退するだけだな」

「それでは、わたくしもこの宿に部屋をとります。マスターとご一緒でよろしいでしょうか」

「それはダメー。アリサも一人部屋で!」


常に僕の側で仕えるというアリサの主張に負け、冒険者の登録をしてパーティーの一員に加えることになった。驚いたことにアリサも公爵の護衛のひとりだった。そう、戦闘メイドだったのだ。ソアが武器防具を買いに行きましょうというと、今のメイド服のままが良いと言う。冒険者のタイプはと聞くと格闘だという。武器はと聞くと、メイド服のどこに隠し持っていたのか、小さめのトンファーのような武器を取り出した。さらに弓と投擲に心得があり、暗器もいくつか隠し持っていて、毒にも詳しいという。トールが闘いの経験はあるのかと聞くと、あると答えた。人を殺したことはと聞くと、しばしの間をおいて無言で頷いた。


それって、護衛じゃなくて実は公爵家の暗殺者だったってことじゃね…


★あとがき(撮影現場にて)★


ノア:「やっぱりー、こういうことになるんじゃん!」

ええと、このあと続く戦闘シーンに変化をつけるために…

ノア:「あたしより活躍してるんじゃない?」

ノアさんがいいところで二人を助けて主人公の勝利に貢献する場面もありますし…

ノア:「ところで、今気がついたんだけど、脚本に気になることが…」

なんでしょうか?

ノア:「あたしが致命傷を負うと」

それが、なにか?

ノア:「まさかあたしをお払い箱にしてヒロイン交代なんてこと考えてたりしないわよね」

そんなこと、あるわけないでしょ。それはむしろ主人公との仲がさらに進むエピソードになる予定なんですから。

ノア:「ほんとでしょうね?」

ほんと、ほんと。まだ少し先の話ですから、今からネタばらしをしないでくださいよ。

ノア:「うそだったりしたら、ここに居着いてロケ弁全部たべちゃうからね」

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