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26 魔術師、アルプの町に向かう

翌日の午後、宿の大部屋で5人そろって迎えを待っていた。


「昨日は奴隷商の店にいったんだって、ミスター」

「えぇ、ノアに案内されて」

ソアが顔をあげて僕を見つめた。

「速攻で帰ることになったろ」

「ええ、トールさんと同じですね」

トールは苦笑し、ソアは微笑み、ノアは大きな声で笑っている。

「たっぷり稼がないといけませんね」


ソアさん、店の人と同じ嫌みを言わないでください…


あれこれ意味の無い雑談をしていると、ドアがノックされた。

「お迎えの馬車が参りました」

ドアを開けると、昨日部屋に案内してくれた従業員だ。つい左手の腕輪に目がいってしまう。

「さて、出かけるとするか」

従業員の案内で宿の正面でまつ馬車まで移動する。いつもの冒険者としての装備に武器だけを携行する。武器を使うようなことはありえないと思うが、冒険者としては持たずに行くことはない、たとえ宮廷でも。


迎えの馬車は、軍用の質実剛健さとはかけ離れた華奢なものだ。扉には大きな紋が描かれていた。御者はドアをあけて待機していた。僕らが姿を見せると深く礼をした。

「どうぞお乗りください」

内部は豪華な座席が対面になっている。前の座席にトールとゴア、後ろに僕とノア、それにソアが無言で座る。

「それではご案内させていただきます」

そういって御者が扉を閉めると、一時の間を置き動き始めた。


中央エリアの入り口も止まることなく通過する。

「王家の馬車だからな。扉にあった紋は王家の家紋だ。依頼主は宮廷魔術師のはずだが、王家も関わっているにちがいない」

「みなさんは中央エリアに来たことはあるのですか?」

僕が尋ねると、ソア以外はそろって首を横に振った。


馬車は道を何度も曲がり、ほどなく大きな屋敷が見えてきた。門から屋敷の入り口までは庭になっていて木々が植えられているが、それほど広い庭ではない。僕の出た小学校の校庭より狭い。市民エリアや商業エリアでは、広場はあっても庭のある家は見かけなかった。壁に囲まれた都では土地こそが最も貴重な財産なのだろう。


突き当たろうかというタイミングで門が開けられ、馬車は速度を緩めることなく屋敷の前まで進み、そこで初めて止まった。屋敷の扉が開き、10人ほどのメイドが左右に並んだ。続いて執事と従者らしき男が奥から登場し、馬車の扉の前に立った。従者が扉を開けてひざまずく。


「お待ちしておりました。下車願います」


ノアが真っ先に降り、僕らもつづいた。


「当家の執事、セドと申します。これから主人の元にご案内いたします。その前に皆様の武器を預からせていただきます」

メイドたちが近づいてきた。予想されたことなので素直にメイドたちに武器を渡す。

「それではわたくしの後に続いてください」


言葉は丁寧だが、ずいぶん偉そうな態度だな…

冒険者を下に見ているのがありありだ。


執事が向きを変え、屋敷のなかへ入っていく。両側に並んだメイドは頭を下げ、僕たちが通り過ぎると、僕らの武器を抱えて後ろから着いて来た。正面の扉の先は天井の高い広間になっていて、正面の左右に広い階段がある。


映画で見た金持ちの屋敷のようだ。

どこの世界でも変わらんな…


その階段を上り、通路の奥にすすむと重厚なドアがあり、その前で執事は立ち止まった。ノックすることもなく声を掛ける。


「お連れいたしました」

「入ってもらえ」

返事があり、執事がドアをあけ、脇に寄って道を空ける。

「どうぞお入りください」


奥行きのある大きな部屋だ。正面の机の向こうに男がひとり立っていた。机の前に大きなソファが2つ、男から見てハの字の形に置かれている。

「ソファに座り給え」

目の前の男より先に座ってもいいのかなと思ったが、執事がかすかにうなずき、トールがソファに座った。みんなもトールに続く。いつもの組だ。右にトールとゴード、左にノアとソア、その間に僕。

僕たちが座ると、メイドたちが僕らの両側に分かれて立った。執事はドアをしめ、男の隣に並んだ。


「宮廷魔術師の長であらせられるヤノフ・ド・レミントン公爵様をご紹介いたします」

「ヤノフ・ド・レミントン公爵である。よくぞこられた」

そう言って公爵も椅子に座った。


初めて会う冒険者を前にして貴族が護衛なしってありえない。

こちらは5人、護衛が執事一人だけってことはないよな…

どう考えても両側の可憐なメイドたちが護衛に違いない。

戦闘メイドか…

異世界になってきたぞ…


「冒険者の方々を紹介させていただきます。左からトール様、このパーティーのリーダーでございます。次がゴード様、隣の席が順にノア様、ミスター様、ソフィア様でございます」


この執事とは面識はないはずだが、僕らのことをよく知っているな。

どこで調べたのだろう。

油断のならない男だ…


「おお、その方が薬師を救出したソフィア殿か、これほど美しい御仁とはおもわなんだ。その隣が救出に協力した従者であるか」

「従者ではありません。わたしたちのパーティーの一員で、仲間です」

「そうであったか、聞いていた話に少々間違いがあったようだ。ミスター殿には謝罪いたす」


態度は偉そうだが、冒険者にもちゃんと謝ることが出来る人物のようだ。


「ノア殿の名声も聞いておるぞ。冒険者でありながら宮廷魔術師に匹敵する大魔術師がこれほど可憐な少女であったとは。それにソフィア殿やノア殿を率いるリーダーであるトール殿、そしてゴード殿もハンターを目指せるような偉大な冒険者に違いあるまい」


お世辞のつもりなのか…

ずいぶん持ち上げているな。

あれ、よく考えると謝られはしたけど、

僕だけ褒められていない気が…


「さて依頼の説明をする前に茶なぞいかがかな、皆の到着を聞き、ここに茶を運ぶように給仕に命じてある。そろそろ運ばれてくる頃合いだ」

まさにそのときドアの外から声がかかった。


「お茶をお持ちいたしました」


執事がドアをあけると、ノアと同じくらいの歳に見える少女がワゴンを運び入れ、覆いをとり、給仕を始めた。ノアも可愛いがそれ以上の美人で、気品も感じられる。僕の前にカップを置き、ポットから茶を注ぐとき、その腕に宿の従業員と同じ腕輪をしていることに気がついた。腕輪を見つめる僕を公爵がめざとく気づき、口角をあげた。


「ミスター殿は奴隷に興味をお持ちか、それともその娘にかな」

「いや、それは…」

「隠さなくとも良い。そうだ、こうしよう。今回の依頼が首尾良く完了したあかつきには、パーティーへの報酬とは別に、ミスターにその娘を進呈しよう。その娘は男爵の三女であったが、事情により今はわしのもとにおる。奴隷と言っても昔とはちがって主人の好きにできるわけではない。身は清いままであることはわしが保証する。マナーはもちろん料理など家事一般はしつけてある。妻として娶るのにも申し分ない娘だ」

「冒険者の身ですから、僕の身には余ります」

「気にいらなければ解放すれば良い。奴隷商に洗脳の解除を申しつければ良い。そうしよう、決めたぞ」


勝手に決められてしまった…

どうしよう…


「聞いていたなアリサ」

「はい。仰せの通りに」

給仕をしながら娘が答える。全員分の給仕がすむと、ワゴンを押して部屋を出て行った。


茶を飲みながら公爵の話を聞いた。


この都の北方50キロほどに雪をたたえた山が連なっていて、その山頂にはドラゴンがすむと伝えられている。その山の麓にあるアルプという町の住民のひとりが山の麓の森でドラゴンを見たと言い出したのだ。その人物はいつも酔っ払って大言を吐くことで有名で誰も信じようとはしなかったが、その村人はすぐに軍に確保され、関係者には箝口令がしかれた。万一にも事実であれば大災厄にもなりうるドラゴンである。軍は厳しく取り調べたのだが、恐ろしさの余りか精神に異常をきたしていて、真実は不明だとか。


その山の中層には飛竜が多く生息しているので、たまたま裾野に降りてきた飛竜に遭遇しただけではないかというのが軍の調査の結論だった。飛竜も恐ろしい魔物であるが、さすがに災厄というほどではなく、冒険者でも討伐可能だ。しかし貴族、とりわけ北方に領地をもつ貴族たちが安心できないと主張した。森にドラゴンがいるかいないかも不明ではハンターに討伐依頼をだすこともできない。そこで調査をすることになったわけだ。我々が選ばれたのは軍からの強い推挙があったからだ。あの司令官に違いない。


「ドラゴンの調査と言うことは秘密にしなければならん。もしも国がドラゴンの調査を始めたなどという話が広まれば、ドラゴンの話に真実みが出てアルプの町から住民が一斉に避難し始めかねん。アルプの町の産業は国にとって極めて重要でな、そんなことが起こっては困る。そこでギルドには飛竜の牙の採取という依頼を諸君への指名で出しておいた。表向きはその依頼のために出かけることになる。調査の目安は一ヶ月だ。ドラゴンの存在、あるいは非存在の証拠があれば申し分ないが、なにしろ伝説のドラゴンだ、諸君の証言だけでもかまわん。信用するに足る詳しい報告を頼むぞ。当然ながら軍の支援はできん。軍が一緒に行動すればあやしまれるからな。」


話を聞き終わり、訪問したときと逆の手順で屋敷から宿に戻った。屋敷の入り口では執事に並んで、アリサという娘が頭を下げていた。


宿の大部屋にもどると、トールはすぐに飛竜の指名依頼を受けにギルドに向かった。トールの帰りを待つ間、僕たちはようやく一息つくことができた。いつも騒がしいノアも、さすがに公爵の前では軽口をたたかなかったが、ようやく緊張が解けたようだ。


「さぁ、ミスター、頑張ろうねー。頑張ってアリサさんを解放してあげよー。絶対に解放だよー」

「そうですね、アリサさんのためにも、ここは解放して差し上げるしかありません」

「妻に…」

「だめー」

ゴードがノアに蹴られている。

「でも、どうしてもと望まれるならば三番目であれば…」

「そんなこと言ってたら、どんどん増えちゃうよー、エリカさんとかケートさんとか」

「エリカさんはともかく、ケートさんにその気はありませんよ」

「ケートさんになくてもミスターの方に…」


いったい何を言ってるのかなー…



トールが戻ってきた。


「依頼を受けてきた。明日出発するぞ。今日のうちに準備をしてくれ」

「いつだって準備はできてるよー」

「飛竜の牙の依頼ですが、本当の依頼を隠すためとはいえ、報酬は決められていると思いますが」

「ソアの言うとおりだ。見せかけの依頼とは言え、報酬は出る。左右の牙1組につき金貨500枚だ。しかも他の部位は好きにしても良いという条件だ。つまり飛竜を一匹倒せば金貨500枚以上が稼げるということになる。なにしろ今回はミスターの倉庫が使える。金になる部位を捨ててこなくてもすむぞ」

「飛竜というのはてごわい魔物だと思いますが…」

「そのとおりだ。しかし今度の調査をする地域は飛竜の活動地域と重なっている。調査をすれば飛竜と遭遇する可能性はたかいからな、嫌でも倒すことになりそうだ」

「ドラゴンがいたら、飛竜はみんな逃げてるんじゃないかなー」

「飛竜はドラゴンの餌だからな。いるはずの飛竜がいなければ、ドラゴンがいるという可能性が強い。それも調査の成果ということになる」

「すみません、その飛竜というのはどんな魔物なんですか」

「ミスターは知らなかったのか。ドラゴンと同じ竜種の魔物だ。ほんもののドラゴンとは比較にはならんがな。ずっと小型で翼を広げた差し渡しで5メートルくらいだ」

「それで小型なんですか?」

「翼が大きいだけで、本体はオークとさほどかわらんぞ」

「僕はないのですが、みなさんは飛竜を討伐したことはあるのですか?」

「何度かあります。そのときは討伐そのものが依頼でした」

「飛竜は空を飛ぶのでやっかいな魔物だ。特に空中からのブレスが危険だ」

「ブレスというのは」

「飛竜が使う魔法だな。口から炎を吐くように見えるが、体内からだしている訳ではない。魔術師と同じで魔力で炎を作り出している。ついでに空を飛ぶのも翼ではなく魔法で飛んでいるらしい。翼は単に向きや上昇下降をコントロールしているだけだと言われている」

「空から落としちゃえば簡単だよー」

「ノアの言うとおりだ。魔法か罠を使って地上で戦うのが基本だ」

「町の住人が見たというドラゴンというのは?」

「大型の竜種をひっくるめてドラゴンと言っている」

「真竜、雷竜、炎竜、地竜…」

「ゴードの言うとおり4種が知られている。炎竜というのは大型の飛竜だと思えば良い。強さは桁違いだがな。雷竜は見かけは炎竜によく似ているが、ブレスが炎ではなく雷だ」

「雷竜と炎竜は同じ種だという説もあるんだよ。つまり同じ竜が雷のブレスも炎のブレスも吐くんだって話だね」

ノアが怖いことをいう。つまりどんなブレスが来るか、決め打ちできないってことになる。


「ブレスを吐こうとした時、どちらのブレスが来るか吐く前にわかる?」

「口の中で発動しはじめた時点で分かる。でも分かってから発動までの時間は一瞬だよ」

「炎と雷以外のブレスはあるの?」

「討伐したってこと事態、めったにないし、確認されているのが雷と炎ってだけじゃないかな。魔法なんだから理論的には魔術師が使う実魔法と同じだけ可能性があると思うよ」

「地竜というのは?」

「竜種のなかで唯一空を飛ばない。翼はあるが広げることはない。飛ばない代わりに地中に潜ることが出来る。動きは遅い。大きさは炎竜と飛竜の間くらいかな」

「地竜もやったことあるよねー」

「ああ、一度だけだが。ブレスは吐かないが、前脚、噛みつき、尾を使った攻撃が強力な上、魔法に対する耐性が強い。接近戦をさけ、時間をかけて討伐する必要がある。他のドラゴンと違って飛竜と共存している。生息地域が飛竜と重なっているので、飛竜を討伐するパーティーからは嫌われる魔物だ。うっかり遭遇すると長期戦を強いられるからな」

「真竜というのは?」

再びトールが答える。

「伝説のレベルだな。討伐したという話は聞かない。そもそもここ数百年、目撃すらされていない。太古の記録に残されているが、他のどの竜種よりも巨大で、国を滅ぼす災厄だそうだ。本当のことかどうかは疑わしい」

「なるほど、なんとなくイメージがつかめました」


翌朝。トールとゴードは早くから宿を出てアルプの町へ行く手配をしている。ノア、ソア、そして僕の3人は少し遅れて商業エリアにある広場に向かった。


広場に着くとトールがこっちだと手を振っている。そばには大きな馬車が止まっていた。


公爵が言っていたようにアルプの町はこの国の重要な産業を担っている。人々の往来も多く、10日ごとに乗り合い馬車がでているのだとか。ここはその乗合馬車の停車場だ。4頭立ての馬車で、馬に乗った護衛が4人ついている。4人は依頼で護衛をしているのではなく、乗り合い馬車を運行している商人に常時雇われているそうだ。片道6時間ほどかかる。公爵が50キロほど北方と言っていたので時速8キロくらいということになる。遅いように感じるが西部劇でおなじみの駅場所も同じくらいの速度なので、馬車はこんなものなのだろう。何しろ舗装道路と言うわけじゃないからな。軍の馬車と同じように、車体の下に予備の車輪が積まれている。野営のための薪などは必要が無いので、かわりに水の樽がいくつかくくりつけられている。馬車は8人乗りで御者は二人だ。荷物は屋根の上に載せるようで、すでに2つほどトランクが載せられてあった。


「代金は俺が払っておいた。すぐに乗ってくれ」


トールに促されて馬車に乗り込む。荷物は御者が受け取って屋根の上に載せている。走っているうちに落ちるんじゃないかと心配になったが、全員分を受け取るとロープで固定していた。


トランクから想像したとおり、すでに乗客が二人乗っていた、4人ずつ向かい合わせの席である。乗客は二人とも女性だったので、ノアとソアがその隣に座り、男性陣が向かいの席に座った。乗客はこれで全部のようで、すぐに出発となった。護衛が先導し、動き出した。


商業エリアと市民エリアを隔てる壁を通過する際に、兵士が馬車の扉をあけ、カードの提示を求めたが、特にトラブルもなく通過できた。市民エリアを抜け、都の出口につく。来たときと違って、商人用の門だ。こちらは御者のひとりが番兵に何かを示しただけで外に出ることが出来た。そとには何台かの馬車が都に入るために検問をまって並んでいる。堀を渡る橋は馬車がすれ違えないので、交互に一台ずつしか出入りが出来ない。幸い都をでる馬車はこの馬車一台だったのでさほど待つ必要はなかった、徒歩の通行者は別の番兵が検問をして次々に橋を通過している。馬車がL字形に曲がった部分を通行するときは大変で、歩行者も離れて待っている。橋を渡ってしまえば、アルプの町までは整備された街道が通っている。先日のルキアの森までの馬車を思って覚悟はしていたのだが、はるかに揺れは少ない。街道の整備がしっかりされているということか。


馬車の旅はひたすら揺れに耐えるだけである。

スマホがない、ネットがない、本もなければ雑誌もない。

何にもない。異世界なんて嫌だ!


いつもであればノアがはしゃぎまくって退屈などする暇はないのだが、今回は二人の見知らぬ同行者がいるせいか静かにしている。同行者はどちらも20台半ばに見える美しき女性である。しかし、タルト氏から教えてもらったことだが、この世界の人々は200年の寿命を持ち、おまけに人生の大部分を20台の姿で過ごすというファンタジー世界である。実際の年齢は分からない。依頼主の公爵も、話しぶりからは結構な年配者に思われるが、見かけは30半ばだった。目の前の女性も本当は100歳かもしれない。この世界の住人であるノアたちにはこの二人の女性の実年齢の見当がつくのだろうか。


1時間ほどたって、ついにノアが退屈に耐えかねたのか、同行者に話しかけた。

「ねぇ、あたしたちはアルプまで飛竜の牙を取りにいくんだけど、お姉さんたちは何しに行くの?」

一人が答える。落ち着いた雰囲気の女性だ。

「やはりお見かけしたとおり冒険者の方でしたのね。わたしはアルプの町の郊外にある鉱石工場まで行くところです」

もうひとりの派手な服装の女性も話に乗ってきた。

「あたしは町の酒場に雇われたんだ。踊り子だよ。そっちのお兄さんたち、アルプについたら是非見に来ておくれよ、リーザって名前ででてるから」

ノアがきっかけをつくってくれたので、僕も話に参加することにした。

「鉱石工場というのは何を作っているのでしょうか」

「わたしの夫がそこの主任技師をしているのです。わたし自身は工場のことは良くしりませんの。あ、申し遅れましたが、わたしはアリアナと申します」

「では何しにアルプへ?」

「先月から夫がアルプに派遣されているのですが、一人住まいに耐えかねてわたしを呼び寄せたのです」

「仲がいいんだー、きっと寂しかったんだねー」

「とんでもない。家事に耐えかねて、わたしに身の回りの世話をさせようというこんたんですわ」

そういって微笑んだ。まんざらではないという表情である。


一方、トールたちは見ないふりをしているが、リーザさんに視線を奪われている。リーザさんも二人の視線に気づいたのか、きれいな脚を組み直してあからさまに二人の注意を引いている。


「鉱石工場は順調なんですか?」

「最近になって飛竜が何度か工場の近くの森で目撃されて、職人たちが不安がっているという話ですわ。みなさんが飛竜を退治してくださるとよろしいのですが」

「まかせてー、何匹こようと大丈夫!」

「たのもしいこと。是非おねがいしますね」


★あとがき(撮影現場にて)★


ノア:「ちわー」

今日は早いですね。ロケ弁の配布はまだじゃありませんか。

ノア:「今回はアクションなしで、みんなが台詞をとちらなかったので一発テイクで早く終わったのよ」

なるほど。

ノア:「それでロケ弁の配布も早かったのよ」

え、僕のとこにはまだ来てませんが…

ノア;「あ、ADさんがここに届けるって言ってたから、あたしがついでに持って行くよって言ったら、お願いしますってことになってね」

…それで、僕の分は?

ノア:「無駄なく美味しく頂きました」

昨日も今日も昼抜きなんですが…

ノア:「そんな小さな事にこだわらないでね。それよりも例の娘よ、えと、役名はアリサだっけ、台詞のあるメイド」

ノア:「あれ、どうみてもヒロイン枠に追加されそうだよね」

あー、どうでしょう。公爵様の冗談ってことも…

ノア:「やっぱり何か裏取引が…」

そんな訳ありませんよ。この先ノアさんがヒロインの座をさらに固めていく流れなんですから…

ノア:「そうなの、ほんとに?」

あ、ほら、呼ばれていますよ。次の回は短めなので今撮影しちゃうんじゃないですか。

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