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22 魔術師、倉庫を持つ

翌朝、支度をととのえて宿の部屋をでる。ソアとノアが宿の一階で待っていた。


「こっち、こっち、遅いよー」

「トールとゴードは先に出ました。依頼を見繕っておくそうです」

「すまん、出かける前にちょっと部屋でやることがあったので…」

「じゃ、いこーかー」


ギルドの前に着くと、トールたちが僕たちを待っていた。

「中で話をしよう」

壁際のテーブルに座ると、トールが話し出した。


「また指名依頼があった」

「人気者だねーあたしたち」

「指名はパーティーだが、ソアが目当てのようだ」

「軍ですか?」

「似たようなものだが、違う。薬師を助け出した件を聞いて、宮廷魔術師のトップがソアに依頼をだしたようだ」

「貴族ですか…」

「ミスターのデタラメ話のせいですよ。気が進みませんね」

「そうは行っても宮廷筋の指名を断るのは難しいぞ」

「都にいけるよー」

「ミスターのご意見は?」

「依頼の内容はどんなものなのでしょう」

「魔物の調査だ、受ければ遠出になる」

「討伐ではないのですね。どうして軍にやらせないのでしょう」

「調査相手はハンター級の魔物だ」

「ハンターに頼めばいいのでは、どうして僕たちに」

「それらしき目撃証言があったのだが、あまり信用できる証言ではないそうだ。与太話の可能性が高く、引く受けるハンターがいないようだ」

「調査というのは具体的には?」

「目撃証言を確認する。本当にいるのかどうか、それさえ判ればいい」

「その魔物の特徴や強さなどは調べなくてもいいのですね」

「依頼書にはそうある」


自分がなりたいとは思わないが、ハンターという冒険者には興味がある。

それ以上にハンター級の魔物にも。

それに王都にも行って見たいかな。

せっかくの異世界、あちこち見て歩きたい。


「僕は興味がありますね」

「ミスターが反対でなければ、わたしはかまいません」

「わーい、王都にいけるー」

「任せる…」

「決まりだ。受けることにする」


トールが受付に行き、依頼の受諾を伝えた。


戻ってきて僕らに説明する。

「この町の軍司令部に顔を出して欲しいそうだ。王都までは軍が送ってくれる。費用はすべて軍が持つ。豪勢な旅ができるぞ」

「王都まではどのくらいかかるのですか」

「軍の馬車で10日ほどだ。今の宿は引き払う。留守の間の部屋代がもったいないからな」

「僕の部屋は借りたままにできますか」

「留守の間の宿代を先払いしておけば出来るが、もったいないぞ。王都に着いた後、調査に出かける。それがどの位かかるかわからんぞ」

「多めに見積もって先払いしておきます。先日の軍の依頼でかなり稼げましたから」

「それなら好きにすればいいさ」

「留守をいいことに、部屋を勝手に使われたりしませんかね」

「あの女将は信用できる。そんな心配はない。しかし、なんで留守中も借りつづけるんだ?金が無駄になるだけじゃないか」

「王都への旅の途中で訳を話しますよ。無駄ではないと思いますよ」

「是非聞かせてもらいたいものだ。それじゃ宿に戻って荷物をまとめたらいつものテーブル席に集合だ。全員そろったら軍司令部に向かう」



宿の自分の部屋に戻った。荷物はバッグにいれてある。バッグを背負うと振り返って部屋の中を確認する。ベッドは窓をふさぐように立てかけてある。椅子は壁際によせて、できるだけ広いスペースを確保した。


実はギルドに出かける前に、部屋の中にテレポート用の基準点を設定したのだ。これでどこに行ってもテレポートでこの部屋との行き来ができる。荷物を持ってテレポートすれば「どこでも倉庫」としてして使えると思う。小説やアニメにあるマジックバッグや収納魔法はこの世界ではおとぎ話のようだ。それに比べると荷物の出し入れはずっと不便だし、テレポートの制約がかかってしまうが、ないよりはずっとましだろう。念のため、もういちど基準点の座標を確認して場所のイメージを強化する。


部屋に鍵をかけ、一階に降りていく。もう全員そろっていた。

「宿代を精算してくる。みんなの分もやっておくから、部屋の鍵を俺によこせ」

「僕は部屋を借り続けるので先払いをしておきます」

3人を残してトールと二人で女将のもとに向かう。

「すまんな女将。しばらく留守にするので宿は引き払う」

「毎度のことさね」

トールは4人分の先払いの精算をして、返金を受けている。

「ぼくは今のまま借り続けます」

「留守の間もかい?」

「はい、これからもずっと借りますから先払いを追加しておきますね」

そう言って女将の前に金貨30枚を積んだ。300日分である。

「鍵もいったん戻しますね」

「こんなに…」

「はい、留守の間は僕の部屋は閉め切りでお願いします。掃除は必要ありません」

「承知したよ」

テーブルにもどると返金分をトールがみんなに分配している。

「ごまかしてないよねー」

「殴るぞ!」

返金が終わり、そろって席をたつ。それぞれ女将に会釈して宿を出る。僕の後ろから女将が声をかけた。

「無事にかえっておいでよ。先払い分がもったいないからね」

「必ず戻りますよ、エリカさん」

手だけ上げ、振り返らずに僕は宿をでた。


「いつから女将を名前呼びするようになったのかなー」


しばしの別れですから。

ただの感傷ですよ、ノアさん。

★あとがき(撮影現場にて)★


ノア:「ちわー、ロケ弁もらいに来ましたー」

え、ADさんが配っていたと思いますが…

ノア:「それはそれ、これはこれよ」

今日は余分はありませんよ。

ノア:「その机の上にあるのは?」

これは僕のですからね。

ノア:「じゃぁ問題ないじゃん。ちょうだい!」

え、ちょうだいって、あ、食べちゃだめですー。

ノア:「そんな事より、もっと大事な話があるのよ」

僕のお昼が…

ノア:「まさかエリカさんまでヒロイン枠候補になってたりする?」

そんなことはありませんよ…

ノア:「なんか、最初の時からあやしいのよね」

次の話から王都に出発ですから当分エリカさんの出番はないから大丈夫。


ええと、僕はこれからオーディションがあるので…

ノア:「オーディションて?」

王都の依頼者の屋敷にいるメイド役を10人くらい募集したんです。

ノア:「メイド?まさか…」

ちょい役ですよ、ちょい役…

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