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21 魔術師、お姉さんの名前を知る

「ほらぁ、触ってみてよ、ミスター」


ソアの指名依頼の報酬で大部ふところが潤い、久しぶりにのんびりとしている。ここは宿の一階のテーブル席。カウンターの向こうでは女将のエリカさんが宿帳らしきものを見ながら聞き耳をたてている。さきほどから僕の目の前に頭を突き出し、必至に訴えているのはノアである。


うるさいので手を伸ばして頭のてっぺんの適当な場所を触る。

「ちがーう!そこじゃない!もっと右!」

てのひらを右に、いや、ノアからみて右だから僕から見て左にずらすと、大きなコブが…

「トールのやつ、ひどいんだよー」

目の前からようやく頭をどかしたノアが涙目で訴える。

「何もしていない可憐な少女の頭を拳骨で殴るなんてー」

「16歳で立派な大人になったとおっしゃっていませんでしたか」

皮肉っているのはソアである。

「あれのどこをどう見れば、何もしていないなんて言えるのですか」

「誰も何ともなかったじゃん…」

「怪我人が出なかったから良かったが、もし兵士が怪我でもしていたら、ただでは済まなかったぞ。軍も大きな借りがソアに出来たばかりだったから馬車の弁償くらいで目をつぶってくれたんだぞ」

「大人の女性を拳骨でなぐるなんて、男のすることじゃないよねー」

「今さっきは自分で少女っていってなかったか?」

「あるときは可憐な少女、またあるときは麗しき淑女、それがあたしなんだよー。ゴードもそう思うよねー」

「…」

「黙っているってことは否定していないって事だよねー」

「可愛いことには同意しますが、淑女というのは…」

「あー。ミスターもひどい!もう子供じゃないんだよー。今からあたしと一緒に部屋に行って確かめて…痛い!」

いつの間にかノアの後ろにたって、ノアの頭に握り拳をあてていた。

「痛いって、ソア!そこはダメ!たんこぶが二段重ねになっちゃう!」

「その方が可愛いかも知れませんよ」

そういうとカウンターに行き、女将にエールを注文している。

「俺の分も一杯追加で頼んでくれ、アルコールの入っているやつを」

「俺も…」

「聞こえたかソア、ゴードの分も頼む」

「聞いてるよ、トール。すぐに持って行くから待ってておくれ」

女将が奥に引っ込み、ソアが席に戻ってくる。

ほどなくして女将がお盆の上にカップを5つ載せて持ってきた。

「トールとゴードはこれ。アルコール入りだ。ソアさんとミスターにはアルコールなしのエールだよ、ノアはこれ」

「頼んでいないのにー、それになんであたしのはミルクなのよ!」

そのほうが大きくなるかもよと女将が胸を張る。

「これでいい…」

一気に飲み干した。


「みんなの分も払っておきました。軍からの報酬がたっぷりもらえましたからおごりです」

「それでノア、どうして馬車の弁償が僕の支払いになってるんだ?」

「知らないよー」

「軍からギルドに請求があって、ケートさんがそのように手配したようです」

「ケートさんて?」

「ギルドの受付のケートさん」


あのお姉さんってケートさんて言うんだ。

ノアに甘すぎないか?

おまえはノアの母親か!


「ところでミスター、司令官への説明、あれは何ですか、いったい」

「何ですかって…聞いていたろ、ソアも」

「わたし一人ですべて解決したみたいではありませんか」

「そうしないと軍が僕に目をつけそうで…ソアさんならすでに有名だし」

「ギルドに報酬をいただきに行ったら、固辞したはずなのに今度は軍の将軍まできていて勧誘されました」

「あー、ソアにもトクギをみせちゃったんだね、ミスター」

「ええ、見せていただきました」

「トクギって何だ、ミスター」

「トールさんにも話したじゃないですか、僕の切り札の魔法」


ほんとは魔法じゃないけどな…


「ああ、あれか」

「実は切り札はあれ以外にもいくつかあるんですよ。このところの依頼でノアやソアと一緒に行動したときに、二人に見てもらったんです」

「とても便利なんだよー」

「そうですね、トールにも見せてあげても良いのでは」

「何だ、便利ってのは」

「そのうちトールさんやゴードさんにも披露しますよ」

「見たらトールもきっと、反則だーって言うよ」


「ところでそろそろパーティーでの活動を再開しようと思うのだが、どうだ」

「問題ないよー」

「同意…」

「さしつかえありませんわ」

「僕も問題ありません」


今日はすでに昼をすぎているので割のいい依頼は残っていないだろうと言うことで、明日の朝一番でギルドに集合ということになった。

★あとがき(撮影現場にて)★


ノア:「見てよー、このたんこぶ」

見事な二段重ねで…

ノア:「こういうのって、CGとか特殊メイクでやるんじゃないの」

済みません、なにぶん、予算がないもので。

ノア:「次は王都に行くんだよねー」

ですね。

ノア:「それで、旅の途中で主人公とヒロインが結ばれるとかはないの」

済みません、なにぶん、予算がないもので。

ノア:「予算はかんけいないじゃん」

済みません、尺の問題で…

ノア;「トールたちにトクギの説明なんかするから尺がなくなるのよ」

それ、次の話のネタばらしですから。

それに、どこかで説明しとかないと、あとの展開が…


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