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159 魔術師、からまれる

町に戻ると、トールたちに皇帝との面談が上首尾に終わったことを伝え、すぐに調査隊の指揮官に会って調査の中止と周辺の立ち入り禁止措置をお願いした。当初は会うことすら拒まれたが、皇帝直筆の命令書の効果はてきめんで、すぐにこちらの望む通りのことを実行に移してくれた。


翌朝、町は大騒ぎになった。ダンジョン周辺から追い払われた冒険者がギルドに抗議に押しかけたのだ。調査隊の活動の邪魔にならない限り、昨日までは冒険者もある程度は自由に活動できていた。いくつかのパーティーが調査隊の脇で、なんとか内部に入ろうとしていた。また、ダンジョン内に未発見の通路がまだあるのではと考えた大勢の冒険者たちが、ダンジョンの探索に潜っていた。それが夜が明けたら理由も告げられずに突然の立ち入り禁止である。騒ぎになるのも当然だろう。


宿屋の親父に過ぎないギルドマスターは、冒険者の抗議に調査隊の命令としか答えられずいた。冒険者の一部は調査隊の指揮官に面会を求めたが、会うこともできず、護衛の騎士に追い返された。


またある者は、密かにダンジョンに入ろうとしたが、調査隊の魔力感知をかいくぐることは出来ず、護衛騎士たちに拘束されてしまった。


ギルドに集まった冒険者たちも、どうすることも出来ず、午後には解散して誰もいなくなった。町から出て行った様子もないので、宿の部屋で状況の推移を見守っているのに違いない。



「今日こそ一緒に買い物に行こうー」

ノアの一言で、僕は買い物に引っ張り出された。同行するのはアリサとベータだ。ソアとエマは部屋に残り、トールとゴードは相変わらず宿の食堂で酒盛りだ。


「ノアはこの町の武器屋は見てるんだよな。また行くのか」

「前はミスターと一緒じゃなかったじゃん」

「僕がいてもいなくても、売っているものは同じだよね」

「あたしは、ミスターと一緒に見たいの」

そういいながらノアは武器屋に入って行った。僕たちももノアに続く。


店の中には、先客がひとりいた。冒険者だ。僕が店に入ると、近づいてきた。それを見たアリサとベータが僕の左右に並ぶ。

「ダンジョンの化け物を倒してカイルたちを救出したのはあんたか」

メイド姿のアリサとベータが嫌でも目立っているので、否定しようがない。

「そうだ…」

「話がある」

「店の外部に数体の生命反応。冒険者と推測」

ベータが小声で報告した。


町に逗留している冒険者なら、店の前で起こった前回の殺傷沙汰を知らないはずがない。殺傷沙汰というか、ベータが一方的に殺したのだが、そこまでの事情は知られていないだろう。おそらく、あの連中を殺したのは僕だと思っているようだ。話しかけてきた声に棘があった。


「話なら聞こう」

「話を聞きたいのは俺だけじゃあないのでな。すまんが、ちょいとそこまでつきあって貰おうか」

男は店の外に出て行った。僕はその後に続き、ノアたち3人も一緒についてくる。


宿に戻っていろと言っても、素直に従ってはくれんよな


僕はベータに小声で命令した。

「僕の命令なしでは誰も殺傷しないこと」

「肯定です」

「ノアを守るために必要な場合には殺傷を許可する」

「肯定です」


店の外に出ると、店の脇の路地から3人の冒険者が現れ、僕たちの後ろについた。

「どこに行くんだ」

「話を聞きたいのが大勢なんでな、町の外に集まっている。話を聞くだけだ。おとなしく一緒に来てくれ」


町の外に出て、護衛騎士の軍用テントの前を通り過ぎていく。冒険者の一団が通過しても、見張りに立っている兵士は何もしない。少し歩いて、テントが見えなくなったころに、前方から冒険者の集団が姿を現した。そのなかから7人ほどの男が僕たちの方にやって来た。5メートルほど前方で立ち止まる。僕たちを案内してきた男も立ち止まった。

「ごくろうだったな、ガフ。みんなのところで待っていてくれ」


僕に店で話しかけてきた男はガフという名前らしい。後からついてきた3人の男と一緒に、ガフは僕たちを残して冒険者の集団と合流した。


目の前の男のひとりが口を開いた。

「俺たち7人はパーティーのリーダーをしている。ここに集まっているのは俺たちのパーティーの仲間だ」

前方の集団の人数をざっと把握する。

「パーティーが7つか。人数が少なくはないか」

「魔力感知がある以上、ごまかしはできねぇな。みんな姿を見せろ!」

男が叫ぶと、街道の横の丘を越えて新たな冒険者の一団が姿を見せ、僕たちを遠巻きに囲んだ。

「38体。敵対行動の兆候なし」


「ノア、僕の後ろについて防御の魔道具を作動させておけ」

ノアが僕の後ろにつき、アリサとベータがその両脇を固めた。


僕は話しかけてきた男に言った。

「大勢で取り囲んで、どんな話がしたいのかな」

男が答える。

「ダンジョン周辺への立ち入りが今朝、突然禁止された」

「禁止したのは調査隊であって、僕たちじゃあない」

「昨日、あんたが調査隊の指揮官に会ったことは分かっている。禁止措置と無関係とはいわせんぞ」



★★ 160話は6月20日00時に投稿


外伝を投稿中です(休載中再開未定)

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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