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155 魔術師、悪夢

「いきなり行っても、皇帝にすぐ会わせて貰えるとは思えないし、そもそも外交上の儀礼に適わない。まずはギルド経由で共和国大統領が面談を求めていることを伝えよう」

「皇帝は面談に応じるでしょうか。和平交渉は成功しましたが、友好状態とは言いがたいと思います」

「確かに、ソアの言うとおり、僕に対する帝国の重鎮たちの心情は最悪だろうね。でも、あの皇帝ならきっと面談に応じると思うな」

「ミスターからの親書となれば、ギルドの魔道具で文面だけ送るのは外交儀礼に適わないと思いますけれど」

「ああ、僕の自筆の親書を直接届けるようにしようと思う」

「通信ではなく、親書を直接送るのでは、かなり日数が掛かってしまいますね」

「それなら大丈夫だよ、ソア。僕がテレポートで持って行って、帝都のギルドに依頼するから」


親書を自ら配達する大統領というのは世界、いや、異世界広しといえども僕くらいだな


「これなら、一日あれば届くだろう。そして返書は帝都にある僕たちの屋敷に届けて貰うのさ」

「皇帝に貰った屋敷は無人のはずですが」

「親書をギルドに託したその足で、僕たちは屋敷に向かうんだよ。返事を受け取るのは僕たちというわけ。返事を貰った翌日には面談だ」

「なるほど」

細かいところは親書の返事を受け取ってから決めることにして、その日は早めに休むことにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜も深まったころ、何かが吹き飛ぶような音がして目を覚ました。


天井がない…


はっとして、体を起こす。吹き飛んだ天井から部屋の中をのぞき込むようにして巨大なドラゴンが空中に静止していた。ブレスの構えに入っている。


「真竜よ!」

声のした方を見ると、ノアが盾を持ったゴードの背中に張り付き、魔力を高めている。


真竜って…魔道具の防御でブレスを防げるのか


いや、そんなことを考えている暇はない。マイクロブラックホール球を速攻で作り出し、真竜の口めがけて放った。


まにあうか…


黒球が命中した瞬間、巨大な真竜が眩しい輝きに包まれ、目が開けていられない。白い世界に変わってしまった視界が、もとに戻ると、真竜の姿はなく、かわりにベータが浮遊していた。思わず声を掛けようとした僕に、いつのまにか近くにいたアリサが後ろから覆い被さってきた。

「マスター、あぶない!」


ベータの両手から10条の光の筋が放たれた、吹き飛ばされた天井の埃が漂い、レーザーの射線が光の筋となって見えたのだ。僕に覆い被さったアリサの頭上を、一筋の光が通過し、髪の毛を焦がす。いそいで障壁を纏おうとするが、発動しない。ESPジャマーのせいか。顔をひねってノアの方を見ると、2条の光がノアの体を貫いて、そして消えた。


「ノア!」


思わず体を起こして叫ぶ。

「駄目です、マスター」

再びアリサが僕を押し倒そうとする。ベータは左手をバックハンドで横に払った。いつのまにか手首から先が大きな鎌のように変化していた。


またもアリサに助けられた。僕の頭上を死の鎌が通り過ぎていく。

「すまん、アリサ…」

顔をアリサに向けたが、アリサの顔は見えなかった。代わりに頭部の切断面から吹き出る大量の血が僕の顔面に降り注いだ。頭部を失ったアリサの体が僕に力なく覆い被さってきた。視界の外れでは、ノアとゴードが倒れていた。


何も考えられなくなった僕に、再びベータが手を差し出してきた。その指の先端が輝く。それを見て僕は意識を失った。



遠くから僕を呼ぶ声が聞こえる。

「ミスター!目を覚ましてよ!」

ゆっくりと目を開けると、ノアの顔があった。どうやら僕はノアに抱きかかえられて上半身を起こされているようだ。

「ノア…やられたんじゃ…、そうだ、アリサ、アリサが…」

「アリサ様は隣室にて就寝中です」

声の方を向くとベータが僕の横に座っている。

「何があったというのよ」

再びノアの声の方に顔を向けると、柔らかく大きな物体に顔がぶつかった。


何かがおかしい、ノアはもっとささやかだ。思わず手で触れようとして、ノアもベータも一糸まとわぬ姿であることに気づいた。いや、それどころか、僕自身も何も身につけていない。

「マスターの精神面が著しい混乱状態にあると認められます。緊急に癒やしが必要と判断。ただちに癒やしの実行に入ります」


な、何を言っているんだ、ベータ…


ベータが僕の上にまたがって来た。目の前のベータの裸身に僕の一部が勝手に反応する。ベータの手が添えられ、ベータが腰を沈めてきた。


ちょ、ちょいまって

さっきのドラゴンは…

ベータはなぜ…

ノアは…


「ノア、止めてくれ」


そう言って、ノアの方に手を伸ばす。空を泳いだ僕の手が、ノアの柔らかな部分を思い切りつかんでしまった。


目に火花が飛んだ。どうやらノアに殴られたらしい。それもグーで。

「す、すまん、ノア」

あわてて握った手を放す。その間にベータが僕の上で完全に腰を沈めてしまった。

「あたしより先にベータとなんて…」

ノアの再度のグーパンチで僕は意識を失った…



★★ 156話は6月12日00時に投稿予定


外伝を投稿中です(中断中再開未定)

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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