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154 魔術師、帝都へ

「僕の命令には従うのじゃないのか」

「肯定です」

「知的生命体の命を奪うことは禁止したはずだが」

「肯定です。マスターの命令はすべて記録されています」

「では、なぜあの連中を殺したんだ」

「マスターの安全の確保はシステムレベルで最上位の優先度を与えられています。これに反する一般的命令をあらかじめ設定しておくことはできません。そのつど直接命令する必要があります」


治安部隊への攻撃を止めたのは、その時に攻撃の停止を命令したからか

あの連中の時も、その場で殺さないように命令すれば良かったという訳だ…

ベータへの指示は、よく考えて出さないといけないということだ


「始めて会ったとき、僕の障壁が消され、テレポートの発動もできなかったのはベータの能力なのか」

「肯定です。超能力の発動を阻害するESPジャマーが当機体に内蔵されています。効果範囲はそれほど広くはありません」

「どれほどの広さなんだ」

「全方位では5m。指向性を持たせた場合20m。周囲の状況で若干の誤差は生じます」

「それなら、最初にあったときにブラックホールや光る槍なども妨害できたってことか」

「肯定です。しかしそれらは当機体が吸収することで反物質に転換できます。妨害する必要性が存在しません」

「治安部隊の魔術師の魔法が発動しなかったのは? あれは超能力ではないぞ」

「ESPジャマーは魔法にも有効です。理由は不明」

「可能性の範囲で推論してくれ」

「超能力と魔法が基本原理では同一の論理に基づいている可能性があります」

「ということは、僕にも魔法が使える可能性があるということか」

「肯定です。しかし魔法についてのデータは当機体に存在しません。推論を確認することは不可能と判断します」

「ベータは超能力を仕えるのか」

「否定です。当機体にESP発生装置は搭載されていません」


「ガーベラの予知能力についてはどう思う」

「当機体には予知能力にかんするデータが存在しません。上書きされたシステムエリアにデータが存在していた可能性もないと推論されます。ESPジャマーの仕様に予知能力に関する記載が存在しないことが根拠です」


ちょっと話題を変えて、気分を変えよう。


「ところで、自分をいうときは『当機体』と言わず、『わたくし』と言うんじゃなかったのかい」

「肯定です。マスターとの会話以外では『わたくし』と称します」


そのうちもう少し人間らしい話し方になると思うが、それまではできるだけパーティーメンバー以外とは会話をさせないようにしよう。



翌日、皆で朝食を済ませてのんびりしているときに、再びアリサが情報をもたらした。


「調査隊がダンジョンの大規模な発掘を計画しています」

「どういうことー」

「ダンジョンのある丘自体を除去して、扉で閉ざされた新しい通路とその先を剥き出しにするつもりかと思われます」


一部の冒険者がやっていた、丘の上から縦坑を掘って行こうというアイデアを大々的にやろうって訳だ。

「丘の土砂が取り払われたらどうなる、ベータ」

「宇宙船が埋められた当初の深度は100mです。その後の数千年で地表は変化しましたが、深度はそれほど変化していないと推測されます。縦坑がそれ以上になれば、宇宙船が発見されることになります」

「内部に侵入されそうか?」

「宇宙船およびそこまでの通路はむき出しになりますが、侵入は不可能と判断します」

「ブラックホールでは?」

「宇宙船本体はわたくしと同等以上の防衛機能を有していますが、通路部分は破壊されます。しかしマスター以外にブラックホールを発生させる能力の持ち主は存在しないと思われます」


たしかに、通路の扉を破壊できなかったのだ。宇宙船や通路がむき出しになっても侵入できるとは思えない。ボーマンの能力は未知だが、通路が破壊できるくらいなら、通路の扉だって破れるはずだ。こんなメチャクチャな手段に出るとは思えない。


「でも、中にはいれなかったとしても、そのウチュウセンとやらがむき出しになったら大騒ぎだよね。謎の古代遺跡ってことで国中の注目をあびちゃうよ」


そうなると、ベータのことが問題になるかもしれないな…


「なんとか止めさせないと…」

「どうやるのよ、皇帝直属の調査隊じゃ、誰も命令できないよ」

「そうか、皇帝直属だったな。ならば皇帝に命令して貰おうじゃないか」

「皇帝にって…どうするの」

「直談判にいくか。二度と会いたくないと思っていたがしょうがない」

「でも、なんて説明するの」

「ベータを連れて行き、力を見せる。止めないと世界の終わりだって思わせる。ついでにダンジョン周辺を立ち入り禁止にでもさせる」

「そんなうまくいくかな」

「なんとかするしかない」

「じゃ、あたしも一緒にいくー」

「そうだな…全員でというのも大所帯すぎるきもするな」

「俺は残って、ミスターが戻るまでこっちをなんとかする」

「じゃ、トールはこっちをお願いすることにして…一緒にいって貰うのは…ノアとソア、そしてアリサとベータかな」


正直なところ、アリサとベータだけにしたいけれど、僕がいない間にノアが暴走すると困る。目の届くところにいて貰った方が安心だ。ソアは貴族との折衝に頼りになるかもしれない。


もうひとつ心配ごとがある。ベータや宇宙船の正体を皇帝に打ち明けたとして、当然、秘密にしてもらう訳だが、秘密は漏れるのが当たり前だ。帝都のハンターたちにも知られる可能性が高い。皇帝の命令を無視してベータを狙ってくるハンターが出てこないとも限らない。そうそうあり得ないとは思うが、ベータの自爆プログラムが作動するなんてことになったら…


僕たちは準備をして帝都に向かうことにした。さて、皇帝になんといって話を持ちかけようか。



★★ 155話は6月6日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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