表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/175

146 魔術師、ベータと語る

ベータは地下の宇宙船の管理者として1万年近く稼働していることになる。予想外の出来事でアリサの人格の一部が複製されて僕に仕えることになった訳だが、ベータ自身は今後どのくらいの間、活動できるのだろうか。動力源とか無限にあるはずはない。


「当機体の残存エネルギーは、製造時の13%です」


思ったより少ないな

というか、補給はできないのか

そもそも動力源はなんなのだろう


「動力源は、マイクロブラックホールおよび反物質です。通常の活動はマイクロブラックホールを使った重力炉のエネルギーでまかなわれます。戦闘時など、短期間に大出力が必要な場合は、反物質を消費する質量転換炉が用いられます」


「消費した分は補充できるのか」

「反物質の貯蔵量はそれほど多くありませんが、消費分は平常時に重力炉を使って補充されます。したがって戦闘時に使用できる火力には限りがあります。重力炉のマイクロブラックホールは機体が製造されるときに組み込まれ、宇宙船の設備では補充できません」

「ということは、それが尽きるとベータは停止するってことか」

「残存エネルギーが3%を下回ると自動的にスリープモードに移行します。その場合、移行前に宇宙船に戻ることが必須となりますが、この星の時間で、およそ3日以内に戻れない場合、自己消滅プログラムが作動します」


巨人が何の痕跡もなく消滅したことを思い出した


「スリープモードに移項するまで、ベータはあとどのくらい活動できるのかな」

「残念な事に残り時間はわずかです。大きな戦闘を頻繁に繰り返すようなことがなければ、この星の時間でおよそ1300年と推定されます。マスターにわずかな時間しかお仕えできず、大変申し訳ありません」


いや、そんなに長生きしないから…


「補充できないっていったけど、僕たちが攻撃したとき、魔法や僕の超能力のエネルギーは吸収したんじゃないの。そのエネルギーは?」

「質量転換炉を使って反物質に変換されます。当機体の稼働時間を延ばすことはできません」

「僕の寿命は1300年もないんだけど…寿命が尽きたりして僕が死んだらベータはどうなるんだ」

「当機体の本来の役割は宇宙船施設の管理と維持ですが、システムエリアが上書きされた結果、現在の役割はマスターにお仕えすることです。したがってマスターの機体が機能を停止した場合、当機体の存在目的がなくなります。その場合、現在残っているデータが不完全なため断言はできませんが、当機体および宇宙船を含め全ての機体の自己消滅プログラムが作動する物と推察されます」

「僕の寿命は残り80年くらいなんだが…」

「サンプル体No.1の機体のスキャンデータからは、この星の支配的知的生命体の機体は200年ほど稼働可能と空いてされるのですが、マスターは違うのでしょうか」


ベータなら話しても大丈夫だろう


「僕の出身はこの世界じゃないんだ。僕の寿命は長くても100年。おまけに老化もあって、正常に活動できるのはもっと短い」

「マスターの機体のスキャンの許可を申請いたします」

「なんだ、信用出来ないのか。いいよ、好きに調べてくれ。もちろん害はないよね」

「肯定です。わたくしがマスターに害をなすことは当機体の存在目的に反します。それは論理的ではありません」


どこぞの異星人の副艦長みたいな言い方だな…


ベータの身体が微かに光ると、僕の身体を何かのエネルギーが通過していくような感覚を覚えた。


「マスターの機体にサンプル体No.1のそれと大きな違いが存在する頃を確認しました。得られたデータからのマスターの機体の残存稼働時間は60年ほどと推定されます」

「思ったより早いな…」


僕の寿命は80年ちょっとだったか…

短くはないけれど

明言されると気が滅入るな


「肯定です。わたくしがお仕えできる時間も残り少ないということになりますが、少なくとも当機体の残存稼働時間の問題は無視できることが判明いたしました。自然の生命体であるマスターの機体の稼働時間は、当機体のような人工生命体と異なり、限られることは避けられません」


どれほど科学が進歩しても

不老不死は不可能だってことだな…


「当機体の能力では、マスターの機体を永久に機能させることはできません」


とても残念だ…


「残念ながら稼働時間を3倍程度に延ばすのが当機体の限界であることを報告いたします」


そうか、少しは伸ばせるのか

異星の進んだ医学の成果って訳だな


ちょっと待て…


「3倍!?」

「肯定です。それが当機体の能力の限界です。ご期待に添えず申し訳ございません」

「ほんとうに伸ばせるのか」

「肯定です。マスターの機体の定期的なスキャンとメンテナンスを行うことで可能です」


なんということだ…

ノアたちと人生を共にすることは夢物語だとあきらめていた

3倍ならば少なくともあと180年はいけるってことだ

それならノアと人生を共にできるんじゃないかな


いや

僕の寿命を延ばせるってことはノアたちの寿命だって延ばせるだろう

ノアが長寿を望めば結局同じ事じゃないか

あっ、でも僕が死ねばベータは消滅するのか

ベータがいなくなればノアたちの寿命延長はできなくなるんだから…


「ノアたちの寿命も延長できるのか」

「肯定です。ただしマスターの機体が稼働を停止すれば当機体は自己消滅します。したがってその後のサンプル体No.3のメンテナンスはできなくなることから、本来の寿命からの延長は多くは望めません」

「僕があと180年生きたとして、その後のノアはどうなる?」

「サンプル体No.3の本来の寿命は300年と推定されます。そのうちのマスターの延長分の180年間はマスター同様にメンテナンスできると仮定すれば、推定される稼働時間は350年となります」


最後までメンテができないと、50年しか伸びないのか…


でも、この世界の平均寿命は200年

ノアたちの300年は例外だ

僕の寿命があと180年ならこの世界の平均と言える

ノアの寿命が50年延びたとしても

一緒に暮らして許されるレベルだと思う


思いもよらなかった寿命延長が現実の物となり、僕は少々混乱していた。




★★ 147話は5月20日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ