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133 魔術師、会議は踊る

ソアの選択が的確だったのか、運ばれてきた料理は初めて味わうものも舌に合わないものはなく、どれも素晴らしいものだった。食後のデザートや飲み物もそれぞれの好みに合っていて満足のいく食事となった。いや、ひとりだけ、飲み物に文句をつけていたな…


「みんなお酒なのに、なんであたしのだけ果汁なのよ、ソア、どういうこと」

「お酒は大人になってからといいますから」

「あたしはもう大人だって知ってるでしょ、16歳は過ぎてるんだから。どうしてアリサは良くてあたしはだめなのよー」

「16歳でも、だめなものはだめです。もっと成長するまではだめです。アリサさんは成長してますから」

「う~…」


それにしても、ソアは貴族のマナーや振る舞いをどうやって身につけたのだろうか。確かに貴族の、それも王族の出身だが、国を追われて小さい頃からノアたちと同じ村で一緒に生活していたのに。ソアの母親の教育がよほど厳しかったのだろう…



デザートも終わり、くつろいだところでトールが僕たちを現実に戻した。

「さて、とんだ寄り道だったが、ドラゴンも倒したし、このあとはどうする」

「温泉の町に行くって事だったじゃない、さっさと村を出て温泉に入りに行こうよ」

「ボルグはどうするのですか」

「そんなの無視よ」

「わたしたちが村を出て行くのをおとなしく見送るとは思えないのですが」

「ソアの言うとおりだ。前にも行ったが奴はエンダーと同じだ、強い相手と闘わずにはいられないのだ」

「ミスター、奴の相手はできそうか」

「アリサの報告にあった、奴の縮地がどんなものなのか実際に見ないと…」

「やってみないと判らないと言うことか」

「どんなものなのか想像できることはあるのですが、正体が分かっても対策が思いつきません」

「テレポートで遠くに逃げちゃえばいいじゃん」

「当面はいいだろうけどな…しつこく探して追いかけてきたらどうする。それでなくとも王都の組織のこともあるし、町長がまた刺客を差し向けてくるかも知れん。八つ当たりとは言え、とんだ災難だ。そこに加えてボルグからも狙われるんじゃ、気が休むときがないぞ」

「じゃあ、じゃあ、どこか人のいないようなところであたしがめいっぱいの魔法で吹き飛ばしちゃえば…」

「無茶をいうな、俺たちがお尋ね者になりかねん。それに、いくら強力でも、魔法一発でやられるようじゃあハンターにはなれんだろう」

「ボルグの縮地の正体が僕の思った通りのものだったら、たぶん魔法から逃げられてしまうはずです」


僕は、魔法とは違う力、僕の超能力のような力の持ち主がこの世界にもいるかもしれないということを説明した。ガーベラの未来を予知するかのような力も、その可能性があると。

そして、ボルグの縮地の正体は短時間だが時を止める力ではないかと。

「そんなことが出来るのか?」

トールが驚いたようにいう。

「判りません。ただ、おそらくガーベラの力は確率空間を認識する力で、ボルグのそれは時空に影響を与える力だと思われます。僕の力は空間とエネルギー、運動量をコントロールする力ですから、それ以外の物理量に影響を与える力があっても不思議ではありません」

「なに、その…カクリツクウカンとかジクウとか、意味不明の言葉は?」

「僕の故郷では魔法の代わりに科学というものが発達していて、科学が解明したこの世界の理論です」

「わかんないー」

「まぁ、不思議な力だと思えば…。僕にとって魔法が理解不可能な不思議な現象と同じようなものだから」

「その…時を止めるってのはどういうことなんだ。奴がそれを使うとどうなる」

「あくまでも例えですが、ボルグが時を止めると、ボルグ以外のこの世界の全てが止まってしまう訳です。そんな世界でボルグだけが動けて、好きなことが出来ることになります」

「えー、それって最強じゃん。動けない間にやられたら、相手は文字通り手も足もでないじゃん。どうするのよ、ミスター」

「そこまで強ければ、単に縮地なんて言葉では表現されないんじゃないかな。だから、そこまで強力じゃあない。なんらかの制限があるはずだ」

「制限って…」

「止められる時間が凄く短いとか、止まっている物体には干渉できないとか、あるいはその両方とか…」

「それって判らないの」

「実際に奴と闘った人間から話でも聞ければ、もしかしたら。そのことについて何かあるかい、アリサ」

「ハンターのボーマンに依れば、ボルグが縮地を使うと、一瞬の間もなく相手の目の前や背後に出現するとのことです。単に、目にもとまらぬ速さで動いているようなものではないと」

「時を止められちゃったとして、その間、ミスターのいつもの見えない障壁は効果を発揮するのかな…それに、あたしの魔道具の魔法防御とかも」


これといった対策も出ず、無駄に時間が過ぎていった。議論が堂々巡りを始めたところで僕が話を終わらせた。

「まぁ、最悪、上手い手を思いつくまでテレポートで逃げ続けるってことですかね」


上手いことテレポート出来ればいいけれど、その瞬間に時を止められたら…

単に時をとめるだけじゃあなく、わずかな時間でも過去に逆行できるとか…


不安ばかりが次から次へと浮かんで、僕の頭の中も堂々巡りを始めてしまった。



★★ 134話は4月24日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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