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128 魔術師、闘いを始める

「作戦をもう一度確認するぞ、いいか」

「僕は上空で待機ですね」

「そうだ、ミスターはすでに2度、奴らの相手をしているからな。最初に姿を見せると奴らの注意がミスターに集中するかも知れん。それでは一匹だけ引き離すのはむずかしくなる。先手はノアだ」

「まかせてー」

「ノアが魔法で攻撃する。魔法で攻撃すれば、奴らもブレスを撃ってくるだろう。これをノアが魔道具で耐え、そのタイミングでミスターが一匹をテレポートで引き離す。あとはミスターが戻ってくるまでもう一匹を引きつけておくだけだ。ミスターはできるだけ素速く引き離してくれ。そうしないとノアが次のブレスを耐えられない恐れがある」

「あたしはひとりでブレスに耐えていればいいのかな」

「魔道具で防がれている間に、何でもいい、威力最大の魔法を放つ用意をしていてくれ。そしてブレスが止んだらすかさずぶっ放すんだ。それで地上に落とせれば御の字だ」

「みんなが巻き添えにならないように雷撃を使う。でもあまり近づかないでね」

「ノアにはいつものようにゴードがついていてくれ」

「…」

「ゴードの盾じゃ氷竜のブレスはふせげないよ」

「ブレスじゃない。最初のブレスが止んで、ノアが魔法を撃った後、ドラゴンが直接ノアを襲ってくるかもしれん。それを防いでくれ。あのサイズなら直接攻撃は飛竜と大差はないだろう。頼むぞゴード」

ゴードは黙って大盾の用意を始めた。

「俺とエマはドラゴンが地上に落ちたら全力で攻撃する。ノアの一撃で地上に落とせない場合は、ノアにもう一度ブレスに耐えてもらう必要がある。魔道具がもつことを祈るしかない。ソアは弓で目だけ狙ってくれ。目以外は矢がささるとは思えん」

「わたしがノアの前に土壁を造りましょう。すこしでもブレスを弱められるでしょうから」

「ミスター、1分だ。引きつけた奴を倒せても倒せなくても、1分でもどってくれ。引きつけた奴を倒せていたら、二匹目も頼む。一匹目が倒せていなかったらテレポートで逃げる」

「今更だけど…逃げないで、二匹目を倒すのじゃ駄目なの。一匹目はミスターが引き離しているんだから、ミスターの様にすぐにはもどれないじゃん。そいつが合流する前に皆で二匹目を倒せばいいんじゃない」

「倒し切れずに合流されるとまずい。ミスター、最初に引き離すのにどれくらいの距離がとれる」

「地上では地平線に隠れて様子が視認できませんから、数キロ先が限度ですね。となると上空ですが、斜め上に向かって数十キロでしょうか。成層圏を突き抜けてしまうと僕も耐えられない可能性がありますから」

「その距離をドラゴンがどのくらいの時間でも戻ってこれるかだな…危険はおかせん」

「しかたないなー」

ノアは残念そうだが、さすがに自分の命が掛かっているせいか、トールの指示を受け入れた。ここにきて打ち合わせと違うことをやろうとしても混乱するだけだ。

「アリサは俺たちから離れて周囲の警戒だ。ドラゴンの相手をしてるときに別の魔物に襲われたら面倒だからな」



最後の確認が終わり、皆が覚悟を決める。

「それではドラゴンの位置を探ってきます。場所が判ったらここに戻って知らせますから、よろしく頼みます。僕はドラゴンに察知されない上空で待機しますから」


ドラゴンに感知されない十分な高度にテレポートし、巣のある方向に飛行を始める。すぐに巣が見える位置に着いた。番のドラゴンが見える。魔道具のテストの時と同様に、つかず離れず、2匹が巣の周辺にたむろしている。


ドラゴンの…

少なくとも若い番のドラゴンの習性なのは間違いないようだな

待っていても離れないことは前回に経験済みだ


すぐにテレポートでノアたちのいる場所に戻り、ドラゴンの位置を伝えた。


「わかったよ。後はあたしたちに任せて上空で待機していて」

ノアを先頭に巣に向かって皆が移動を始めた。

「無理は禁物だぞ、ノア」

そう言って再び上空にテレポートした。ノアが仕掛けて2匹の注意を引きつけるまで、僕は絶対に感知されてはならない。念のため先ほどよりも更に高度を上げて、水平飛行に入る。今度はノアたちの進む速度に合わせてゆっくりと飛行している。


ノアの歩みが止まった。巣まで100メートルほどの距離だ。ノアと一緒にいるのはゴードだけで、トールたちはノアから離れて左右に分かれている。アリサは打ち合わせ通り後方で周囲を警戒しているようだ。


ドラゴンの方を見ると、動きが活発になっている。ノアたちの魔力を感知しているのだ。ノアたちが散会して止まっているため、警戒こそすれ、まだ敵であるとは認識していないのだろう。


ノアならば余裕で魔法が届く距離だ。2匹が急に動きを止め、ノアのいる方向に頭を向けた。僕にはノアの魔力は感知出来ないが、ノアが初撃のために魔力を高めているのだろう。2匹が攻撃態勢に入って飛びたとうとしたときに、ノアの魔法が発動した。大きな火球が放物線軌道で片方のドラゴンに向かって襲いかかった。


大きな爆発が起こり、巣がばらばらに吹き飛んだ。巣の周辺は岩場なので火災は起こらない。氷竜なので熱に弱いと思って火球をえらんだのだろう。直撃をうけた方はさすがにいくらかのダメージを負ったようだ。もう一匹も熱と爆風を受けているがさほどダメージはなさそうだ。2匹が空中にあがり、ノアのいる場所に向かって飛行を始めた。僕は上空で2匹の背後からついていく。テレポートで引き抜くのは無傷の方にしよう。


ノアは森は多少開けたところで待ち構えていた。その前方20メートルほどで2匹が静止する。ノアを見つけたのだ。ゴードが前に出て盾を構える。ノアがその背中に密着する。飛竜を相手にするときと同じ体勢だ。しかし、今回はブレスを防ぐのはノアの魔道具で、ゴードの盾は物理攻撃にそなえているだけだ。その盾を見てかどうかは判らないが、2匹はブレスの体勢に入った。こちらの作戦通りだ。


僕は無傷のドラゴンの首の後ろにテレポートの狙いを定めた。もちろん身に障壁を纏っている。そして、もうひとつ。ゴードに借りた盾を亀の甲羅のように背中に背負っている。


どこぞの仙人か…

見かけは最悪だな…


その盾には目には見えないが単分子チェーンの棘がびっしりと植えてある。これで尾の攻撃を多少は防げるかもしれない。


ドラゴンのブレスがノアとゴードを襲い、閃光を発した。氷のブレスだ。その瞬間、僕は一匹の首の後ろにテレポートしてしがみついた。



★★ 129話は4月14日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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